バブル後最安値
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この日の市況を象徴したのは日立かもしれない。先週金曜日(1月30日)の取引終了後、09年3月期業績見通しの減額修正を実施した。最終損益が7000億円の赤字(米国会計基準、従来予想は150億円の黒字)に転落すると発表した。
この7000億円の赤字というのは尋常な数字ではない。日経新聞によると、00年3月期に日産自動車が計上した6800億円赤字を上回って日本の製造業で過去最大のもの。同社の自己資本の3分の一が吹き飛ぶ規模である。その内訳は、為替の円高差損500億円、関係会社の赤字1400億円、リストラ費用1500億円、税金費用の負担増3300億円…など、ありとあらゆる要素の積み上げといった印象だ。
朝方は300万株近い売り物を集め、始値は239円(前週金曜日に比べて55円安)だった。前日に東芝が減額修正(700億円の最終黒字→2800億円の最終赤字)を発表していたこともあり、ある程度の赤字を覚悟するムードは市場にもあったが、アナリストから「これほどの著しい下方修正は想定外で、ネガティブサプライズ」(三菱UFJ証券)との声が飛び交っていた。この株価水準は1980年5月以来、28年8カ月ぶりのものである。
この決算処理をどう読むか。翌3日に正式な決算発表が予定されていることもあり、この日は投資評価を変更せず、簡単なメモを発表するアナリストがほとんどだった。それも「事業選別が加速する可能性が高まっており、中長期での投資機会となる可能性に注目している」(日興シティ証券)と前向きに評価しようとするもの、「環境変化ごとに課題事業が出る体質。赤字削減よりも主軸事業の育成が不可欠」(UBS証券)と構造的な問題を指摘する声など、評価はまだ定まっていない。大和総研では「同業他社に比べての構造改革の遅れが一気にマイナス方向に働いている」とし、株式レーティングを「3」(ニュートラル)から「4」(アンダーパフォーム)に引き下げていた。
市場から見ると、日立は“変われない日本企業”の代表株のような存在。28年ぶりの株価水準へ里帰りしたのもある意味で当然かもしれないが、「選択と集中」を標榜し、原子力やフラッシュメモリーなど成長分野に重点投資を行ってきたアグレッシブ派の代表格・東芝にしても、この日の安値は1982年8月以来の水準だから、日立と比べて威張れるほどのものではない。いずれにしても、このセクターの置かれた状況の厳しさを物語っているのだろう。
問題は、この歴史的な安値への落ち込みが日立、東芝で止まるのかどうか、であろう。パナソニック、シャープ、ソニーのエレクトロニクス3社やNEC、三菱重工、川崎重工などはこの日そろって年初来安値を更新しており、株価位置は極めて不安定。先週半ばには「業績悪も織り込み済み」という雰囲気が出ていた市場だが、余りにも過激な数字の横行で安閑として入られないような状況となってきた。
日経平均が年初来安値を更新するようだと、昨年11月の安値7162円90銭(1982年以来の安値!)を再び試す展開となる可能性がある。
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