金融危機下でジム・ロジャーズが語った(1) ~米国政府の政策は間違っているし、うまくいかない~
米国発の金融危機が世界中を襲う最中、世界的な著名投資家であるジム・ロジャーズが先月9月末に来日した。『ダイヤモンドZAi』と『週刊ダイヤモンド』はジムに共同インタビューに応じてもらった。(取材・文/小泉秀希)
ジムはジョージ・ソロスと組んで運営したヘッジファンド「クォンタム・ファンド」を37歳の若さで去った後も、巨額の個人資産を運用して好成績を収めてきた。
特に、1990年代の終盤以降は「商品と中国株が歴史的に大きな上昇トレンドに入る」という見通しを唱え、ここ10年間のトレンドを的中させた。
一方、米国経済については、対外債務の増加などを理由に衰退期に入ること、さらに、ドルが基軸通貨の役割を終えて趨勢的に下落していくことを早くから予言してきた。
このことについても予言は的中しつつあると言えよう。ドルはここ数年世界の主要通貨に対して下がり続けているし、現在に至っては、米国経済の黄金期を支えてきた金融・経済システムそのものが歴史的な転換期を迎えつつあることがだんだんハッキリしつつある。
このように、ジムの予言は大きな流れをことごとく的中させ続けていると言える。その背景には、莫大な読書量と世界中を自ら見て回った経験に支えられた確固たる哲学と歴史観がある。
では、金融恐慌的な状況に陥った今の世界経済をジムはどう見ているのか? そして、その中で彼はどんな投資をしているのか? インタビューでのやりとりは以下のとおりだ。
■米国経済は第2次世界大戦以降、最大の危機にある
――今、米国発の金融危機が世界中を襲い、大変な状況になっています。この状況をどう見ていますか?
今、米国経済は過去経験した中でもっともひどい景気後退に入っている。これは、第2次世界大戦以降、最大の危機といってよい状況だと思う。
――米国政府は、矢継ぎ早にさまざまな対策を出していますが、それは状況打開の決め手にならないですか?
私に言わせれば、それらの政策は間違っていると思うし、決してうまくいかないと思う。むしろ、状況を悪化させる方に働くだろう。
今、米国政府がやっていることは、本来倒産すべき会社をなんとかして救おうとしていることだ。それによって大きな財政支出を迫られることになり、その結果金利が上がり、ドルが下がり、インフレ率が高まるという悪影響が今後現れてくるだろう。
1970年代にも米国は同じような政策的ミスを犯し、最悪のインフレ状況とドル安を招いた。
1990年代の日本でも、会社を倒産させないような政策がとられたが、その結果、本当はすでに死んでいるはずなのに生きながらえている会社――ゾンビ会社がたくさんできてしまった。そして、それが状況をさらに悪化させて、日本経済の停滞を長期化させた。
■米国への投資、米ドルへの投資は避けるべき
――米国経済の苦境はどのぐらいまで続くと予想していますか?
それについてはハッキリ言ってよくわからない。米国をはじめ世界の国々がどのような政策をとるか、どのような過ちを犯すかによってもその期間は変わる。いわば、動く標的を相手に玉を撃つようなもので予想は難しい。
ただ言えるのは、投資先として米国は避けるべきだし、ドルに投資するのも賢明ではないと思う。
――ドルは今後下落するということですか?
短期的には上昇するかもしれない。今は他の国の状況も悪くなっているので、一時的には、相対的にドルがある程度上昇する可能性もある。しかし、そういう場面が来たら、私は今保有しているドル資産をすべて売却するつもりだ。
かつてイギリスのポンドが基軸通貨から転げ落ちてレートが下がり続けたように、ドルも基軸通貨の座から転げ落ちつつあり、ポンドと同じ運命を辿りつつある。1960年代にはポンドをまったく受け付けない国もあったが、今後ドルをまったく受け付けないという国も出てくるかもしれない。
――では、ジムさん自身、今は何に投資していますか?
(「金融危機下でジム・ロジャーズが語った(2) ~中国株はそろそろ買っていい時期に来ている~」へつづく)
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