2000-12-31

タイトル不明

清春さま:
>変な質問ですが
>国と地方自治体の債務(借金)は5年もすれば1000兆円の大台に乗ると思います。
>国と地方に貸し込んでいるのは、国民と、国民の金を預かっている金融機関です。
>仮に政府が徳政令を発布して、国と地方の借金の棒引きを決めたら
>国民の1000兆円の金融資産がゼロになりますよね。
>ということは、日本国民には、預金なんかないということになりませんか?

まあ、おおざっぱな計算ではそういうことになりますね。
徳政令というのは冗談のように聞こえるかもしれませんが、政治や経済が混乱すれば
有り得ないことではないのです。

少し昔話をさせてください。

うちの先々代、つまり私の祖父の代の頃は、泥沼の戦争がいよいよ拡大し、経済は統制色を
強めておりました。働いていた若い衆は次々と徴兵されて行き、人手不足が悩みのタネ
だったそうです。政府は膨れ上がる軍事費をファイナンスするため、国民に倹約を強制し、
貯金を奨励していました。

大叔父(祖父の弟)はインドシナで戦死しました。まあこの人は陸士出の将校、つまり
職業軍人でしたから、お国の為に殉ずることは当然のことだったのかもしれませんが・・・
やがて敗戦・・・

経済混乱の中、GHQと政府はインフレ抑制を大義名分に、預金封鎖を行ない、
旧貨幣を新円に切り替えました。金融資産は、事実上、没収されたのと同じです。
さらに追い討ちをかけたのが、農地解放でした。
もちろん、祖父はたいへんな苦労をしたそうです。私も幼い頃、当時の話を幾度も
聞かされました。
「それでも、空襲で家を焼かれ、家族のほとんどを失った人々に比べれば、まだうちは
幸せな方なんだよ」と言って、静かに笑っていたのが思い出されます。

戦争に負けるということは、こういうことなのですね。個人の生命も財産も、
国の後ろ盾があってのものに過ぎませんです。
そしてこの国の政府は、どうしようもなくなったら最後はツケをすべて国民に回します。

「だから日本政府が破産しないように支えましょう」ということが言いたいのではありません。
むしろ逆です。「政府の破産に道連れにされないよう、自分の身は自分で守りましょう」と
いうことですね。
幸い、当時と違って、今は自分の財産を守る手段が豊富にあります。最悪のケースに
備えて、多少なりとも外貨や貴金属に資産を割いておくのもひとつの考え方だと思います。

郵貯も国債も、今のところ安全な投資先ではありますが、絶対ではない、ということですね。

>例えていえば、隣り合う2軒の家があり、1軒は倹約家で1000万円の金をもっている。
>隣に飲んだくれの親父がいて、その親父が倹約家から1000万円の借用書を書いて
>1000万円持って帰り、遊びで使い果たしてしまうとする。
>倹約家は1000万円の金をもっていると思っているが、
>この2軒の預金を合計すると、ゼロである。
>政府と国民の関係は、シンプルにいえば、こういうことではないのでしょうか?

・政府支出は(大部分が)国内企業所得および国内雇用者所得になる
・政府は徴税権を持っている
・政府は国内で最高の信用を持っている(経済規模が許す限り国債を発行できる)
・政府は中央銀行に不換紙幣を増発させることができる
・個人はmortalな存在であるが、政府はimmortalな存在である

など、ちょっとそのたとえではカバーし切れない部分が多いので、あまり話を簡単に
しすぎるのもまずいかな、という気はします。