2007-08-30

日経金融新聞

  • 同じころ、〇五年のジェイコム株の誤発注事件で二十億円を稼いだ K さん (29) の心も揺れていた。
    商社、鉄鋼、自動車——。
    朝方から好業績銘柄も割安株も売りたたかれる値動きに違和感を覚え、すぐに保有株を売却。
    利益を確定して損失を最小限に抑えた。
    数十億円を一瞬で動かす K さんも、大引け前の「株価崩落」を目の当たりにしてギリギリまで迷った。
    買いに動くか、静観するか。
    〇一―〇二年の下げ相場でも見たことがない下落。
    結局、買い向かわずに大引けを迎えた。
  • その六時間後、米連邦準備理事会 (FRB) は公定歩合引き下げを発表。
    週明け二十日の日経平均は急反発した。
    K さんは「買っていたら利益は五億円。時間と勇気が足りなかった。今年最大のミス」と悔しさをにじませる。

2007-08-27

AERA アエラ

  • 「下げ相場のうえ、世界中の株式市場が見たことないくらい乱高下している。
    自分の場合は資金の 1 % を損しても 1 億円以上が消える。
    食欲がなくなってきました」
  • だが、さすがは B・N・F さん。
    16 日は都市銀行株を中心に買いを入れ、一時は損失が 1 億 4 千万円までふくらんだものの、終値では 2 億 6 千万円の含み益を得た。
  • 複数の指標を使って、株価がその日の底を打つ前のタイミングをはかって買いを入れる。
    この日は円高の異常な進行、米国先物市場の下げで彼の予想以上に株価が下がったが、午後に反発した。
    だが、翌 17 日は再び下落し、結局は売って 1 億 5 千万円の利益を確定した。
  • 「長期的な予想なんてわかりませんよ。
    年末までに戻るなんてことは、希望的観測でしょう?」
  • 根っからの相場師にとって、この乱高下相場は神経も使うが、願ったりかなったりかもしれない。
  • 「この乱高下はチャンスでもある。
    当分ノーポジ(株を保有しない)はありえない」

2007-08-18

東京スポーツ

  • 「全く分からない相場ですね。
    まさか今日こんなに下がるとは思いませんでした」と B・N・F 氏はいつも通り冷静だった。
    まさかこの下落局面で勝っているなんてことはあるまい。
    16 日の結果はどうだったのか。
  • 「今日は朝一番に、銀行株を中心に大量に買いつけました。
    額にして 100 億円分くらいです」という。
    しかし、同氏の思惑に反して、株価は時間がたつにつれ下がる一方。
    「損失は一時 1 億 6000 万円までいきました」
  • ところが、午後 1 時半を過ぎたあたりから突然銀行株を中心に反転し始める。
    猛烈な買いが入ってマイナス 8 % まで暴落していた三井住友 FG が一時プラスにまで浮上したため「売り抜けた」という。
  • 結局、損どころか 2 億 4000 万円以上の利益となり、トレードは大成功だった。
  • 「17 日もまた下がるかもしれないというリスクがありましたから……。
    ホントならもっとうまくトレードしてもっと稼げたんでしょうけど」とちょっぴり悔しそうな同氏。
  • しかし、常に勝っているわけではない。
    「実は最近、今年最大の損失を出してしまったんですよ」という。
  • 先週 10 日の株式市場は想定以上の下落を記録。
    ついには、売り逃げできずに 1 日で 2 億 8000 万円の損失が確定した。
    さすがの同氏も「参りました」というが、200 万円から資産をここまで増やした男は役者が違った。
  • 週明けの 13 日には 3 億 6000 万円のとなり一気に取り戻したのだ。
  • 160 億円の資産は今年に入って 175 億円に増えている。
    この暴落相場で儲けるとは、さすがとしか言いようがない。

2007-08-09

幸せを感じる瞬間

北尾 それだけ毎日株のことだけを考えていたら、休む暇もないね(笑)。例えば、どういう時に幸せを感じますか?
B・N・F 幸せを感じるときですか・・・。あんまり、そんなにないですね。全部売り抜けたときですかね(笑)。短期でやってるんで、常に心の余裕がない感じですね。ですから売り抜けた後も、また買う銘柄が出てくる可能性がありますし・・・。株始める前とかは、結構ボーっとしてましたけど(笑)。
北尾 いや、株の世界ってそうですね。僕も機関投資家相手にセールスやっていた時は、もう本当に毎日毎日休める暇なんてなかった。しかし、寧静致遠という言葉があるように、落ち着いたゆっくりした気分にならないと遠大な境地に達することが出来ない。これは諸葛孔明が五丈原の戦場で陣没する時に自分の息子に遺言として残した言葉だけど、そういう時間も持とうとしないといけないね。
B・N・F まあそうですが、なかなか余裕ないですね。
北尾 そういう点では短期は特に厳しいですよ。しかし、僕のお客様で儲かっていた人は、ほとんど短期でやらなかった。最近読んだ「日本経済のリスク・プレミアム」(著:山口 勝業)という本は非常に優れた本でしたが、そこでも50年にわたる実証分析結果、長期投資のほうが良いという結論になっていましたよ。
B・N・F でも、それは資金にもよると思うんですよね。例えば100万円を長期で運用して、3倍になっても300万円とか。これじゃあんまり意味がないと言うか・・・
北尾 それは短期でやった方がいいよ。ある程度の資金がなければ、長期投資を考えるのは厳しいと思うね。
B・N・F だからある程度資金増えてからは本当に長期の方がいいかなとは思いますね。
北尾 そうそう、そうしないと難しいよ。今のあなたのレベルだともう完全に長期の方がいいだろうね、実際問題。
B・N・F 長期でもいいんですけど、なかなかそういうのはあんまり分からないんで。その辺がまだまだと言うか、だから駄目なんですね。
北尾 駄目ではなくて、それは考える暇がないから。だからちょっと落ち着いた雰囲気になって、遠大な境地に達してごらん。それこそウォーレン・バフェットみたいなことになるかもしれないよ(笑)。
B・N・F ちょっと心のゆとりがないんですね、自分の場合。常に何かに追われている感じがするんで。
北尾 やっぱり幸せを感じる瞬間を出来るだけ作った方がいいね。決してパフォーマンスがよかったから、儲けたからって幸せを感じるものではないと思うよ。だから、例えば家族のこととか、子供の成長だとか。そういう幸せを感じる瞬間をどんどん増やしていった方がいいと思うね。
B・N・F そうなってしまったら、あんまり株に集中できなくなってしまう、というのもありますけどね(笑)。
北尾 まあ、それはそれでいいんだと思うよ。そうやって成長していくんですよ。投資家としても。それでいいんじゃないかな。
B・N・F だから先々のこととか色々と考えると、もうちょっと長期投資とかの勉強していきたいんですよ。
北尾 短期投資だけでなく、長期投資でも大いに成果上げてくださいよ。その時にはイー・トレードも使ってくれるとありがたいですね。他のサイトに慣れてしまうと、慣れで使い続けてしまうこともあると思うけど、長期投資だったら使い勝手はそんなに問題にならない(笑)。
B・N・F まあ日本株の長期投資はなかなか考えていないですけど(笑)。
北尾 もちろん外国株も含めてね。そんなに遠い先の話じゃないんだけど、僕の夢は自分のPCの前で世界中の銘柄が自由に買えるようになること。そして日本の投資家がグローバル・アセット・アロケーション(国際分散投資)をやる上で、ためになることを次々とやっていこうと思っている。
B・N・F それは素晴らしいですね。
北尾 でも今まで僕がやってきた中で、一番投資家のためになったことというと、やはりイー・トレード証券を作って手数料を極力下げたことだろうね。それまで大手の証券会社などの高い手数料は、全部自分たちの懐に入ってたわけでしょ。それを全て投資家に返した。
B・N・F そうですね。そのおかげで短期売買が出来るようになった。
北尾 そして、そのおかげでイー・トレード証券も儲かるようになった。だから、これはめぐりめぐっているんだけどね。
B・N・F そう考えるとネット証券ってよく出来ていますね。
北尾 そう。そして今までなら大手の証券会社が株を買う相手として見做していなかった20代、30代の若い人たちのおかげでイー・トレード証券は収益が出てきているわけです。もう一つ大事なことは20代や30代の人は30年経ったら50代や60代になっていく。そうなると富裕層になっていくということです。
B・N・F そうですね。逆に野村證券の顧客の年齢層は上がっていきますからね。
北尾 だから経営は時間の関数なんです。僕は会社を作るときにいつも20年経った時に、この方がいいっていうことが立証されるような、そういう会社を作ってきた。
B・N・F ネット証券やインターネットの会社なんかもそんな感じですね。だから今20代30代の人だったら年をとっても皆インターネットやるんで。
北尾 やるんですよ。もう50代や60代の人も皆PCだとか携帯だとか、そういったものを活用するようになります。今までの常識なんてなくなってきて、もっと新しい世界がくるかもしれない。それまでにもっともっと資産を伸ばして下さい。
B・N・F ええ、まあ(笑)。
北尾 いや今日はどうもありがとうございました。
B・N・F はい、ありがとうございました。

日経金融新聞

  • 東京都港区の高層マンション——。
    ここに連日で巨額の資金を動かすコジンがいる。
    みずほ証券のジェイコム株誤発注で二十億円を稼いだ K さん (29) だ。
  • 眼前には五台のモニターを配し、百―二百銘柄の株価の動きをにらむ。
    チャートで買いと判断するなり、素早い手つきで数千万―数億円単位の注文を次々と執行。
    一日の売買代金は三百億円に達することもある。
    東証一部の売買代金の「一 % を握る男」だ。
  • 金額が膨大なため空売りはしない。
    それにもかかわらず、七月下旬以降の急落局面で大きな損失は発生しなかった。
    不安定な海外株をみて、持ち高を極力減らしていたからだ。
  • 巨額の資産ながら、機動的かつ大規模に株と現金の配分を入れ替える。
    機関投資家には決してまねのできない芸当といえる。
  • 売買の判断に特段ルールのようなものは設けていない。
    その時々によって、様々な要因を総合して判断する。
    いまは米国株、アジア株、円相場、商品市況などをにらみながら反発のタイミングを見定めているという。
  • ただし、取引は一日―一週間程度の短期に特化している。
    本人いわく、「数カ月先の相場なんて、想像もつきませんから」。

2007-08-08

アメリカは本当にすごいですね

北尾 ところであなたの名前は、投資家のヴィクター・ニーダーホッファーから取ったそうだね?彼のどういうところを気に入ったの?
B・N・F ヴィクター・ニーダーホッファーはヘッジファンドを運用していて、高いパフォーマンスを続けていたんですが、破産するくらいまで大損しちゃったんです(笑)。オプションだったんですけど、他の人が皆売ってた時にその人だけはプット・オプションを空売ってたんです。上がる方に賭けてたんですね。他の人が売っている時にその人だけ強気なポジション取って、結果的に追証になって強制決算させられて、それで大損しちゃったんです。でも、読み通りにその後すごく上がっていったんです。あの時、市場が30分早く閉まってしまい、それがなければ大成功だったかもしれません。普通、あれだけ成功してたらオプションであれだけ強気の、破産スレスレのポジションを取るなんてできないじゃないですか?それができるだけで、儲けるポテンシャルが高いってことなんだと思うんですよ。普通の人ができないことをやってるので。
北尾 市場が30分早く閉まる。彼の場合は「運」が無かったんだろうね。僕はこの相場の勝ち負けっていうのは確実に「運」があると思いますね。
B・N・F いろんな「運」がありますね。始める時期とか。
北尾 本当にその「運」に恵まれている人と恵まれてない人と、その差が正直に出てくるね。相場は。
B・N・F 自分の場合だと時期的なものがすごく大きかったですね。ちょうど自分が学生のときにネット証券とか手数料自由化が始まったんで。だから10年早く生まれていたら駄目だったろうし、10年遅く生まれても全然こういう風に儲かっていなかったと思います。
北尾 始めたのは大学3年のときからだっけ?
B・N・F そうなんですよ。ちょうど暇で(笑)。
北尾 そのころから株式には興味持ってたの?
B・N・F そんなに興味無かったんですよ。やっぱりネット証券とか手数料自由化が始まったのが大きいですね。それまではほとんど興味なかったですね。
北尾 まぁこれからだよね。その170億円を1700億円、2000億円にするのか、もしくはまた1000倍にしちゃうかとかね(笑)。
B・N・F それはもう長期でやるしかないでしょうね。個人レベルだと情報の面で限界があるので、なかなか難しいですね。
北尾 情報面での限界ね。でも最終的には自分の持っている情報と自分自身を信じ込むしかないんだよね。バフェットも信じ込んだ。60年代にマンハッタンファンドを作ったジェリー・サイは、当時まだ新興企業だったゼロックスやIBMに次々と投資した。それがどれもものすごく上がって大成功になった。彼はこうした当時の新興企業の将来を信じた。
B・N・F 普通はそこまでリスクは取れないですからね。
北尾 ジェリー・サイの場合はその後また生保を買うんだよね。相場で儲けて事業を買う。その事業を育て上げてまた儲ける。
B・N・F バークシャーなんて完全にそうですよね。普通の繊維会社だったのを買って。日本で言えば、ソフトバンクもそういう風に成長してきましたね。
北尾 結局ソフトバンクが今日まで事業を伸ばせたのは、ヤフーに投資した100億円のお陰ですよ。これが何倍にもなったわけだから。
B・N・F ヤフーは大成功でしたね。ソフトバンクにとって本当に大きかったと思います。でももうアメリカのヤフーは結構売ってしまいましたね。
北尾 アメリカのヤフーは売ったね。売った当時は持っていた方がよかったんじゃないかという議論もあったけど、最近はそういう議論が消えたね。
B・N・F まあアメリカのヤフーは上がっていないですからね。先日の決算発表でも6四半期連続減収減益って感じですので。
北尾 もう完全にグーグルが抜いたからね。ヤフーの人海戦術に対してグーグルの考え方は最初からロボットだった。人海戦術にはすぐ限界が来るけど、ロボットはどんどん進化するんですね。
B・N・F しかし、グーグルは本当にすごいなあと思いますよ。NHKスペシャルを見たときに特集をやっていたんですけど。まあ、アメリカを見ていると本当にスケールが違いますね。最近米国株は自社株買い、ダウに入っている30銘柄の中で自社株買いを発表することが結構多いです。それも何兆円とかレベルで。
北尾 IBMなんか凄いことやっていたね。自社株買いをするために転換社債を出す。そして行使価格を今の株価よりもだいぶ上にした。そしてそれで資金調達をして、それに見合った同じだけの株を市場から買う。だけど行使価格が上だから必ず上に行く、という訳です。面白い方法を考える人がいるんだよね。僕もずっと研究していますが、僕の研究テーマの一つは資金調達と株価、M&Aと株価なんです。
B・N・F アメリカは本当にすごいですね、金融に関しては圧倒的だと思います。製造業が駄目でも、貿易赤字がすごくても結局金融で取り返すんで。日本の場合は株式市場が低迷しているからみんな難しいんですよね。資金の流れが今悪いんで。ライブドアショックが結構効いていますよ、日本は。
北尾 今考えると、僕が登場したこともライブドアショックを起こすようなことにつながったかもしれないね。
B・N・F まあ、色々あって結果的にライブドアショックが起こって・・・、新興市場は一気に低迷してしまいましたね。
北尾 そう、ある意味で自分の首を自分で締めたようなことが若干あるんですよね(笑)。ライブドアはファンドを使って決算操作をしていたので、ファンドについての監査が厳しくなった。そうすると他の新興企業も次々と問題起こしていく。
B・N・F 新興は下方修正する企業がすごく増えたんですよね、あの後。それで新興市場の信頼性が失われたことが、低迷した一番の理由なんですよね。信用がなくなっちゃって、それで株をやめる人がどんどん増えていって・・・。日本株が世界的に出遅れている原因として、個人投資家が元気ないっていうのが一番大きいと思うんです。他の国はあれだけ株が上がっていれば、多分個人投資家もすごい盛り上がっていると思うんですけど。日本はあまり盛り上がっていない。
北尾 日本の場合は機関投資家も原因だね。90年代初頭に始まって2000年に入ってからも続いたあのバブル崩壊の後遺症がずっとあって、毎日毎日株価下がっていくあの経験を忘れられない機関投資家のポートフォリオマネージャーがものすごく慎重になっている。ジョン・ケネス・ガルブレイスが『バブルの物語』で言っているように、これはもう世代交代しないといけないかもしれないね。
B・N・F 自分はちょうど落ちたところくらいではじめているんですよね。80年代の日本はバブルを作っちゃったと思いますが、今の中国がそんな感じになってますね。
北尾 あの時の日本は企業業績が伸びていないのに、株価や土地の価格だけ上がり続けた。中国はそうではなくて業績もどんどん伸びているから、まだまだ伸びる銘柄が沢山ある。
B・N・F 日本も89年に日経平均は天井をつきましたけど、でもその後、本田とかトヨタとか京セラとか業績のいいとこは上がっていきました。今の新興市場でも中にはDeNAのように、業績が良くて上がっているところもあるんで。
北尾 もちろん業績は大事な要素だけれど、結局マーケット全体が下がるときに業績はほとんど影響なかったね。機関投資家は売れるものから売っていく。外国人もあの時はもう日本のマーケットからどんどん売れる株から売ってゲットアウトしていたでしょ。だから出来高の高いもの、そして業績が比較的よいものもどんどん売り出していった。結局全部下がっていったね。やっぱりそれが相場の一つの流れだと思うんですね。
B・N・F それでも長い目で見ればトヨタとか本田とか……
北尾 そう、それこそがまさに「買い場」なんですよ!!
B・N・F そうですよね。そういう銘柄こそが長期的に見れば「買い」なんだと思いますね。

2007-08-03

機会損失をしたくないからやってるという感じ

北尾 でも、160万円を170億円にしてこれ以上儲ける必要があるかって話もあるよね(笑)?
B・N・F まぁ確かに(笑)。それはありますね。
北尾 それでもまだ儲けたい?
B・N・F ーん・・・。儲けたいっていうよりも、機会損失をしたくないからやってるという感じがありますね。日経平均が300円くらい上がっているときに何の取引もしていなかったりして「あぁ、今日やってれば2億円くらい儲かったのかな」って考えちゃうと2億損したのと同じような気分になっちゃう。そういう風に思いたくないから続けてるってところはありますね。だから中毒なのかもしれません。
北尾 中毒ね(笑)。
B・N・F 基本的にそうなんですよ。金額的にはもうやめてもいいんですが、儲けそこなったりしたら嫌だなっていうのがあるから、どうしても毎日画面を見ちゃうんですよね。
北尾 でも見てしまうと集中するから結構疲れるでしょ?
B・N・F そうですねぇ。もう30近くなってきたんで(笑)。今後はもっと長いスパンで、長期とかもやっていかないと資金的にも増えていかないかなと思いますね。短期だと精神的にもきついし、利益率もどんどん悪くなってくるんで、今後は長期投資も取り入れていかないと難しいのかな、とは思ってます。
北尾 ウォーレン・バフェットも基本的に長期だからね。彼の投資した銘柄の中でジレットやコカ・コーラが有名だけど、彼は継続的に消費するようなものに投資したんだね。
B・N・F 長期だと、そうするべきですね。
北尾 ジレットなんかは、本当にうまいと思うよ。普通のヒゲソリ使っていて、しばらくしたら「その替え刃はもう作ってません」なんてこと言うんだから。しょうがないから新しいものを買ってしまう。それから今度は二枚刃、三枚刃ってどんどん商品をグレードアップして出す。でも、どっちがいいかって昔のほうが良かったんじゃないかって気がするけどね(笑)。
B・N・F 確かに上手いやり方ですね(笑)。

資源株は強いですね。

北尾 先日ベトナムに出張に行ったのですが、ベトナムのマーケットを見ていたらどんどん上がっていました。ベトナムくらいになると、アメリカとか中国とかの影響を受けないんですね。マーケット自体が小さいから、他の国からお金が入ってきたらもう上がるしかない。
B・N・F 日本でも海外への投資が増えて、お金が出て行きます。だから円安になっちゃうんでしょうね。そのお金もいつかは戻ってくるんでしょうけど。
北尾 現状ではお金が出て行くだけで入ってこない。だから日本の市場は上がらないんだね。
B・N・F 今の日本の株は一極集中って感じで、上がる株は上がるけど上がらない株は全然上がらない。ずっとそんな感じですね。商社とか世界規模の仕事をしてるところは結構上がるんですが、国内向け企業は中々上がらないですね。
北尾 商社といえば、今資源の値段が上がってるでしょ。私のところでも中国のチタンの会社を買いたいと考えていたのですが、世界中から引っ張りダコみたいでね。昔、世界中でチタンが枯渇するという噂が流れて、日本のチタン関連の会社の株がものすごく上がった時期があった。それと同じような現象ですね。商社株が強いのは、そういった資源系に関わっているというイメージが強いからかもしれませんね。
B・N・F 資源株は強いですね。三菱マテリアルとかも強いし。
北尾 資源は強いですよ。今中国では政府自体が力を入れて資源を買い漁ってる、という状況でしょう。
B・N・F 資源の値段が上がりすぎちゃって、資源を扱ってる会社の株を買収した方が安い、っていう感じだったみたいですね。
北尾 日本の企業はそういったものに対してのアクションがものすごく遅いね。このままじゃ中国の企業のほうが力持っちゃいますよ。
B・N・F 確かに中国は早いですよねぇ。
北尾 びっくりするくらい早いよね。やっぱり華僑の伝統からか、嗅覚がものすごく発達しているように感じますね、お金に対しての嗅覚が(笑)。 日本人はその点のんびりしてる。
B・N・F まぁ島国なので、その辺に無頓着なのかもしれないです(笑)。
北尾 この次くるのは、僕は食料だと思っています。
B・N・F もう来はじめていますね。
北尾 確かにバイオテックの関連で既に来ていますね。ところが、これからもっと健康ブームが世界中で浸透してくると、世界でもトップクラスの長寿を誇る日本の食事が見直されるようになる。そうなると魚類関係が来るわけです。それと、やはり水だね。
B・N・F もう世界的に水不足ですからね。
北尾 中国の黄河が、四大文明の一つである黄河文明の中心となった黄河が、枯れてきているというのだから問題は深刻です。一方、水がある揚子江でも汚染のために飲むことはできない地域があるそうです。
B・N・F その点、日本は雨がたくさん降る国なのでそれが資源になるかな、と思っています。ですから日本には農業とかが良さそうですね。まずは農地を自由化して欲しいのですが。
北尾 食料に関してはやはり食料安保の考え方が基本的にあって、なかなか自由化しないんだよね。お米にしても、それ以外にしても。
B・N・F でも、世界的に人口が増えてしまっているので、どうしても食糧が不足してしまうんです。その中で食料の価値というものが、どんどん上がっていきます。そう考えると日本には「雨が降る」というすごく有利な条件がありますので、日本は資源の無い国ですが農業とかも資源になるんじゃないかと思うんです。
北尾 農業を発展させるという意味では、成長を早める薬とかが重要になるかもしれないね。例えば、林原生命科学研究所が開発しているトレハロースを植物に入れると物凄く成長が早くなる。そういう技術が脚光を浴びてくるのではないかと思うね。
B・N・F 人口は増え続けていますが、食料も資源も無限ではないじゃないですか。ですから、そういった技術や新しいエネルギーは、人類の永遠のテーマとして追求されていくでしょうね。
北尾 現実問題として地球全体が異常気象に見舞われ始めているし、温暖化のために南極の氷も溶け始めている。そうなってくるとやはり省エネも大事になってくるね。
B・N・F 資源を効率よく使えて、地球温暖化にもいいということで原子力も今注目されていますしね。原子力関連銘柄は強いです、東芝とか。
北尾 そうだね。資源というと、以前ベトナムに紙の原料をつくる大プランテーションを作らないか、という話があったね。物凄く広い土地を使って紙の原料である木を栽培する。人類が生きていく上で紙は必要不可欠な材料だから、人口の増加に伴ってこれが不足する前に押さえておこうという話。是非とも出資して欲しいと言ってきてね。
B・N・F 結構儲かりそうですね(笑)。
北尾 でも、紙の原料は栽培はじめてから出来るまでに6年もかかるって。6年もしたら僕はもういないかもしれない(笑)。自分で責任の取れない投資はしないことにしているからね。でも、どちらにしても今は日本国内に投資するよりも海外に投資したほうがずっと効率がいいと思うね。
B・N・F 海外が盛り上がっている中で日本だけ取り残されていますしね。
北尾 僕の考えではお金を儲けるということは全てアービトラジだと思っている。要するに鞘を取っていくことです。例えば日本は先進国なので後進国に行ってその鞘を取ってくる。後進国の方がお金がないので金利も高くつくから金利の鞘だって取れる。これが僕のビジネスの発想の根幹にあるわけ。
B・N・F 日本は先に成長した国なので、日本にいるだけで他の国がどういう風に成長していくかがある程度読めるので、その点では有利ですね。
北尾 そう。そしてインターネットの世界では、かつてアメリカが日本より5年先をいっていた。アメリカで成功したものを日本でやれば必ず成功するだろうという発想で、例えばヤフーやイー・トレードなんかも持ってきたのです。タイムマシン経営なんて言ったけど、これを利用してアビトラージで儲けていくっていうのは、ひとつの儲け方かもしれないね。
B・N・F 会社組織じゃないと難しいですよね。個人レベルだと株を買うとか、まぁせいぜい海外の株を買うとかそういうレベルになっちゃいますね。
北尾 そうだね。個人で出来ることには限界がある。だから、如何に他の人と違う形でいけるか、というのが重要なんだろうね。さっき言われたように、市場に出て行くのが比較的早かったというのは良かったんだろうと思いますよ。
B・N・F はい。そうですね。

2007-08-01

これがあなたの天命、いや天職かな?


北尾 新しくつくるPTSでは取引のスピードがもっと早くなるシステムを導入します。ですから今の東証のシステムでは対応できないような取引が行えるようになるわけです。
B・N・F そうなってくると、東証の場口銭なんかも回避できるかもしれないので競争になりますね。
北尾 そう、競争になるよ。ただ、問題は欧米と比較して日本の取引所は東証、大証含めてあまり儲かっていないことなんです。そして収益力が低いために十分なシステム投資が出来ないという状況になっている。
B・N・F 東証も儲かってないとは思いませんが、欧米と比べるとそうですね。
北尾 だからといって場口銭を上げると大きな反発が出てくるでしょう。一方の我々は場口銭もなるべく下げて、イー・トレード証券をはじめ各証券会社に利益を還元することで、それを手数料などで顧客へと還元できるようにしていきたいと思っている。やはりネット証券になって手数料が安くなったことは個人にとって大きいことだね。
B・N・F それが一番大きいですね。手数料が昔のように高いままだったら短期で取引できないですから。
北尾 今だって野村證券とイー・トレードを比べたら10倍以上違うよ。大手の証券会社のようにリアル店舗を構えて従業員をたくさん雇ったらそのくらい手数料を取らないとやっていけないからね。
B・N・F でも今はリアルからネットへどんどん移行が始まっていますよね。
北尾 うん、でも個人の預かり資産で見たらネットに移行しているのは1割くらいしかない。これを変えていかないといけないね。
B・N・F 高齢の方々は証券マンとの付き合いとかがあってなかなかネットには行かないですからね。
北尾 それも時間との関数で当然変わってくるね。それにしてもまあ、あなたはずっとこの世界で身を立てていくの?これがあなたの天命、いや天職かな?
B・N・F それはわからないですね・・・
北尾 どうしたい?例えばあなたくらいの実績なら、他の人からもお金を集めてもっと巨額のお金を運用することだって出来るかもしれないよ。
B・N・F それは精神的に参っちゃうと思いますので。やはり他人のお金を運用するっていうのが僕には向かないですね。他人のお金を運用する場合はノルマがあるじゃないですか、毎月○○円儲けなければいけないとか。そういうノルマとかがあると、例えば月の半分が経過した時点でまだマイナスだった場合に焦って変な取引をしてしまって、それで損をしてしまう可能性もあるので。ですから、なるべく自分のペースでやりたいというのが大きいですね。なるべく無理はしたくないんです、市場は自分の都合で動かないのに無理して変な売買したらそれが大損になるかもしれないので、そうはなりたくないですね。
北尾 うん、なるほどね。
B・N・F 無理な取引によって失敗した人とかも結構見たりもしてきたので。すごく上手い人でもそうやって失敗することはありますしね。SBIさんもファンドやってるじゃないですか。ファンドマネージャーとかって大変だなって思いますね。
北尾 そうだね、やはり他人のお金を預かるということはそれなりに大変ですよ(笑)。そして今「無理をしない」と言っていましたが、僕も30年以上相場の世界を見てきたけど、やはり無理をしたらダメですね。無理をすること、欲をかくこと、この二つをやったらダメだと思うね。魚と一緒で頭と尻尾は捨てる、身の部分だけ食べればいいんです。ところがついつい「もっと欲しい、もっと欲しい」となってしまうと破滅してしまうんですね。
B・N・F 年間○%、とかノルマを課せられるとそうなってしまう気がしますね。自分のお金だけでも辛いのに他人のお金は無理ですよ。
北尾 でもあなたの場合は自分のアセットだけでもどんどん増えてきてるから、それだけでもきつくなるね。目標はどれくらいですか?
B・N・F いや、目標とかは立ててないですね。
北尾 では、どのくらいまで伸ばせそうですか?
B・N・F 短期売買だともうそんなに増えていかないと思いますね。長期投資もやっていかないとさらに上は難しいと思うんです。短期で続けていく場合だと、200億~300億くらいが限度かと思いますね。
北尾 短期売買で大きな金額を運用しようと思うと、小さな銘柄に投資すると自分の売買だけで値が動いてしまうから、大きな銘柄にしか投資できなくなるしね。そうやって制限されるようになってくると厳しいんじゃないかなって思うね。言われる通り。やはり金額が大きくなってくると長期投資が大事になってくるだろうね。
B・N・F 日本株だけでなく、海外株もやるっていう方法もありますね。今はやってないですけど、海外株もやっていかないといけないと思いますね。
北尾 今、アメリカのマーケットを見ているとM&A関連が結構盛り上がっているね。
B・N・F アメリカは本当にM&Aのお陰でかなり株価が引き上げてられていますね。何兆円単位でのM&Aが次々に出てきて凄いですよ。
北尾 すごいよねえ、今回のマードックさんの一件とかは。
B・N・F 先日、ブルドックの件あったじゃないですか、あれは日本株全体にとってはあまりよくないですね。
北尾 あれによって、スティール・パートナーズのようなところは買収に出てくるのは難しくなったね。
B・N・F ああいった形で買収防衛策を行うと、世界レベルでのM&Aの流れには中々追いつけない部分がありますね。ほかの国の株価はM&Aで上がっている部分がありますから。
北尾 今回のような判例が出てしまうと、グリーン・メーラーやそれに準じたような買収行為は難しくなってくるね。あのような結果になると予想はしていたけど、今回の司法の判決はきわめて日本的だったね。アメリカではあのような結果にはならない。
B・N・F 投資家から見ると、M&Aは株価が上がるので期待が持てます。日本ではそんなに何兆円とかいうレベルのM&Aはほとんどないですからね。やはりアメリカは規模が違いますね。
北尾 アメリカと比較すると、アメリカはお金が入ってくる国だからやっぱり強いね。中国を見ても中国は輸出超過型の貿易でどんどん外貨をためていって、その外貨をドルに変える。そうするとアメリカにドルが行く。そのお金はまず債券市場に行くわけだけども、その債券市場が溢れ出してくる。今サブプライムローンの問題があるけれども、こういったものが売れなくなってきます。そうなると、結果として株式市場にお金が入ってくる。この流れが大きいですね。そしてオイルダラーもありますね。産油国にたまったお金はアメリカに行く。残念ながら日本には来ないんです。
B・N・F まぁ多少回りまわってくる分があるくらいですよね。
北尾 それでも、昔なら日本にも来たんですよ。世界第二位のマーケットだった頃は。ところが今は中国やインドに行ってしまう。これは昔はなかった現象ですね。
B・N・F 日本だけ蚊帳の外ですね(笑)。先日なんか、他の国は全体的に上がってたのに、日本だけ下がっていましたしね。