2006-02-28

テレビ東京「ガイアの夜明け」

▼番組内容紹介

取材日は2006年1月25日、1月26日、2月6日になっています。2006年1月16日にライブドア事件が起こり新興市場の株価下落は始まっていました。しかし、日経平均株価は未だに堅調であり、2005年から巻き起こった株ブームはまだ終わっていませんでした。この番組では大学生トレーダー、プロトレーダー、主婦トレーダーなどのトレード風景を同時取材した映像が放送されています。

その中でも桁違いのトレードをしていたのがB・N・F氏です。YouTubeには「激動!株式市場」の映像の前半しかありませんが、後半のB・N・F氏の発言も書いておきます↓

▼B・N・F氏語録

▼2月6日

B・N・F氏:今日盛り上がってんのが、どっちかというとライブドア関連の株が盛り上がってるっていうか。

(ライブドア株を50万株)102円で売った。300万くらい(儲けた)。

記者:個人の家から何十億円もの取引ってそんなに簡単にできるものなんですか?

B・N・F氏:今はそうですね。

朝起きて1時間くらいで、まあ、8時20分くらいに起きて9時20分くらいにはもう1億円くらい損してることもあるんですよ。そうすると辛いじゃないですか。朝から。

記者:こういう取引をマネーゲームだという指摘もありますが、ご自身どう思われますか?

B・N・F氏:うーん、そういう部分もあるとは思いますけど。

記者:マネーゲームをやっていると?

B・N・F氏:はい。

▼1月25日

記者:今日はライブドア株をどれくらい買ったんですか?

B・N・F氏:500万株くらいですね。

記者:500万買ったということは7億円ですか?

B・N・F氏:そうですね。7億円ですね。

▼1月26日

B・N・F氏:だいぶ売っちゃったんですけど。400万株くらい売っちゃったんで。

記者:もう売ったんですか? 400万株?

B・N・F氏:はい。

記者:いくらぐらいの損が?

B・N・F氏:5000万くらいじゃないですかね。

記者:5000万円、非常に痛手とかそういう感じはしない?

B・N・F氏:うーん、でもまあ他で儲かったんで、まあ。うーんほんと5000万くらいで済んですごいよかったなあと思ってるくらいなんで。

ナレーション:B・N・Fさんの昼食はこれ(日清カレーヌードル)一つ。お腹がいっぱいになると取引の勘が鈍るといいます。

記者:株式市場とはなんですか?

B・N・F氏:今はほんとだから・・・、うーん、今はほんと中毒みたいな感じだと思うんで・・・。

記者:趣味はどういうものですか?

B・N・F氏:趣味は・・・うーん、なんだろう。特にないですね今は。

記者:彼女は?

B・N・F氏:いないです。

ただのニートだと思うんです。

記者:ただのニート?

B・N・F氏:株の売買してるだけだと思うんですけど。それ以外のものは別にないんで。うーん、ほんと大損するまでは、なかなかやめられないのかなあっていうか。うーん。

~~~場面転換、河原で散歩風景へ~~~

B・N・F氏:儲かった日は、そうですね、散歩とかして。

記者:若くして巨万の富を手に入れたわけですから、何らかの感慨とかあるんじゃないですか?

B・N・F氏:まあ、あんまり実感を持たないようにしてる。実際1億円とか見ちゃうと、1億円損したときとか実感が湧いちゃうと、取引自体も少し臆病になっちゃうんで、まあだからそういう実感は持たないようにはしてますけどね。

記者:夢は?

B・N・F氏:夢・・・うーん、損しないことですね、はい。

▼以下、「ガイアの夜明け」で放映されたBNF氏に関する内容のまとめです

楽天証券を使って株取引を行っている。

・楽天証券のマーケットスピードを使っている。

・マーケットスピードの操作は恐ろしく早い。

・マウスとキーボードは、それぞれ3個ずつ。

・取材当時の資産は120億円

・取材当日8時20分起き

・取材当日の昼飯は日清カップラーメン1個。満腹になると株取引の勘が鈍るとのこと。

ガイアの夜明けの放送によって、ジェイコム男がB・N・F氏だということが判明しました。そして、B・N・Fというハンドルネームから、「2ちゃんねるに書き込みをしていたB・N・Fさん」と「ジェイコム男」が同一人物だったということが判明しました。そういった意味でガイアの夜明けは画期的な番組だったといえます。

2006-02-27

My Trading Life (30)

『売り専』は、清春氏が姿を消すと、今度は、書き手が誰もいなくなった焼け跡の瓦礫のような掲示板になってしまった。時々、清春氏の信奉者たちによる嫌がらせの書き込みがある他は、ほとんど書き込みがなくなった。

奇術師さんは、荒廃した『売り専』でしばらくは書き込みを続けていた。しかし、奇術師さんもやがては姿を消すのだろうなという予感はあった。奇術師さんはトレンドフォローの投資家である。大きな仕手相場が終わった後のダラダラとした下げトレンドにも似た『売り専』の掲示板で、奇術師さんがいつまでも書き込みを続けるとは思えなかった。彼はトレンドに逆らって頑張る人ではない。



奇術師さんの掲示板での最後の書き込みを再録しよう。

華麗な流れるような文体、初心者の人への心遣い、さらりと書きながら、読むたびに新しい発見のある深い内容。奇術師さんは最後の時まで、彼らしさを失わなかった。

決して長い発言ではないし、「黒魔術?」や「株価神聖論」や「Gold」のようにその後何度もネットで語られてきた書き込みでもない。完全に忘れられてしまった発言であり、奇術師さんが掲示板でこの発言を書き込んでから5年近くの間、ネットで再掲されたり、話題になったことは一度もないと思う。

しかし、僕はこの書き込みから多くのヒントを得た。奇術師さんの最後のメッセージとして、言葉は適切ではないがいわば遺言として受けとめた。

下降トレンドにおける空売りでの利益は、上昇トレンドで買いでの利益よりもはるかに価値がある。このことは、その後2年間続く下降トレンドの中で、骨身に沁みるほど知らされることになる。

株式ビギナーが、100万円という資金を持っているとしよう。例えば株価1,000円のAという銘柄と、株価1,500円のBという銘柄があるとする。どちらも1単位1,000株とすると、100万円の資金しかなければ、A銘柄しか購入できない。A銘柄を購入したところ、運良く1ヶ月後には1,500円まで株価が上昇したとしよう。ほくほく顔で利益を確定し、今度はB銘柄を買おうとする。しかし、B銘柄はおそらくすでに2,500円、3,000円と上昇しているはずで買うことは出来ない。

A銘柄で500円幅を儲けたこの株式ビギナーが、買うことの出来る銘柄は、1ヶ月前とほとんど変わることはない。

ただ、当人のうぬぼれだけは間違いなく大きくなっているはずである。おそらくいっぱしの投資家気分で、自分の銘柄選定の技術や売買タイミングの判断に対して、根拠のない自信を持っているはずだ。

おそらく彼は、さらに大きなリスクを取ろうとするだろう。信用取引に手を出すのか、あるいはサラ金で借金をして資金を作るのかは分からないが、よりリスクの高い資金運用を躊躇わないだろう。そして、資金を目一杯張ったところで、大きな下落に見舞われる可能性が大である。

マーケット全体の大波のような動きに、個別銘柄はほぼ従って動くので、実は銘柄の選定は、それほど決定的に重要なことではない。相場全体の大きな上昇であっても、心理的にクールな状態を保ち続けることの方がはるかに大切である。

それでは逆に、一時的な下落の場面で、Aという銘柄を1,000円で空売りしたとしよう。予想通り、相場は下がり続け、そろそろ反転するのかというタイミングで850円で利食ったとしよう。利益はわずか150円幅。しかし、そのときには、B銘柄も大きく下がっているはずで、空売りの利益でB銘柄を安い買値で買うことが出来るはずだ。

株式を資産として考えるならば、上昇トレンドで、50%、100%の利益を上げるよりも、下落の局面で10%、20%の利益を上げることの方がはるかに価値がある。最終的により多くの株式資産を持つことが出来るからだ。



奇術師さんが『売り専』で最後の書き込みをした01年07月05日。そのときの日経平均は12,607.3円。日経平均は2年後の03年04月には、7603円までたたき落とされる。

明らかに風向きは変わり始めていた。嵐はすぐそこまで来ていた。どれほど大きな嵐になるのかは誰にも予想できていなかった。

そして、株価が地を這い続ける地獄のような数年間を、ネットの掲示板に集っていた個人投資家たちは、マーケットの奇術師さんのガイダンスなしで、戦い続けることになった。


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【 タイトル 】こんばんは
【 発言者 】マーケットの奇術師
【 日付 】01/07/05 23:31

日経平均 12607.3 (-21.72、-0.17%、現物)

一時プラスサイドに浮上したのですが、続きませんでした。なかなか上へ行かせて
もらえませんね・・・ただ、昨日地合に引きずられて下げた銘柄は、今日は反発
しているものも多かったです。
12500の攻防という感じですが、このあたりでショートが溜まると、今度はSQに
向けて、上を試しに行く可能性もあるかもしれません。

ボストンさま:
おひさしぶりでございます (^^)
あいかわらずボストンさまらしい、飄々としたご投稿、懐かしく拝見しました。
またよろしくお願いします。

ROM屋さん:
いや〜、ほんとに暑いです。まだ身体のほうが順応していないせいか、こたえます。
今年も早めに夏休みにするかな・・・
相場の方は、おっしゃるように何かいいキッカケが欲しいですね。日銀は短観出して
あとはしらんぷりで、頼りにならないし、困ったものです (^^;
ところで、ROM屋さん、もうすっかりROM卒業ですね。

補足:
> 個人的には、TDKが4000円を割れたら、久しぶりに現物を買い増し
> してもいいかな、と思っています。さすがに無理かな・・・

うーん、ちょっと誤解を招く書き方でしたね。
まあ、山高ければ谷深しで、無いとは言えませんが (^^;
これは単に、私が昔から持っているTDKの平均購入単価が3000円台後半なので、
万一そのあたりまでくれば、絶好の買い増しのチャンスかな、と思っただけでした。
そこまで下がるだろうとか、そういう意味ではありませんです。失礼しました。

以下は余談ですけれども・・・
以前、かの山崎種ニ氏が、どこかで
『買いで儲けた金は使いでがない。本当に値打ちがあるのは売りで儲けた金である』
という意味のことをおっしゃったそうです。売りで有名な相場師らしい言葉です。

たとえば100円の株を1万株買い、200円に上がったらどうするか?
利食ったら100万円の儲けですが、同じ株を株数増やして買い増すことは
できません。また、そういう時はたいてい他の株も上がっているので、利食って
他の株に乗り換えても失敗する可能性が高いです。

200円で売り繋いでおき、100円に下がったところで売り玉を買い戻せば、
同じ100万円の儲けでも、そのお金でさらに買い増し、合計2万株の株主になれます。
あるいは別の株を買うにしても、相場が下がっているところで買うわけですから、
非常に有利だと言えます。

私はこれを聞いたとき、なるほどこういう考え方をするんだなあ、と感心したのを
覚えています。
売買差益を抜くための中間物としてだけではなく、資産としての株式を考えたとき、
上がったり下がったりするからこそ株が資産になる、という面もあるのだということ。
右肩上がりの一本調子の相場の時代とはまた別の、取り組み方や哲学がある、ということ。
いろいろと、考えさせられるお言葉でした。

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My Trading Life (29)

『売り専』の掲示板は、毎日数百の書き込みを消費していった。丸善や東洋エンジの相場の時と比べても桁外れの数である。ザラ場を見ることが出来なくて、夜、掲示板を読もうとしても、ザラ場中の書き込みはすでに流されてしまい、読めなくなっていた。もっとも読むに値する内容のある書き込みは、まったくなくなっていたが。

『売り専』の掲示板を会話の出来ない買い煽りのための道具に変えてしまった草笛こと清春氏に対して、『売り専』の管理人は、何度か警告を発していた。清春氏はそれらの警告を全て無視していたが、ある時、「(『売り専』の管理人は)石井鐵工所の空売りしている」という根拠のない誹謗発言を書いた。

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草笛さん、
以下の私に対する誹謗に対し、余りにも情けなく、掲示板提供者としてもう気持ちは限界です。
抗議の意味でしばらく本掲示板をリードオンリーモードに変更します。
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『売り専』の掲示板の管理人である小型好みさんは、06月09日の8:06のタイムスタンプが付いたこの発言から、20:57の「再開します」までの約半日の間、掲示板をリードオンリーにした。つまり、12時間のあいだ、『売り専』の掲示板は、読むことは出来るが、新たに書き込みをすることが出来なくなったのである。

のちに、草笛こと清春氏は、『売り専』の掲示板を、自分は追放されたのだと吹聴するようになるが、これは彼お得意の情報操作であり、嘘である。彼は別に追放されたわけではない。買い煽りのさなかで、いきなりリードオンリーにされてしまう掲示板では、思うように填め込みを実行出来ないと判断して、清春氏の方が見切りをつけ、そして自由に買い煽りの出来る自ら主宰する掲示板を作ったのである。

そうした情報操作に大きく貢献した不可解な出来事があった。

丸善相場の時に、清春氏の取り巻きを中心に「丸善掲示板」という掲示板が作られていた。『売り専』が半日書き込みが出来なくなった時、清春氏の取り巻きたちはそちらの掲示板で書き込みを始めた。

その掲示板で「小型好み」のハンドルで、清春氏に売り専での書き込みを控えて欲しいという内容の投稿がなされた。

「すいか」という投稿者がいた。

掲示板の投稿者の性別というのは実はよく分からないものだが、常識をわきまえたそれなりの年齢に達した気っぷのいい九州の女という掲示板から受けた印象は、おそらくは外れてはいないと思う。すいかは、清春信者の中では例外的に、冷静な書き込みをする投稿者の一人だったが、時々、掲示板が反清春で埋め尽くされた時とか、清春氏の立場が危うくなった時に、非常に効果的に清春擁護の発言を行っていた。

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【タイトル】小型好み(売り専)さんへ
【 日時 】01/06/09 22:39
【 発言者 】すいか

(前略)

先ほどあなたが丸善掲示板にされた

>売り専掲示板再開しましたが草笛様、御控えください。
>今回の閉鎖は、けじめとして行ったのです。
>草笛様は何のけじめも行っておりません。
>再開はしましたが、投稿は御控えください。

この投稿。怒りを感じます。
掲示板を預かる物として、別の掲示板に投稿するさい、挨拶もなく、
今の状況でこのような投稿をすれば丸善掲示板が荒れる可能性がある事を十分承知の上での投稿。
すでに去っている者を、追いかけてきてまでのこの投稿は、
他の掲示板を思いやる気持ちもない、
自分の掲示板さえ守れればそれで良い者の、私怨の投稿にしか見えません。

丸善掲示板の管理人さんは、度量の広い方で、丸善掲示板投稿者の全ての方に愛されています。
迷惑をかけるような投稿はなさらないで下さい。
即刻自ら削除を求め、投稿なさりたいのなら、ご自分の掲示板に書きなさい。
一管理人として、あまりにも分別のない投稿は、
あなた自身を小さな人間に感じさせてしまいますよ。よくお考え下さい。

(後略)
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この発言は決定的だったと思う。せっかく『売り専』であれだけ多くの書き込みをして貢献してきたのに追放されるなんて、清春氏はさぞかし無念だろう。多くのネットトレーダーはそうした印象を受けただろう。

「すいか」がこの石井鉄工所の相場で果たした役割は何だったのだろう。そして、小型好みさんのハンドルを使って、草笛こと清春氏に発言を自粛するよう書き込んだのは誰だったのだろう。


石井鉄工所の相場は、個人投資家たちの大きな敗北で終わる。相場に参加したほとんどの者は、財産を失いマーケットから追放されるが、清春氏はしっかり生き残った。しかし、被害者達の怨嗟の声は、その後、何年もくすぶり続け、清春氏が主宰する掲示板には、時々、清春氏の元信者による告発の発言が書き込まれ続けた。

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【タイトル】・・・・・
【 名前 】掲示板犯罪者撲滅誘導隊
【 日付 】2003/11/03 23:40:13

いまだに自分は一連の草笛はめ込み事件に関係ないと出てくる信者の神経がわからない。
自分に罪の意識がかけらも無い、すいかよ、お前のことだ。
何度も他の人が指摘しているが草笛事件は草笛一人の責任では決してない。
共同正犯として過去、そして現在もその信者の存在の責任は重い。
すいかはその代表と言える。
素人は草笛の言葉よりも、一般の人を装ったすいかに騙されたのだ。
ミチはいかにも信者とわかる言動で危険を感じたROMも、いかにも普通の草笛ファンを装った
すいかには皆嵌め込まれた。 草笛はその指名をすいかに託したのだ。
草笛を批判する者が現れれば、すいかが現れ一般の人間になりすまし、反論する。
それを草笛は絶賛する。 この構造が一般の人を惑わせ、ついに嵌め込まれたのだ。

草笛は心ある人に批判されても、すいかはいつも第三者的感覚でアンチ草笛を非難している。

こんな馬鹿な話がどこで通用するのか、すいか自体が共犯なのは被害者全員が知っていること。
ただ被害者の人々は、それを書き込みも出来ないでいる。
ここで草笛に文句を言えるのは相当勇気のある人たちだけ、多くの人は何も言えず泣き寝入りしていることをすいかは知っているのか。

すいかよ、草笛が会員と称して会費を集め、投資指南をしていたのを知らなかったとは言わせない。
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そして、この告発の後、「すいか」はネットから姿を消した。

2006-02-26

My Trading Life (28)

この世の中で生きていく上で、金は何よりも大切なものであるはずなのに、人は、金のことになると、愚かで浅ましい選択をすることがある。大きなリスクをかけて、ギャンブルすることを躊躇わない。そして僕自身もその例外ではないのかもしれない。

丸善相場が一段落した2001年のはじめ、清春氏は「草笛」とハンドル名を変えた。もっとも彼のやっていることは、その前後で何一つ変わったわけではないのだから、これからもこの回顧録では彼のことは、清春氏、あるいは草笛こと清春氏と呼ぼうと思う。

東洋エンジ以降の数ヶ月間、草笛こと清春氏が掲示板で推奨する銘柄はどれもこれも、気味が悪いくらい上昇した。

前場の中ごろに、突然、清春氏によって、名前も聞いたことのない銘柄が、推奨銘柄と称して『売り専』の掲示板に書き込まれる。軍国主義風のアナクロな口調での買い煽りの発言が矢継ぎ早に並び、清春氏の取り巻きたちが、清春氏の口調を真似た書き込みでそれに応える。株価はそれを合図にするかのように、もの凄い勢いで上昇を初め、大引けでは数十円高で引ける。

その日の夜の掲示板は祭りのようだ。清春氏とその取り巻きたちとの勝ち誇った有頂天の書き込みで『売り専』は埋め尽くされる。

翌日、ザラ場を見ることが出来ないで夜に「推奨銘柄」を知ったサラリーマン投資家や、半信半疑の目で掲示板を眺めていた者たちや、さらには、チャートを見て急騰を知った投資家たちの買いが入り、さらに株価は上昇していく。『売り専』では、途方もない高値の目標株価が囁かれはじめ、そして、それまで掲示板で書き込んだことのない者たちが「はじめまして」「買いました」などのタイトルで掲示板で書き込みを始める。

途中で大きく調整の場面があると、今度は、清春氏たちを揶揄する人たちの書き込みが掲示板に雨後の竹の子のごとく並び、それに対して清春氏の取り巻きたちが反論を加え、やがて掲示板は戦場のようになっていく。そして、株式投資とは「売り方と買い方」「零細個人投資家と悪徳機関投資家」との戦いであるかのような情報操作がなされていく。

戦場となってしまった掲示板で、清春氏擁護の発言をしてしまったものは、「買い方」としての仲間意識を持ってしまう。そして、高値で売り抜けることに「心理的な疚しさ」を感じてしまう。高値で冷静に売り抜けるのは、本尊だけであり、彼はまた、次の銘柄の買い煽りを始める。最後に飛び込んできた者たちは、高値で掴まされ逃げることも出来ずに、やがて姿を消していく、掲示板から、そしておそらくは株式市場からも。

掲示板の書き込みから伺われるのはそうしたことである。

ただ、背後にあったのはそれだけではなかったようだ。

清春氏を中心に投資グループのような組織が作られつつあり、幹部と呼ばれる清春氏の側近たちがいた。そしてのちに明らかになるのだが、会費を払って情報を先にもらっている「会員」もいた。掲示板での書き込みだけではなく、電話やメールでのやりとりも活発になっていたようだった。

買い煽りのさなかに、突然、浜崎あゆみや倉木麻衣のヒット曲の歌詞が、フルコーラス掲載されたりすることがあった。あらかじめテキストファイルで作ってあったものをコピー&ペーストで貼り付けているのだろうが、あれは、会員たちに向けた「売れ」の合図だったんじゃないのかと僕は疑っている。

チャートを見ると、さらに別のことが分かる。株価は推奨の日に突然吹き上げるのだが、推奨の数日前からぼちぼち買いが入り始め、じりじりと上昇を続けていることが分かる。まず、本尊は少しずつ仕込みを初め、そして、幹部や会員に買わせ、そうした買いが、だんだん大きくなって、そろそろ吹き上げるぞというタイミングに合わせて、掲示板で買い煽りを始め、相場を作っていったのだ。



そして、うまく利用すれば、清春氏の推奨銘柄は面白いほどよく儲かった。

その前年、ストイックに投資技術を磨いていったことが、まるでばかばかしく思えるくらいに簡単に資産が増えていった。ロスカットもいらないし、チャート分析も必要ない。清春氏の買い煽りが始まった翌日くらいに買いを入れ、煽りが激しくなり、ザラ場中に突然、倉木麻衣の歌詞が掲載される頃に、ばっさり売り切ってしまう。それだけで数日で2割3割の儲けは軽かった。

いい加減なタイミングで提灯を付けていた僕でも、この時期、清春氏の推奨銘柄で数百万儲けたのだから、清春氏本人、そして、清春氏の取り巻きの幹部たちは、数倍に資金を膨らませたことだろう。

そして、その潤沢な資金は、ある大きな相場でぶつけられることになる。



草笛こと清春氏が石井鉄工所の買い煽りを始めた瞬間は、他の銘柄の時とまったく違っていた。前場の途中で突然始まる狂ったような買い煽りではなく、深夜の長い書き込みの中で、突然、前後の文脈と関係なく、その名前が出てきたのである。

掲示板巡回ソフトで当時の過去ログはある程度保存してあるのだが、草笛こと清春氏が最初に石井鉄工所の名前を掲示板に書き込んだのは05月18日、0:13と深夜のタイムスタンプの付いた「信じる者だけが救われる」という長文の書き込みの中だということが分かる。

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【タイトル】信じる者だけが救われる
【 日時 】01/05/18 0:13
【 発言者 】草笛

(前略)

僕は今後も銘柄の推奨中心に投稿いたします。当たっても何の得もなく、外れれば雨あら
れの非難を浴びる精神苦行の道でございますが、自分の心を磨き、世の中の縮小貧乏に泣
く人々に一縷の希望の光をお届けできれば、それにすぐる幸せはございません。何も求め
ない、ただひたすらに与えつづけることこそ究極の愛、真心、悟りの世界でございます。

6362石井鉄工所193円。この株は有望です。絶好の釣り場になるでしょう。
釣り糸を垂らすのは、あなたです。釣り竿は安物でも、十分釣れることで
しょう。あなたのクーラーボックスが大漁ではちきれんばかりになるシーンが目に浮かび
ます。心に曇りのない者、信じる美しい心を持つ者だけが救われるのでございます。
千手観音様のように千の手で幸せを思いのまま、掴み取りしてくださいませ。

草笛はたとえ荒野の雑草の中に憤死して、自らの生を人知れず終わるとも
心はいつも縮小貧乏に泣く人とともにあります
あなたは決して一人ぼっちではない。売り専1万人の仲間があなたを見守っています
僕がもしもこの世界から消え果てても、聖戦を戦い続ける勇者がきっと再来する信じています

(後略)

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まあ、何とも調子の良い、いかにも詐欺師然とした、あまりにも怪しい口調の書き込みだが、こんな書き込みに乗せられる奴らが居るというのは、当時もまったく理解できなかったが、今読み返しても理解できない。騙されるのが好きな人がいるとしか思えない。半年後、投資家達の大虐殺のようなフィナーレがおとずれる。「信じる者だけが救われる」のではなく、信じた者たちは皆破滅したのだ。そのことを知っているだけに、このあまりに軽い言葉は今読み返すとちょっと寒気がするほどだ。

もっとも、この発言を初めて読んだ時は、「えっ、石井鉄工所って、それ何?」と非常に不思議な感じがした。当時、清春氏は石川製作所という銘柄の買い煽りをやっていたので、銘柄を間違えて書いたんだろうかというのが第一印象だった。清春氏の推奨銘柄は、いつもはとりあえず1,000株買ってみたのだが、このときはすぐには買わなかったと思う。

翌日から、石井鉄工所は、上昇を始めた。ただ、当初は出来高が少なく、「草笛が一人で買っているんじゃないのか」という揶揄する発言も巡回ソフトの中に残っている。


そして、突然、掲示板の空気が変わった。

それまでは、草笛こと清春信者というのは、ネットで自然発生的に集った投資家たちの集団だった。ネットの外の仕手集団や解体屋とのつながりが噂されたことはあったが、少なくともネットでの書き込みに彼らの気配は感じられなかった。ところが、石井鉄工所の相場の時は、明らかに質の違った人たちが突然大量に入り込んできた。まったく見覚えのないハンドルで、口調も清春氏に瓜二つの軍国主義調の書き込みが、これまでの数倍の量で書き込まれ、掲示板の過去ログはもの凄い勢いで消費されていった。もはや、掲示板は議論や話し合いの場ではなくなっていった。

確かなことは分からないが、だいたいは想像がつく。おそらく、清春氏とつながりのある何らかの投資グループが、個人投資家の財布を狙ってネットに飛び込んできたのだ。そうした仕手たちは、煽るだけ煽り、100円、200円の利益を掴んで去っていった。

そして、正気をなくした個人投資家たちが取り残された。

株価は大きく乱高下を始めた。清春氏の取り巻き達とそれを揶揄する者たちの、言葉のやりとりはだんだんエスカレートしていった。

当時の、掲示板の雰囲気を示す書き込みを2つほど載せてみよう。

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【タイトル】俺はとことん行くぜ
【 日時 】01/06/05 13:45

まさかの下げだが、こんなとこでびびっていたら敵の思う壺だ。
俺はどんどん買ってるぜ。 汚い売り屋には絶対に負けないよ。こんなに期待できる株は無い
こんなところで売るくらいなら、この株は最初から買わない。
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【タイトル】同志達よ
【 日時 】01/05/29 19:28

俺は、金儲けのために石井鐵工に関わったのではない。約25年程前に株式市場に関わって以来、常に零細個人投資家は冷や飯を食わされてきた。行政すらも産業界の保護はするが零細個人投資家は相手にしなかった。こんなことで民主主義国家といえるのか、と何度叫んだことか。
石井鐵工は、個人投資家の存在証明と受け止めている。金が儲かったとしてもそれは結果に過ぎない。目的は、個人投資家の解放にある。幸いネットによって、従来一部の権力者しかもてなかった情報をやつらと対等に、しかも時間的誤差もなく入手することが出来るようになった。ネットが、第3の波の革命ツールであるとすれば、石井鐵工はこれまでいいように踏みにじられてきた個人投資家による、既成の体制化でぬくぬくと利権に浸っている豚どもへの挑戦状であり、怒れる庶民の市民革命である。

同志達に告ぐ、俺には勝つ確信がある。共に立ち上がろうじゃないか!!
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まるで、革命前夜である。(^_^;)

あえて、投稿者の名前は外したが、これらの書き込みをしたのは、石井鉄工所の相場で、いわゆる「石井戦士」として戦い、数百万、もしかしたら数千万単位の大損をして、その後やがて清春氏批判に転じた者たちである。

「敵」とはいったい誰のことなんだろう。「汚い売り屋」とはいったい誰のことなんだろう。冷静に考えたら、そんなものはどこにもいないのだ。確かに「汚い売り屋」は敵かもしれないが、「同士達」も実は敵なのである。いや、「汚い売り屋」は株価急騰で踏みあげの買いを入れてくれる心強い味方なのかもしれない。同士達こそ実は、相手を出し抜いて売り逃げることで利益を得ようとしている敵なのだ。

清春氏の最大の問題は、買い煽りということよりも、「戦争の比喩で相場について語ること」にあると思う。株式相場は、買い方と売り方の戦いではないし、個人投資家と機関投資家の戦いでもない。買い方は同士ではない。売り方は敵ではない。個人投資家は、皆、たった一人で、株式市場という大きな戦場で戦い続ける孤独な兵士だ。不十分な知識と貧弱な武器を抱えて、暗闇の中、戦い続ける孤独な少年兵である。

ここまで書いてきて、ふと思ったのだが、株式投資の経験がまだ1年2年の投資家は、もしかしたら上の2つの発言の投稿者の心理状態をまったく理解できないかもしれない。わずか5年前のことである。この5年間で、投資家のメンタリティーは大きく変わったと思う。

あの頃、1年前のITバブルの崩壊はまだ生々しい記憶として残っていたし、当時、株をいじっている者は、1990年のバブル崩壊の生き残りが多かった。かろうじて生き残って来たものの、皆、深い傷を負っていた。「株式市場で自分たちは長い間騙され続けてきた」という被害者意識は、当時の多くの個人投資家が共有していた。自分たちは株式市場や国の証券行政や外国人投資家に騙され、翻弄されたという怨念の気持ちを、多くの投資家が持っていたのだ。

清春氏の書き込みは、そうした人たちにとても心地よく、そして勇ましいものに響いたのである。ネットの力はまだ未知数だった。ネットで個人投資家が結集して、大相場を作る。そんな妄想が多くの投資家には魅力的に響いた。「石井鉄工所の相場で個人投資家のリベンジだ」という主張が受け入れられる土壌はあったのだ。

しかし、ネットにそんな大きな力はなかった。「売り専1万人の仲間」と清春氏の書き込みにあるが、当時、株式関係の掲示板で最もアクティブな掲示板であった『売り専』ですら、一日のアクセス数は1万ほどでしかなかった。しょせんコップの中の嵐でしかなかったことはのちに明らかになる。

さて、最後に、この頃の僕自身の書き込みをひとつ貼ってみましょうか。

このタイムスタンプの05月30日には、僕のHDDには100あまりの発言が残っているが、その中でまともに対話が成立しているのは、僕と奇術師さんのレスのやりとりだけである。それ以外は、血なまぐさい戦争の比喩で、石井鉄工所という相場での戦いについて、上に引用したような狂った妄想の言葉が並んでいる。

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【タイトル】こんばんは
【 日時 】01/05/30 0:23

奇術師さんへ

>ノイズが多いのはしょうがないですね、ははは (^^;

市街戦が繰り広げられる内戦の街のカフェで、時々飛んでくる弾丸やら、聞こえてくる爆
音やらに首をすくめながら、悠然と紅茶をすすって議論しているような気分。まあ、これ
はこれで、面白いですけどね。こうなりゃ、閉店の時間まで粘ってやるぞと、僕は覚悟を
決めました。(笑)

しっかし、相場って、売り方と買い方のバトルじゃないと思うんだけどなぁ...。

結局、大事なのは...

1.リスク管理を慎重に行うこと
2.自分の心理状態をコントロールして、衝動的なトレードを極力控えること
3.自分に相性のいい銘柄を見つけること

ということに尽きると僕は思いますけどね。まあ、いろんな投資のやり方があるのだとは
思いますけど。
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今読み返してみると、なんというか、そろそろ投資スタンスが固まりつつあるなあというのが、自分でも分かって、とても嬉しいし懐かしい。奇術師さんに心酔しつつ、一方で清春氏とは微妙に距離を置きながらも学べるところは学び、1年あまり『売り専』の掲示板を読み、考え、そして時々書き込みをしながら、僕は徐々に投資スキルを身につけていったのだと思う。

しっかしなあ。。。

1日100発言のうち、ほとんど全てが上で引用した「同志達よ」や「俺はとことん行くぜ」のような、何かに取り憑かれたような、熱でうなされたような、戦争や革命のレトリックを使った狂気の言葉たちで、そのなかにぽつんとひとつ、僕のこんな発言が取り残され、もちろんレスもまったく付かない状態で放置されているわけです。そんな掲示板って、想像できますか。(^_^;)

2006-02-21

週刊 SPA!

  • やめられないんです。
    中毒なんですよ。
    いくら儲かっても損することのほうがショックで、すぐに取り返したくなる。
    だから一日が長いんです。
    長くて、本当に辛いんです。
    大損するまでやめられないでしょうね。
    もしやめたとしても、日経平均が上がるのを見て、その分「損した」と、また自分が辛くなるのがわかってますから。
  • 大きな買い物はこの家と、新車のマジェスタ、パソコン 3 台ぐらい。
    お金を使うの好きじゃないし、使い方もよくわからない。
    今は株のことで土日も頭がいっぱい。
    人といても落ち着かないから、外出も近所を散歩する程度。
    今一番の望みは、株をやっていなかった学生時代のような、普通の暮らしがしたい。
  • 就職しないまま実家でパラサイト生活ですし、「株ニート」と批判されても、製造業で伸びてきた国ですから仕方ないでしょう。

2006-02-11

週刊ダイヤモンド

  • プロだったら慎重になり過ぎて失敗する局面でも、自分は素人同然だから強気を押し通せる。
  • 無理に背伸びをせずに、自分にしっくりくる投資法で、腰を据えて取り組むのが王道。

sabra

  • ジェイコム株は誤発注とは気づかなかったんです。
    前評判よりかなり安くなったから買っただけで。
  • (「資産があっても、一度にジェイコム株 34 億円の注文は普通の人は出せない」と聞かれて)そうかもしれません。
    なぜ多額の注文を躊躇なく出せるのか聞かれますが、心理が関係してると思います。
    僕は、大学生から株を始めて、卒業前にはすでに 1 億円以上持ってました。
    そこまで増やせた理由は、学生だったから、としか言えません。
    いつも、株でお金がなくなっても就職すればいいや、という気持ちでしたから。
    今もそうですが(笑)。
    もし、僕に扶養家族がいたら大きな取引はできなかったでしょう。
  • (「お金の感覚が麻痺しているのでは?」と聞かれて)それも違います。
    なくなってもいいと思っていれば、大きなリスクが引き受けられるんです。
    株取引では本当に気持ちが重要です。
    そこを理解せずに、単に、株で儲けた人の本を読んでマネても役に立たない。
    たとえば、損切りでも、取引している資金量や、その金額がおよぼす個人の感情の変化によって判断基準が変わってきます。
    その感情の変化は、儲け本を書いている人とは全然違う。
    結局、自分に合った方法でしか儲けられないんです。
    僕も、IT バブルのときには大損したし、試行錯誤しています。
    努力しないで儲けることはできません。

2006-02-02

週刊文春

  • 日経平均は年初から横ばいでしたが、新興市場がすごく良かった。
    だからこの辺の銘柄(パソコン画面上の新興企業銘柄群を指して)を買っていた。
    まあ、ここ一年、相場が良かったので、悪かったときのことを忘れていたんです。
    前日(一月十七日)朝も大きい損失を出したけど、引けには九千万円ぐらいまで戻していたので、持ち続けずにそこで収めておけばよかった……。
  • 堀江さんは相場に関係ないんじゃないですか?
    相場は自己責任ですから。
    例えば資金のうち八十億円を昨朝(明朝?)に持ち越し、一パーセント下がれば八千万円の損失の世界ですから。