1999-01-08

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 こんな感じで終わりにしたかったのですが、、、。(男性の質問:聞き取れず)2~3のことが挙げられますね。とても重要なことですね。前のトレードの結果を過去のものとして、次のトレードに移る能力、常に前進することを考えなければなりません。毎朝「また新たな一日が始まる、全く新しい一日が!」と思うようになれなければいけません。これはこのビジネスのすばらしいところですよ。毎朝起床した時、新たな緊張感に包まれ「昨日よりも上手くトレードしてやろう!」という気持ちになれるのです。すべての月が「新たなひと月」であり、すべて年が「新たな一年」なのです。
 トレーディングの奥深さに対する姿勢、要するにどのようにして自分の気持ちを燃え上がらせるかが問題なのです。どのように物事を捉えるかという問題なのです。「今週は先週より良い機会が訪れるはずだ!」「去年よりも上手くやってやるぞ!」という気持ちを持てるかどうかの違いなのです。この原則を年初に考え直すこと、ゼロから再スタートする気持ちに帰るのです。「よし、すばらしいパフォーマンスをあげる機会が訪れるぞ!」と考えるのです。繰り返しになりますが、トレード管理を一歩一歩着実に進めていくことが大切です。これは一日一日の繰り返しです。一つ一つのトレードの積み重ねが重要なのです。これが将来的に皆さんのレバレッジの大きさを決めることになるのです。
 (質問:聞き取れず)。テクニカル分析の元祖4人の話に戻ってみましよう。彼らが言っていることは、「理論と現実は全く異なること」だということです。理論は皆さんがモデルを構築する際に非常に重要になります。しかし、そのモデルは完璧なものであるわけではありません。皆さんの中にもエンジニアの方がいるかもしれませんし、彼らについてあまり否定的なコメントをしたいわけでもありませんが、私の経験からすると、エンジニアとしてのバックグラウンドを持つ方達は、マーケットの動きをブラックボックスに収めたがる傾向があります。あちらにいらっしやる方が笑っていますね。エンジニアの方達はマーケットのすべてをブラックボックスに押し込めたいと考えるようです。不完全さや欠陥というものを認めることは難しいことです。
 長期に渡り利益を上げ続けているシステムというものはすべて、マーケットに現われる常軌を逸した動きを捉えるようにできています。長期のトレンド・フォローイング・システムなどはまさにこの典型ですね。市販されているシステムの中でベストのパフォーマンスを上げているものに、「アバレーション」というシステムがあります。このシステムは標準偏差がかなり大きくなったときにマーケットの動きを捉えるものです。異常事態がマ一ケットに常軌を逸した動きが現れることを知らせてくれるのです。
 ですから、皆さんはご自身のトレードの基となるモデルや、マーケットの構造上現れるパターンを知らなければならないのですが、一方でストリート・スマートのセンスを身につけることが大切になります。ワイコフが指摘しているように、「マーケットは我々を振り落とすような動きをするぞ!」「マーケットは通常の動きを再開する前に我々を陥れるような動きを見せるはずだぞ!」というものです。
 ですから、理論と現実は似て否なるものです。ですから、このゲームを我々自身に合うように変えていく必要があるからです。自分が満足できるようにトレードすることはいいんですよ。例えば「コーンのトレードで1セントの利幅をとってやる!」というのでもいいんですよ。大きなトレンドを逃してしまったからといって、誰もあなたをとがめるようなことはしないでしょう?
 私も時々建玉し、「5分間の日よけセール」のようなもの、いわゆる「叩き売り」のようなトレードを探すことがあります。「ちょっと上昇しただけで50ドル儲けたわよ!」といったトレードです。別に構わないですよね。我々の間ではこのようなトレードを冗談めかして「ピザ・パーティー!」と呼んでいます。
 自分が気分よくトレードできる方法であれば、どんな方法であれ、、、。ビジネス・プランをしっかり構築し、それに沿ってトレードするというように、より真剣に感じられる方法をとる人達もいますが、、、。 この違いは結局「自分自身を知る」ということに尽きるのです。何か我々一人一人にとって最も良い方法かということです。私自身について言えば、これまでの経験からトレード1回につき5回のトレードを逃してしまっていると理解しているつもりです。 トレードする機会が現れておいることはわかるのですが、「もう精魂尽き果てたわ」「もうバテバテ!」「紅茶を入れにキッチンに行かなきや」といった理由で、それらのトレードを逃してしまうことが少なからずあります。しかし、それでいいのです。次のトレードに備えれば、それでいいのです。これがこのトレーディングのすばらしいところです。この先毎日でもトレード機会は現れます。自分が過去に逃したことなど振り返っている暇はありません。
 ですからどんな方法にせよ、自分自身に合ってさえいれば、いったんスタートしたのであれば、もう後悔するようなことはやめてください。5分間マーケットに入ってさえいれば、もう気が楽になるはずです。たったそれだけのことです。「トレンドに乗って建玉し、そのトレンドが続く限りポジションを維持し、トレイリング・ストップを設定しろ」というような壮大なトレード・プランが必要なのではありません。何か常に落ち着けないようであれば、それは自分自身にプレッシャーをかけすぎていると考えられます。そんな状態で上手くトレードすることなどできません。毎回トレードするたびに、毎日マーケットの動きを観察し続けてさえいれば、成長することができるということを理解できるでしょう。また、プレッシャーに対して自分が耐えられるレベルも上がっていきます。そして心理、マーケットに対するときの自分自身の心理についてもよく理解できるようになります。レバレッジの大きさ、トレード・サイズ、そしてポジションを維持する忍耐力も同様に成長していくのです。こういうことは年齢を重ね、経験を積むとともに成長していくものなのです。
 最後に一つある言葉を引用して、私の話を締めくくりたいと思います。実はこれが今日話したことの基になっているのですが、、、。紹介するのを忘れてました。これはトレーディングについて私が初めて読んだ本です。現在でも出版されているか定かではありませんが。もちろんこの本は私の父のものです。だいたいこのビジネスは家族の影響で入ってくるケースが多いようですね。初めてこの本を手にしたのは、まだ私が10歳くらいの頃で、何のことかさっぱりわかりませんでした。父は私にチャートを見せ、そこにあるパターンを見つるようにというようなことを話していました。たぶん父は卵を月の周期か何かを使ってトレードしていたと思います。結局父は破産してしまいましたけどね。私は言いたいのは、卵をメイン・サイクルでトレードするということではありません。
 これは「Treasury of Wa11 Street Wisdom」という本で、偉大なテクニカル分析の創始者と呼ばれる人たちの中の4人、センチメントの研究で有名なドリューや、ダウ、レア、ネルソンなどの短い言葉を一人に対して5つ位ずつ引用している「格言集」のようなものです。ですから彼らが残してくれた黄金律とでも言えるでしょう。ここで一つ引用しますが、これをすぐに忘れてしまい、実際のトレードに生かすべき原則を利用することができないと、トレーディングというものをより難しい方法で学ばなければならなくなるでしょう。
 これはサミュエル・ネルソンの言葉です。彼はダウの弟子の一人です。いわく「トレーディングを始めた当初の成功をというものは、大抵人を誤った道へと導いてしまうものであり、人を欺くようなものです。1年目に成功を収めてしまうような人達のほとんどは、2年目、3年目に失敗してしまう結果となるものです。このトレーディングというビジネスにおける奇妙なことは、かなりゆっくりと徐々に利益を出せるようになるということ、また最後まで持ちこたえられるようになるために毎月毎月努力し続けることが必要だということです。そしてある日突然、最もミステリアスな形で、目の前の霧が晴れていくかのようになるのです。最も難しいと思われていたことが、かなりシンプルなことに思えてくるのです。消し去るプロセスを経ながら、このことを学んでいくのです。」
 このビジネスで1年、3年、6年と長い間悪戦苦闘している方途がいます。また、「マーケットの魔術師」「新マーケットの魔術師」を読めば、「利益を上げられるようになるまで6年の歳月を要した」というトレーダーがいることもわかっていただけるでしょう。トレーダーは皆もがき苦しんでいるのです。しかし、ある日突然、苦労し努力し骨の折れる仕事を経験した末、何かが明らかになってくるのです。突然すべて、とても簡単に感じられるようになるのです。信念を貫き、自信を失うことがなければ、いつかそのようなときが訪れるのです。いいですか、いつか必ずその時が来ますよ。ただ、最初の3年間に関して言えば、毎年毎年首尾一貫して利益を上げ続けられるような人はほとんどいません。
 もちろん大変な仕事であり、長い長い道のりであり、捨て去るプロセスを経て学んでいくような大変なことです。自分のミスや、何か自分に合っていて何か合わないのかという、トライアル&エラーのプロセスの中で、この「捨てる」という作業は何度も起こるのです。
 私自身について言えば、長年の経験を通じブル・フラッグ”がトレードのキーであり、答えだったのです。ですから皆さんも自分自身の道を歩み、粘り強く努力し続け、自分を信じ続けることができれば、いつか道は拓けるはずです。同時にトレーディングというのは、この世界で最もすばらしい趣味でもありますので、そのプロセスを楽しんでいただきたいと思います。学ぶことを楽しみ、またこのようなコンファレンスに参加することもできます。このコンファレンスのように、材料はこれだけ揃っています。ソフトや指標や本が揃っているだけではなく、こうして集まった人達がお互いに話し合える場なのです。トレーディングは孤独なビジネスです。ですから「あなたもですか!」「自分だけの問題かと思っていましたよ!」などと、会話を通していろいろなことを知ることができるすばらしい機会です。
 「えっ、あなたもですか!」と聞かれ、「ええ、もちろん私もそういうミスを犯しますよ。しかも数え切れないくらいね」と私が答えると、皆さん驚かれるようですね。苦しみを分かち合うことで、仲間意識を育むこともできます。他のトレーダーと話すたびに、決まって自分の被った大きな損失について話をしますし、馬鹿げたミスもさらけ出してくれます。それで「あ~、私だけが馬鹿げているわけではではないのね」と救われた気持ちになれるのです。
 ですからこの機会を講演者の話を聞き、出展しているブースを見て回るだけでなく、他のトレーダーの方途と話してみてください。他のトレーダーの方達と共通する経験について話してみてください。そうすれば、我々は皆同じ目的地に向かって前進していることがわかると思います。ただ、その道のりが若干異なるだけなのです。そして願わくは、皆同じゴール、要するに自分自身に合ったプログラムを見つけることができれば最高です。自分自身にあったプログラム、マーケットでしっかり機能するプログラムを見つけることができればですね。
 それでは今週末の残りを楽しんでください。そして今夜はご静聴ありがとうございました。
 最後に一つだけ。皆さんの机の上にあるものですが、もし皆さんがインターネットで私のホームページにアクセスしたい方がいらっしやれば、来週一週間無料でアクセスできるようになっています。そこで先程紹介しだブル・フラッグ”など、実際私がどのようにトレードしているか、“アズテック”と呼ばれるルールも見ることができるようになっています。エントリー・ルールをご覧いただけます。私が感じたこと、私が被ったスリッページのひどさなとについても解説しています。もしよろしければ、来週チェックしてみて下さい。それではありがとうございました。

1999-01-07

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 もう一つ興味深いことがあります。テクニカル分析の元祖4人は、チャート・パターン、ウェーブ、値動きパターンのシークエンスについて書いているんですが、彼らは皆“テープ”を観察することの重要性を強調しています。自分自身のトレーディングに生かすために。
 私の知る限り、大口トレーダーの95%はスクリーンの前に座り、常に値動きに注意を払い続けています。これは別にCNBCの画面の下に流れている膨大な数のティッカー・シグナルを観察し続けるといったことではありません。通常とは異なる動き、通常とは異なる“スパイク”、または大量の出来高などがマーケットに現れるか観察し続けるといったことです。
 また値段が「ぱっぱっぱっぱ」と一気に上昇していくような場合、注意を引かれますよね。このように値動きを観察し続けることは、何も悪いことではありません。むしろ、この方法がマーケットのインパルスを測る最も基本的な方法だと言えます。インパルスはトレンドの方向を教えてくれます。インパルスは普通さらなるインパルスにつながることが多いです。いいですか、もしある方向に大きな動きが現れたら、さらに同じ方向に大きく動く可能性が高いのです。確率、高い確率でという意味ですよ。スパイクではなく、インパルスが現れる確率という意味です。そして、このインパルスを真っ先に捉えられるのは、我々人間の目だということです。
 なぜこんなことを言うかというと、特にS&P500のスカルパーやディスクレッショナリー・トレーダーにとって、上手く手仕舞いする方法を学ぶことはとても大切なことだからです。損切りするときにはそれ程大きな問題は起きないと思いますが、利益が乗っているトレードに関してはどうでしょう? その利益をさらに伸ばしたい場合はどうでしょう?ある方向にインパルスが現れ続けた後、小規模の中段もちあいパターンが現れたり、横ばいの動きが続くような場合にはそのトレードを維持しようとするのが普通ですよね? 通常、理想ではありますが、“三段階の上昇”や“三段階のインパルズが現れます。しかし、マーケットがわずかでも横ばいの動きに転じ、その後下落し始めるとしたら、仮にま
だそのポジションに利益が乗っているとしても、横ぱいの動きが現れた時点で手仕舞うべきです。このように、かなりシンプルな方法でトレードすることができるのです。
 それではS&P500をスカルプする最も基本的なモデルに話を戻しましょう。これは実際に我々が使っているモデルですが、5分もあれば説明することができるシンプルなものです。皆さん、自分自身で分析し、実際にトレードすることでこのモデルを信頼できるようになるでしょうが、マーケットでどのようなことが起きているのか、そのコンセプトを理解していただきたいと思います。
 一つ目に、、、。私はS&P500が先物市場に上場されたその日から、フロアートレーダーとして、株式オプションのフロアーやCTAとしても、このマーケットでトレードしてきましたが、トレードを始めた当初、私はトレンド・トレーダー”と見なされていました。当時はそれ程“トレンドが現れませんでしたけど。まだ1995~97年のブル・マーケットもまだ経験していませんでしたしね。タイミングが悪かったみたいですね。
 当時私はティックを使ってトレードすることが多々ありました。ティックが“買われすぎ””売られすぎ”を示したら、逆張りのポジションを取るという方法でトレードしていました。そういう方法で、ある程度トレードしていたのです。また、1時間チャートに現れるサイクルやプレミアム・レベルなどに注目していました。
 テクニカル分析に対する私の研究に戻ります。私よりかなり長くマーケットに携わっている方たちは数多くいるでしょうが、彼らもこれから私が話すことに賛同してくれると思います。私が19年の経験を通して見聞きしたテクニカル指標の中で、最もわかりやすく、明確で、すばやくトレードできるパターンは、小規模でシンプルな“ブル・フラッグ”と“ベア・フラッグ”です。このパターンは皆さんがマーケットで確認できる最もシンプルなパターンであり、同時に最も手間をかけずに最大の利益を期待できるパターンと言えます。これは中段もちあいパターンの一種です。要するに、このパターンはすでにマーケットが以前のレンジから抜け出し、トレンドの方向性を示唆してくれている状態にあり、、、。私はマーケットの天底を見極められるほど天才ではありませんからね、、、。最初に上昇し始めると、その後に現れる調整局面で建玉したいと考えがちですよね? 小さな調整、これが“ブル・フラッグ”となり、その後さらに二度目の上昇局面が現れるのです
 “ブル・フラッグ”や“ベア・フラッグ”、時にはトライアングルや横ばいの動きであれ、1分間チャート、5分間チャート、日足チャート、週足チャートなど、どんな時間枠のチャートにも現れます。皆さんはこのパターンだけに集中することを憶えれば良いのです。オシレーターも出来高も気にする必要はありません。ただ、マーケットが活発に動いてさえすれば、十分な出来高があることだけ確認できればいいのです。なぜなら、もう一つテクニカル分析の元祖4人が言及していることに、「マーケットに動きが見られないとき、出来高の薄い時にトレードしてはいけない」というものがあるからです。
 1~2週間前、S&P500のマーケットでは横ぱいの動きが続いており、ビッド・アスクのスプレッドはかなり開いていました。出来高も限られていました。上昇しては下落、という感じの状態で、スリッページと建玉・仕切りの悪さで損失が膨らみ続けるような状態でした。このような場合、マーケットが活発に動き始めるまで待ち続け、、、。最近の、、、。いつだか忘れてしまいましたが、、、。終値も憶えていませんし、、、。今朝はトレードすることもできませんし、、、。1~2日程前、いったんマーケットが動き始めましたが、そのよう場合その後小規模な“ブル・フラッグ”や“ベア・フラッグ”などの中段もちあいパターンが現れる傾向があります。そこで考えてみてください。中段もちあいパターンが現れたことにより、我々にとっていくつかのことが可能になります。リスクを限定することもできますし、トレンドの方向に沿って建玉することも可能です。マーケットはすでに動き始めているのです。ただ一つ我々に必要なことは、この時点で「次に現れる動きに即反応できる状態」でいることです。マーケットは「これから20分程この水準で横ばいに推移しますよ!」などと教えてはくれません。ですから、ブローカーに電話し、プライスについてあれこれ話していることなどできません。私自身、トレードするときは大抵成り行き注文を使います。成り行きで買い、成り行きで売るということです。マーケットが動いているような時に、すばらしいトレード機会を逃してしまうようなことはできないからです。
 S&P500をトレードしている時、5ポイントほどの小さな動きを見逃してしまったとします。このような場合発生するスリッページの費用や、思い通りに注文が入らなかったりすることを考えてみてください。営業マンであれば、何も困ることはないですよね。ピットでの取引が薄い場合、そのくらいの費用を払うことを覚悟すればいいのです。これまで話してきたことについて少し考えてみたいと思います。
 では、中段もちあいパターンが現れた時点で建玉するというコンセプトは、、、。我々には何がありますかね? ベーシックなチャート・パターン、小規模なパターンですね。規模の大きなチャート・パターンではありませんよ。「おい、S&P500が過去2~3ケ月の高値を更新したぞ! これから上昇し続けるか下落するのか、どっちだ?」などというような類のことではありません。
 10回も失敗し続けて、どうして正気でいられるのでしょう? いられませんよね? いられる訳ないですよ。ですから「今日ここで利益を確保しておく」ということが大切なのです。この「今日ここで利益を確保する」ということに関して、小規模の中段もちあいパターンはとても有効です。
 ここで中段もちあいパターンが上手く機能する確率を高める方法について考えてみましょう。これを実現するために我々がすべきことは、より長い時間枠でマーケットを分析するということだけです。一つ上の時間枠です。なぜだかその理由を考えてみましょう。
 皆さんが一つの時間枠だけでチャート・パターンを観察しているのであれば、、、。S&P500を5分間チャートのみで観察していると仮定しましょう。恐らく皆さんの中のほとんどの方がS&P500を見ていることでしょう。または、いつかはトレードしたいと考えているでしょうから、S&P500を例に考えてみたいと思います。
 S&P500を5分間の時間枠で見ていると、過去に起こったことについて確認することができません。理論的には、1時間チャートを見ていて大幅な上昇が現れた、言いかえると過去2~3日間に数百ポイント上昇したような場合です。より短い時間枠で見る限り、その後に軽い調整局面を迎えたとします。このような場合、その後はマーケットはどんな動きを見せるのでしょうか? 底堅く推移し、モメンタムは強く、より長い時間枠で見てインパルスがとても強いのであれば、恐らく再び高値更新を試す場面が訪れるはずです。要するに、若干下落するだけであり、大幅に下落し続けるような可能性は薄いということです。これは何も「日足チャートで見るとトレンドは上昇しているから、1時間チャートで見て調整局面が訪れたときに買い建てよう」という意味ではありません。この考え方にも欠点がありますから。
 何か言いたいかといいますと、1時間チャートを基に買い建てると仮定した場合、2日間大幅に下落した後のような時は、その後ワイコフ・シークエンスのような「試し→反動→試し」という展開になるでしょうから、大幅な利益は期待しにくいということです。砂糖でもココアで何でもいいですから、皆さんが観察しているマーケットで考えてみてください。2~3日間大帽に下落した後、どんな動きを見せるでしょうか? マーケットは狭いレンジの中で横ばいの動きを続けることでしょう。また、より短い時間枠のチャートに現れた上昇にだまされたくはないですよね。そういうことなのです。フィルターという意味なのです。より長い時間枠をフィルターとして利用するということです。
 これで小規模の中段もちあいパターンについて理解していただけたと思います。より長い時間枠をフィルターとして利用することも説明しましたね。そこで、まず注意するべきことは「試し」です。若干調整が入り、ブル・フラッグが現れ、その後高値を更新し、、、。
S&P500では3~4ポイントの調整ですね、、、。こういう場面では、単純にマーケヅトが高値更新を試すかどうかに注意を傾けるのです。そのトレードがすばらしいものであれば、上昇幅は大きく、スリッページもトレードと同じ方向に広がるはずです。
 そして重要なポイントの締めくくりとして、、、。私が発見した重要なこととは、S&P500のマーケットで、それが5分間の時間枠であれ1時間の時間枠であれ、どのような形をとるにせよ、すべての転換点には逆行(不一致)現象が現れるということです。これは私が日中最も注意していることです。ナスダック株価指数やダウ工業平均株価指数もティックに注意しています。そこで常に起こることは、これらの指数のある一つの指標が高値を更新しているにも関わらず、他の指標がそれとは逆行するという現象です。例えば、ティックがそれまでの高値を更新したと仮定します。その後S&P500が高値を更新したにも関わらず、今度はティックが上昇しないというような場合です。特に異なるグループ、セクターを見比べるような場合や、モメンタムグループとダウエ業株価指数を見比べているような場合は有効です。
 このように逆行現象に注意することで常に転換点を捉えられるわけではありませんが、、、。実際こういった状況は現在進行形で確認できることは少なく、それが起こった後に確認できる方が普通です。それでも新たに発生したトレンドの方向にマーケットが動き続けるとの自信を深めることはできます。
 恐らく2~3日前にS&P500は直近の安値を割り込んでいると思いますが、もし皆さんが10分間や15分間チャートを見ているのであれば、S&P500は安値を更新しているにもかかわらず、ナスダック株価指数は安値を更新していなかったことにお気付きでしょう。かなりややこしいですね。ナスダック株価指数はここ数年マーケットの牽引役でしたしね。ですから転換点を突き止めることだけが大切なのではなく、自分のトレードに対して自信が持てるということが重要なのです。例えばS&P500が1時間チャート上で高値を更新する中、ダウ工業株価指数もナスダック株価指数も同様に高値を更新することを確認できれば、そのトレードに自信が持てます。そうすれば後は電話をとり、注文を出しさえすればいい、と考えることができるのです。
 もっと洗練された方法でトレードする方が魅力的かもしれませんが、、、。トレンドの方向が定まり、それまでレンジ下限に近いところで推移していたにも関わらず、すべてのマーケットで高値更新が確認されれば、次はさらに上昇しレンジ上限を上回ってくるだろうとの期待が持てます。こういう考え方ができるのです。
 このように、逆行vs一致、小規模の中段もちあいパターンに注意すること、インパルスを確認しマーケット自身にトレンドの流れを伝えさせることなど、シンプルなコンセプトが皆さんを成功へと導いてくれるのです。皆さんに必要なのは建玉するための引き金(シグナル)を持つこと、、、。例えば逆指値をマーケットの上に置き、損失を制限するために直近の安値近辺にストップ・ロス・オーダーを設定し、そこで建玉し、そのポジションを上手くコントロールすれば良いのです。このようなシンプルなコンセプトを実践に移すだけで皆さんは常に成功する確率を自分の側に引き寄せることができるのです。トレンドの流れに乗っているという意味で優位に立つことができるのです。ですから、トレード管理は精神的安定をもたらし、我々に自信を持たせてくれ、機械的にトレードできるようにするなど、トレーディングに関するすべての要素を結びつける効果があるのです。

1999-01-06

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 エリオットが指摘していることの二つ目は、トレーディングをする上で最終的に我々が克服しなければならないのは、人間のもろさ、自分の感情だということです。テクニカル分析の元祖4人は、人間の本質的な部分がトレーディングに影響を及ぼすということを指摘しています。徐々に身につけていくような後天的なものか、生まれた時から備わっている先天的なものかわかりませんが、我々には何よりも成功を重んじるという気質があるようです。ですから我々は常に自分の感情をチェックする必要があります。自分の感情に対する最も効果的な予防策は、事前にしっかりとトレード・プランを立てておくことです。これが最も効果的なセーフティー・ネットと言えます。トレード・プラン、売買プログラムなど、マーケットがクローズしている間に次のトレードに備えるために、何かしらの方法を確立しないことには、いずれ問題を抱えることになってしまうでしょう。皆さんがデイトレーダーで1分間チャートを基にスカルピングを行うとしても、事前にトレード・プランを練っておくことの重要性は何ら変りません。仮に私が1分間チャートのシステムを使い、スカルピングを行っているとしましょう。「ショート・スカート」と呼ばれるトレード方法を私自身が行っているとしましょう。そのような場合でも私は実際にトレードする前、マーケットがオープンする前に、そのトレードがどの程度の確率で成功するか予想することができます。例えば、30~40ポイントの大幅な動き、いわゆる「ワイド・レンジ・デー」が現れた場合、急激にレンジが拡大し、ブレイクアウトするような場合には、大抵翌日はその水準でもちあう可能性が高いのです。なぜなら、マーケットは「静」と「動」を繰り返す傾向があるからです。そうすると、先程話した戦略が上手く機能する確率は半減してしまうでしょう。仮に私が1分間チャートを基にスカルピングを行っているとしても、一日という時間枠で見たマーケットの構造を理解してさえいれば、このように確率を自分の側に引き寄せることができるのです。
 先程私は、「常に前進し続けること」の意義を説明しました。過去に起きたことはすべて水に流し、前進することができる能力の重要性について説明しました。だからこそ、大きな損失を回避できるストップ・ロス・オーダーを使うことが大切なのです。皆さんの口座そのものに及ぼす影響のことを問題にしているのではありません。頭の中に常にその記憶が残ってしまうことが問題なのです。一度でもこういった大きな損失を経験してしまうと、精神的に大きなショックを受け、次にトレードする時に恐怖心を抱いてしまい、本来のトレードができなくなってしまうのです。そうなると、もはやトレーディングで生計を立てるということは困難になってしまいます。
 元祖3人(4人?)は三つの基本原則を作りました。第一に「オーバー(過剰に)トレードするな」ということです。このオーバートレードとは、単にトレードする回数で決まるものではありません。 1日に10回トレードすることイコール「オーバートレード」とはならないのです。1日に10回トレードしたいのであれば、それ自体に問題はありません。要するに、オーバートレードとは「レバレッジ」の問題なのです。私は今までプロのトレーダーとして19年の歳月を過ごしてきました。その間に失敗していったトレーダー、フロアー・トレーダー、CTA、その他のトレーダー達の99%はそのレバレッジが原因でした。
 いいですか、5万ドルの口座でS&P 500 を10枚も建玉するようなことが問題なのです。またはアウト・オブ・ザ・マネーのプット・オプションを売ること。皆さんが大きなファンドの運用担当者と仮定して、かなりの量のアウト・オブ・ザ・マネーのプット・オプションを売るとしますね。そこで、そのポジションをクローズしなければならない局面が訪れたとします。そんな場合でも流動性が乏しく、自分のポジションを仕切ることができないのであれば、大きな動きが現れ一気に破産してしまうような状況も考えられます。これが失敗の原因なのです。トレーディングで失敗する第一の原因は、レバレッジの問題なのです。
 皆さんも過去に被った最大の損失を調べることで、このようなリスクを把握することができます。その時のポジションの大きさを単純に枚数換算し、それまでに建玉した中で最も大きいポジションだったか調べてみると良いでしょう。そうすることで自分のトレーディングについてよく理解することが可能になるのです。いいですか、これをしっかりと頭に入れておいて下さいよ。
 私自身トレーディングにおいて堅守していることは、トレードする枚数を1単位として決めていることです。常にX枚数を建てるのです。これだけです。このX枚数を常に建玉するのです。これはコーンでも財務省債権でも同じです。X枚数と事前に決めておくことで、トレーディングをシンプルにすることができます。私はこのX枚数を変えるようなことはしません。そのためトラブルに見舞われることを回避できます。最終的にトレーディングで失敗する原因はレバレッジの問題だということを忘れないでください。1枚の建玉に対して、10ポイント逆に動いてしまったということが問題なのではありません。それで皆さんが破産してしまうようなことはありえません。
 二番目に「ナンピンをするな」ということです。私は10年間これをやり続けていました。でもそこから抜け出すことに成功したのです。これは救いがたい習慣です。こんなことをしなければ、私はこれまでにもっと利益を積み上げることができたでしょう。しかし、「ナンピン」という悪習を改めたことは、ここ6年間で私が最も自慢できることです。いったん建玉したら、そのトレードが上手くいくどうかに関わらず維持することが大切です。そして、そのポジションに利益が乗り始めたら、ポジションと同じ方向にのみスカルピングを試みるのです。しかし、ナンピンするようなことは絶対避けなければなりません。これが第二の点ですが、すでに1900年代の人達に指摘されていることです。
 第三に、私のように話し続け、「他人の意見に耳を傾けるな」ということです。皆さんが自分のデスクに座り、親友や営業マンと電話で話したり、CNBC(経済専門のテレビ番組)を観たとしても、、、。何人かの人達がうなずいていますね、、、。 自分の分析に自信を持つのは難しいですよね。また、自分の方法が間違っていると気付くことも難しいですよね。我々は自分のポジションを正当化するために色々な理由や要因を探し出そうとしますからね。ですから、自分自身の考えでトレードすることを学はなければならないのです。何も自己研鎮という観点からどなたかのセミナー・コースを受講したり、ニュース・レターを購読することが悪いと言っているわけではありません。例えば、建玉するためのシグナルについて学ぶというようなことは全く問題ありません。
 こんなことをするのは私が初めてかもしれませんが、、、。皆さんのテーブルの上に我々が現在行っていることについて書かれたものがありますね。それはインターネットやアンケート調査の類のものですが、、、。実際私がトレードする際に注意しているシグナルが書かれています。また、こんなこと聞いたこともないかもしれませんが、皆さんの最終的な目標ということについて言いますと、「まずひと月程マーケットを観察する。そして最終的には自分で試みる」ということです。自分でトレードし、他人の考えに乗ってトレードしないということが大切なのです。独立したトレーダーとして生きていく術を学ぶ必要があるのです。今週末このコンファレンスで学んだことを自分で組み合わせたり、御自身で開発した売買プログラムなどに少し修正を加えるのです。そして自分自身のプログラムとし、自分だけのビジネスを確立すること、このゲームを行う上で自分が採るゲーム・プランを構築し、ルールを決めるのです。そこで自分の手法に対して満足することが大切なのです。これがこのビジネスで最も大きな成功をもたらしてくれるからです。
 建玉するためのシグナルを見つけ出し、実際にトレードし、上手くいくと、本当に満足できることでしょう。また、仮に資金管理を上手く行ったにもかかわらず、そのトレード方法が上手くいかなったとします。そんな場合でも、その事実を自分自身で確認できたことにより、「よし、この方法を利用するのはやめよう!」という結論に至ることができるのです。そして、毎日どのような結果に終わろうとも、儲けようが損しようが、自分自身に対して「今日はよくやった」と思えるようになるでしょう。これがこのゲームの目的だと言えます。この原則はシステム・トレーディングを行うことと基本的には同じことです。もしシステム・トレーディングを行っているのであれば、ある特定の日に儲けたか損したかということは問題ではないのです。そのシステム、そのルールに沿ってトレードしたかどうかが問題なのです。
 もし「やるべきことはしっかりやった」と言いきれるのであれば、仮にある日のトレードで結果が伴わなくても「やるべきことはすべてやった」という満足感に浸ることができるはずです。これはディスクレッショナリー・トレーダーの場合でも同じことです。

1999-01-05

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 我々が利用したり、市販のプログラムソフトに組み込まれている指標の90%は価格を基に作成されています。これは、それらの指標が常に一歩遅れることを意味します。標準偏差やADXなどのボラティリティー指標、オシレーターやモメンタム・オシレーターなどの指標はすべて一日遅れ、または1バー遅れで初めて利用できるものです。ですから、全体的なマーケットの構造における現在の値位置というものに注意する必要があります。そこでテクニカル分析の出番となるのです。
 テクニカル分析は「どんなトレード機会が現れたのか?」ということを我々に知らせてくれます。我々には建玉するためのシグナルが必要です。例えば、トレンドラインを抜けた時に建玉するとか、パイ・ストップ、ボラティリティー・ブレークアウト・システム、高値引けした時に買い建てる、または安値更新を試した時などに建玉するというように。建玉するための機会が訪れたら、その後は実際に建玉する条件が現れるかどうかに集中すれば良いのです。
 トレーディングを構成する第三の要素とは、もちろんトレード管理です。先程紹介したテクニカル分析の元祖4人は皆、ストップ・オーダーを利用することの重要性を強調しています。その理由はもしかすると、皆さんが考えているようなものではないかもしれません。彼らには人間の本質を見通す能力が備わっていました。もちろん私自身もストップ・オーダーを使います。トレード管理の面から、また自分自身を守るため、自信を失わないため、そして最後に最も重要なことですが、トレードする勇気を得るためにストップ・オーダーを使うのです。なぜなら、先程話したように、テクニカル指標のシグナルというものは、時に皆さんを瀬戸際まで追い込んでしまう可能性を残しているからです。しかし、「よし、リスクは3ポイントに設定してS&P 500 を買い建てよう!」と事前にプランを立てておけば、最悪の結果が訪れて失う金額さえも事前に把握しておくことができるのです。また、トレードに対する耐久性も高まります。トレード管理がどれだけ重要かということを理解していただくのは、もう一つの理由があります。もし皆さんが建玉し、その玉を上手く管理できれば、要するにストップ・オーダーを入れておくということですが、このストップ・オーダーをトントンを確保するところまで引き上げたり(買い玉に対して)、またワイコフが薦めているように手数料をカバーできるところまで引き上げることで、トレンドが変わってしまうという恐怖から、すぐに利益確定に動いてしまうということを避けることが可能になるのです。これはとても大切なコンセプトです。なぜなら、私は「普通のトレーダーはすばらしいトレード機会が訪れた時に、すぐに利益を確定してしまうという最も犯してはいけないミスを犯してしまうものだ」と考えているからです。マーケットが強気のときに売り、弱気に傾いた時に買ってみてもいいでしょう。 10回に1回ぐらいは上手くいくかもしれません。もし週足と日足チャート上にトレード機会が現れ、さらにトレード管理についてしっかりと理解していれば、そのことを理解していない場合に比べ、より長くそのトレードを維持することができます。こういった意味でも、トレード管理は我々の心理的側面をコントロールすることに効果を発揮するのです。
 テクニカル分析の元祖4人は皆、1900年代前半に本を著しています。それらの本のどこかで彼らが言及している「トレード心理の5基本原則」について話したいと思います。第一に、彼らは皆、マーケットに身も心も捧げていたということを理解していただきたいのです。チャートを勉強し、歴史を学び、絶えず執筆活動を行い、アドバイザリー・サービスに従事し、実際にトレードし、、、。四人のうち二人は重い病気を患っており、チャートを勉強することくらいしかできなかったのですが、、、。何を言おうとしているかというと、彼らにとってマーケットは人生そのものだったということです。彼らは真剣にマーケットについて研究していたのです。常にチャートを見て、マーケットの動きを研究しました。そして、マーケットの本質を先程紹介したようなシンプルなコンセプトにまとめあげることに成功したのです。アクション→リアクション、トレンドの定義などですね。ただ、ここで理解していただきたのは、このようなコンセプトはそれ以前に一度も紹介されたことがなかったのです。この点、一般投資家の方途が実際にトレードする勇気を与えられたのも当然と言えるかもしれません。それ以前には彼らも、こういったコンセプトを公表してはいませんので。必然的に一般投資家の方達も株を売買しようという気になったのでしょう。まさに新たな現象といってもいいくらいでした。
 このように彼らは皆、マーケットの研究に没頭していました。そして、その研究はすべて「手書き」で行われたのです。チャートを手書きし、ノートをつけていました。私は個人的には、こういった努力が成否を決める最も大きな要因になると思っています。時間をかけて研究を行い、ノートをつけ、毎日数値を書きとめたり、バー・チャートを手書きしているような人達は、このビジネスで生き残れる人達だと言えます。
 ここで一つ面白い話を紹介しましょう。数年前、シカゴでビジネス・パートナーであるさくらデルシャー証券を訪れた時の話です。そこで以前CME(シカゴ・マーカンタイル・エクスチェンジ)の会長を務めていたレオ・メラメッド氏に会う機会がありました。彼はかなりの期間に渡りマーケットに間わってきた人です。彼のオフィスに一歩足を踏み入れると、50万ドルもするような芸術作品に囲まれ、さくらの木で作ったパネル、ゴージャスなデスクなどが並んでいました。そのデスクにはボタン一つで、5センチほどの隙間から自動的にスクリーンが現れてくるような仕掛けがされていました。そこにあるものはすべてボタン一つで操作できるようなものばかりでした。そんな彼のデスクの上に何かあったかわかりますか? 何かが散乱していたというわけではありませんよ。そこにはチャート、鉛筆、グラフ用紙、それに小さな定規があったのです。彼は「ちょっと見てごらんよ! これが何だかわかるかい? これはヘッド&ショルダーだよ! ヘッド&ショルダー!」なんていう感じでした。ただ彼はいつも売り方に回るというバイアスがかかっていたようでしたけど。私はどうするべきか、それから5分程考え続けましたね。結局、私はそのトレードで失敗することを回避できましたねどね。しかし、同行した私の友人は「見ろよ! あのレオ・メラメッドが手書きでチャートをつけているよ!」と興奮気味に私の袖口を引っ張ってましたけどね。その時、メラメッドは1時間足のチャートを付けていました。
 マーティン・シュワルツというトレーダーがいます。彼はここフロリダに住んでいます。我々の所から3~4時間程南に行ったところです。彼も1時間のバー・チャートを手書きで付けています。手書きでチャートを付けているのです。これまでティックやプレミアム・レベルをつけている人達も見てきました。こういうことは場勘を養う上でとても大事なことであり、マーケットに対する自信を深めることにもつながります。
 そしてテクニカル分析の元祖4人は皆、かなりの時間をこのような紙と鉛筆だけを使った研究に費やしたのです。私はこういう基本的なことが今日では少し過小評価されているように感じています。彼らの文章の行間に隠れていることを読みとろうとすれば、こういう基本的なことを繰り返し言及していることが理解できるでしょう。
 彼らが理論を構築し、マーケットの構造的特徴を見抜いていたことを理解しても、理論と現実の間には違いがあるものです。いいですか、ワイコフあるパターンが起こるシークエンス・モデルを開発したにもかかわらず、「マーケットというのは毎回違う動きをするものなんだよ」と言うに違いありません。
 エリオットがどんな事を書き残しているかご存知ですか? エリオットが書いたことは、、、。実際には彼が書いたわけではなく、他の人が書き残したのですが、、、。彼はその著書で、自分の構築した理論を実践に移すのに3年もかかったと告白しています。彼はあの「エリオット波動理論」を構築した人ですが、その彼でさえ理論を実践に生かせるようになるまで3年の月日を要したんですよ。我々ならどの位の月日が必要になるのでしょうか?
 理論と現実は全く異なる二つのことですが、マーケットの構造、モデルを常に頭に入れておくことは大切なことです。

1999-01-04

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 実際昨日、S&P 500 でこのパターンが見られました。朝方大幅に上昇した後、横ばいの動きが続きました。そこで再び上昇し始めるのではなく、まず大幅に値を崩したのです。そして午後に入ると再び上昇するという展開でした。トレーダーとして、横ばいの動きが長引くような時は、その後に転換する可能性があるということに注意する必要があります。ここまで紹介してきたことが、ショーバッカーの貢献分野です。
 次に挙げるのはワイコフですが、彼はさらに踏み込んだ研究を行いました。彼は、単にアキュミレーション、ディストリビューションのポイントを突き止めるチャート・パターンについて研究するのみでなく、将来のマーケットの動きに結びつく一連の動きについても研究し、発表しています。ワイコフはまた、「セリング・クライマックス」などを定義付けた人でもあります。
 マーケットに「クライマックス・パターン」が現れると、その後自動的にリアクションが見られ、上昇し始めることがあります。そのポイントでは、損失を出したトレーダー達が損切りし始め、その後さらにマーケットは崩れます。そして底割れを試すのです。ここまで「試し」、「アクション⇔リアクション」というコンセプトを紹介してきましたが、先程も言ったとおり、一連の流れとして捉えてみました。
 次にワイコフが行ったことは、各チャート・パターンの微妙な違いに目を向けることでした。ショーバッカーは「これがブル・フラッグで、これが横ばいの動きで、これが三角もちあいだ!」というように、より機械的にマーケットを分析しました。一方、ワイコフは「どうすれば、このパターンが暗示している知ることができるようになるのだろう?」、
 「マーケットが上昇し始める前に、それまで積み上げられた買い玉を振り落とすためにどんな動きを見せるのか研究してみよう!」、「そういう場面で出来高の動きに注意すればマーケットの動きが一時的なものであるか判断できるだろう」、「2日前のS&P 500 の出来高を見てみよう。 1220レベルを割り込んだときの出来高を。そして1218まで下落してきたとき、再び出来高を調べてみよう。全く出来てないじやないか!」ということを研究テーマとしました。直近安値を更新し、試しが入り、「振り落とし」作戦が見られ、さらに出来高が減少すると、下降局面が続くと思われがちですが、現実にはその後マーケットは反転し、上昇し始めるのです。そこで、スプリング、アップ・スラストなどのチャート・パターンを分類し、名前をつけてみようじやないか! フックなどのチャート・パターンをね。そうすれば、チャート・パターンから将来の動きを予測することが可能になるのでは?」。このようにワイコフはチャート・パターンについて一歩踏み込んだ研究を行ったのです。
 時代が若干異なるため、これまで紹介してきた人達と同じグループに属しているとは言えませんが、最後にエリオットを紹介したいと思います。ご存知のように「エリオット波動理論」で有名なあのエリオットです。この理論は、実はもともと「エリオット波動理論」などとは呼ばれていませんでした。エリオットは「波動にもパターンは現れる」というコンセプトを発見したのです。いいですか、チャート・パターンだけではなく、「波動にもパターンは現れ、そのパターンは何度も繰り返し現れる」ということを言ったのです。エリオットは「第3波、いわゆる大きな上昇波が現れた。これから下落局面を迎え、再び高値更新を試すことになるだろう」というコンセプトを世間に広めたのです。
 ドッグ・テール、ハンギング・クラブなどがワイコフ・シークエンスと呼ばれるもので、クライマックス・パターンが現れた後に再び上昇し、高値更新を試すことになるのです。
 エリオットの研究の中で、私自身が最も重要性が高いと考えている法則は、「インパルス(衝撃波)」のコンセプトです。私はこのインパルスをかなり利用しています。インパルスはトレンドの方向に沿って現れます。繰り返しますが、こういったコンセプトはすべて単純で当然のことのように聞こえるでしょう。しかし、自分でマーケットを分析し、実際にトレードしてみれば、「マーケットはどうしてこういった動きをするのだろう?」ということをコンセプト的に捉えようとしている自分に気付くことでしょう。「なぜ大豆相場で受渡通知日初日に振り落としが見られたのだろう? その後一時的にマーケットは上昇することになるのに、なぜ再び安値更新を試す展開になったのだろう?」という考え方をするようになるのです。これが我々のトレーディングを磨いていくことになるのです。もし日足チャートを使っているのであれば、マーケットの基本的な構造を理解しないことには、同じチャート・パターンを5分チャートや30分チャートに適用することはできないのです。
 マーケットには役割とでも言うべきものがあります。それぞれのミッション(使命)があります。私の知る限り、最も優秀なトレーダー達は「今日のマーケットの役割とは何だったのだろう?」という考え方をします。「今日もまた上昇し、高値更新を試す場面が見られたら?」「再び振り落としが見られ、下落したら?」「我々をじらすために横ばいの動きを続けるだろう。プレミアム・レベルがかなり高いことはVICS指標で確認できるからね」というように。このVICS指標はインプライド・ボラティリティーの高さを示す指標です。いいですか、普通トレーダーはマーケットが下落する場面を想定しプット・オプションを買い、逆に高値更新を予想する場面でコール・オプションを買います。しかし大きなレンジの中で推移し続けているとします。結果として、プレミアム・レベルが下落するまでマーケットは横ばいの動きを継続し、トレーダー達を“じらす”のです。
 ですから皆さんは「今現在マーケットにはどのような役割があるのだろう?」「今現在のマーケットのミッションは何だろう?」という考え方を常にしている必要があります。最近のようにマーケットがレンジ内で推移しているような場合、私自身がいつも興味深く感じることは、「マーケットのセンチメントはレンジの上限・下限で最も大きく振れやすい」ということです。新高値や新安値レベルに近づくにつれ、テンションが高まる要素があるのです。そこでトレーダー達は尚早にマーケットに対する見方を変えてしまうのです。マーケットに起きていることを理解しようとする時、テクニカル分析は最後の頼みの綱として我々を救ってくれるのです。
 これで我々は、マーケットの動きを理解する上で必要な基本的要素を学びました。「チャート・パターンの見方」、「マーケットの推移の仕方に注意すること」、「全体的な構造における現在のマーケットの位置」、「トレンドが発生しているかどうか」、「支持レベルの位置は?」、「抵抗レベルの位置は?」、週足チャートを見ているのであれば「週単位で見ると、現在のマーケットの位置は?」、またオシレーターが下降していれば「週足チャート上で第4波動にあたる調整局面に突入した」という考え方をすることも可能になりました。また、「トレーディング・レンジの様々なポイントで、センチメント・インディケーターがどのような動きをするか?」ということもわかりましたので、マーケットに働いている力を理解できるようになりました。こういったことはテクニカル分析におけるの基本的な原則ですが、何も皆さんの成功を約束するようなものではありません。では、何か言いたいかというと、「すべての情報は価格に織り込まれている」ということなのです。バー・チャートやテープなどの生データを分析することに習熟すれば、トレーダーとしても上達したと言えます。

1999-01-03

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 ダウは、まずこの研究について書きました。その次に彼が発表したのは、「マーケットは常にアクション(作用、動き)、リアクション(反作用、反動)という流れを継続する」ということでした。当然のことに聞こえるでしょうね。しかし、特にマーケットが自分のポジションとは逆に動いてしまったような時には、このアクション→リアクションのコンセプトが上手く働いてくれると願ってしまうものなのです。ただ、実際にリアクションが現れないこともあるのですが。しかし、一般的な原則としてマーケットは、波動や反復運動のようにアップ・ダウンを繰り返すのです。
 次にダウが指摘したことは、「マーケットにはトレンドが現れる傾向がある」ということでした。ここで皆さんに紹介したい興味深いコメントがあります。私は長い間フロアー・トレーダーとして働き、その後フロアーを離れてトレードを始めてからすでに約10年が経ちます。私は「マーケット・テクニシャンズ・アソシエイション」のメンバーなのですが、そこのメンバーに「ちょっと、テストを受けてみなよ!」と促されて、テクニカル分析についての知識を証明するためのCMEというテストを受けることになりました。「長年実際にトレードしてるから、テクニカルのことはわかっているわよ」という感じでした。しかし、我々は書籍をあさり始めたり、勉強を始め、どれだけ自分の知識が薄っぺらいものであったかということに気付き始めると、ある疑問にぶつかります。「クラシックなテクニカル分析において、トレンドの定義とは?」という疑問です。
 以前ある人が「確かにマーケットは上昇しているね。でも、どうやっでマーケットが上昇している”ということを定義できるの?」と質問してきたことがあります。移動平均線を使うのですか、それともチャンネルからのブレークアウトを利用するのですか? ダウはクラシックなテクニカル分析の意味において、「上昇トレンドとは高値・安値ともに切り上げている状態」と定義したのです。この両方の条件が満たされなければ、「上昇トレンド」とは見なさないのです。逆に下降トレンドは「高値・安値ともに切り下げている状態」と定義しました。このようにトレンドを定義すると、確率を自分の側に引き寄せることができます。確率的にトレンドは継続する可能性が高いからです。 90%の確率とはいかないかもしれませんが、トレンドが継続する確率というのはかなり高いのです。このトレーディングというゲームでは、可能性を数値化して表すことがすべてであると言えます。 先程紹介した通り、ダウはトレンドの定義付けを行いました。ダウの研究であと二つの重要な発見とは、出来高とプライスの関係についてです。ほとんどの方が一般的に、「トレンドが発展していくときには出来高増を伴い、トレンドが反転するときに出来高は減少する傾向がある」ということをご存知でしょう。ダウの重要な発見のうち残り一つは、「マーケットは、それまでのプロセスを修正する時にラインを形成、すなわち横ばいの動きを見せる」ということです。それはライン(チャンネル?)の動きで定義されます。そして、その動きがその後の基本的なトレード・プランについて教えてくれるのです。マーケットが横ばいに推移する局面は常に訪れます。動きが密な箇所、動きがほとんど見られないような箇所とでも言いましょうか。これが、その後、ポイント&フィギュア・チャートが開発されるきっかけとなったのです。その結果、この「横ばい」の動きを具体的に数値化することが可能になったのです。
 ダウの次に現れたのが、、、。彼ら4人はほぼ同じ時期の人で、トレードしたのも本を書いたのも同じ時期なのですが、、、。ほとんどの方が早くに亡くなりました、、、。これが結論ですかね。あまりいい職業とは言えませんね。
 次に現れたのがショーバッカーという人です。彼には3冊の著作があります。彼も30代前半の若さで亡くなっています。もったいないことです。彼はとても賢明な作家でありましたし、3冊の著作のうち1冊しか再出版されていないのです。ショーバッカーはテクニカル分析において、純粋にその科学的側面のみを集中的に研究したという意味での第一人者でした。要するに、彼はチャート・パターンを客観的に分類する上で類まれな能力を備えていたといえます。ヘッド&ショルダー、トライアングル、フラッグ、また異なる10種類のトライアングルすべての名前を考えた、いわば名付け親です。さらに彼は「ギャップ理論」を明文化することにも尽力しました。
 例えば、ギャップをあけて上昇し、そのギャップを埋めることがなかった場合、そのこと自体がそれ以後の動きを予測する上でとても重要なヒントになるということです。また、トレンドラインを使って支持帯、抵抗帯を定義したのも彼です。これはとても基本的な原則です。この単純な「支持・抵抗」のコンセプトをしっかり理解できれば、それだけでトレーダーとして生計を立てていくことも可能でしょう。スイング・ローやスイング・ハイを把握し、そのレベルでの値動きをしっかり見極めることができれば、それで生計を立てていくだけのことは可能です。ショーバッカーはこの分野において多大な貢献をしました。私がショーバッカーの研究を学んだ結果として得た、チャート・パターンの分類上最も重要な二つの要素について話したいと思います。ただ、これもコンセプト的なものであり、単純過ぎると思われるかもしれません。しかし実際トレードする時に、これらの要素をつなぎ合わせ、ゲームプランを作り上げていく方法を最後に話す予定ですので、そのためにも紹介しておきたいと思います。
 彼が研究の結果至った最もシンプルな結論とは、「チャート・パターンはリバーサル・パターン(天底のパターン)、またはコンティヌエーション・パターン(中段もちあいのパターン)に分類される」ということです。言うまでもなく、コンティヌエーション・パターンとはスモール・フラッグ、ペナント、トライアングルなどであり、リバーサル・パターンはヘッド&ショルダー、ブロードニング・トップなどです。そして、おおざっぱに言うと、コンティヌエーション・パターンは、リバーサル・パターンに比べかなり短期間に現れます。横ばいに推移している時間が長ければ長いほど、次に現れるパターンはリバーサル・パターンである可能性が高いのです。
 マーケットが大幅に上昇した後、調整局面が現れ、横ぱいに推移するとしますね。そうすると、ブル・フラッグ、いわゆる再び上昇する兆しだと考えがちですよね。しかし、そこで横ばいに推移する期間が長引けば長引くほど、それまでのトレンドが反転し、下降局面を迎える可能性が高まるのです。

1999-01-02

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 それでは「テクニカル分析は3つの大原則の上に成り立っている」というところから始めていきたいと思います。テクニカル分析を行うためには、この前提を受け入れなければなりません。一つ目は、「マーケットは情報を織り込む」というメカニズム働いているということです。皆さんがテクニカル分析を学びたいと考えているのであれば、「すべての情報は、それがどのような形にせよ、すでにマーケットに織り込まれており、それがパターンを形成している」という前提を信じる必要があります。なぜなら、常にマーケットには我々よりも大きな利害関係によって動いている力が存在しており、彼らの資金量は我々のそれとは比較にならないほど大きいからです。現物業者の動き、最新の統計、物流情報を得るだけのリサーチを行う十分な能力を備えている人達が存在するのです。彼らはそのような情報をすべて握っています。ですから、我々は第一の原則である「すべての情報はマーケットに織り込まれている」という前提を信じることが必要なのです。これが「織り込み済み機能」と呼ばれるものです。
 二つ目は、「テクニカル分析は大衆心理の研究、群集行動の研究に他ならない」という信念を持つ必要があるということです。パターンは常に繰り返し現れます。この原則を信じることができれば、、、。群集行動にパターンが現れるのと同じ理由で、マーケットにも、常に繰り返し現れるパターンというものが存在します。個人の行動には現れないかもしれませんが、群集の行動には必ずパターンが現れます。ですから、「パターンを発見することは可能だ」と楽観的に考えることができるのです。そのようなパターンは繰り返し現れるからです。必然的に我々はそのパターンを利用し、利益機会につなげることができるのです。
 我々が理解すべき三つ目の原則は、「マーケットは常に横ばい、トレンドのどちらかの状態にある」ということです。とてもシンプルなコンセプトですね。いったんマーケットがトレンドを形成し始めると、そのトレンドはそのまま続く可能性の方が相対的に高いのです。
 これら三つの基本前提の基にテクニカル分析という科学は発展してきました。そして、テクニカル分析は単に「科学」とか「芸術」と割り切れる類のものではありません。
 それでは、もちろん皆さんもご存知でしょうが、テクニカル分析における「元祖4人」ともいえる、チャールズ・ダウ、、、。ダウは作家、ジャーナリストであり、1880年代に自分の研究結果ついて書き始めました。 1901~1903年にかけて社説や論説を書いていましたが、その中に彼の研究の基礎を見つけることができます。「元祖4人」のうち、残り3人はダウの研究を理論や法則として確立していくことに貢献したという見方ができます。その3人とは、ハミルトン、レア、ネルソンの3人です。彼らは皆本を書いています。皆真剣にテクニカル分析について研究した方達です。サミュエル・ネルソンは「ABC’s of Stock Speculation」というすばらしい本を書いています。レア、ハミルトンもすばらしい本を残しています。これらの本はテクニカル分析を学ぶ上で非常にすばらしい教材といえるでしょう。
 繰り返しになりますが、彼らはマーケットのテクニカル分析においてのみ、その名が知られていたわけではありません。実際にトレードしていたのです。チャールズ・ダウはトレーダーでしたし、ショーバッカー、ワイコフ、エリオットらも皆トレーダーでした。ですから、彼らはトレードにおける心理的側面もその研究テーマの中にしっかり取り入れていました。皆さんが彼らの本の行間に書かれていることを読みとろうと努力すれば、私の言っていることが理解していただけると思います。
 ダウは自身の研究について社説に書き始めました。そして、それが後により完成した形の「ダウ理論」として知られるようになるのです。ダウが研究した基本的原則は、現在でも様々な点で不変であると言えます。三つの、、、。彼の研究の基本テーマは「マーケットにはどんな時でも三つの異なる動きが現れる」ということです。三つの動きとは、主要トレンド、二次的トレンド、そしてマイナー・トレンドを表します。要するに、デイリーの動き、ウィークリーの動き、そして年間を通したサイクル的な動きの三つということになります。今日においても、私の知る限り、優秀なトレーダーは皆二つ以上のタイム・フレームを基に分析を行う傾向があります。デイリーのタイム・フレームとともにアワリー(1時間)のタイム・フレームを用いて分析する、ということが大切なのです。または、日足チャートを週足チャートとともに利用することが大切なのです。マーケットの本質的な構造を三次元的に捉えようとするのです。そうすると、長期的視野で見る限り、皆さんのトレーディングに違いが現れてくるのです。異なったタイム・フレームを使って分析することで。

1999-01-01

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ

本日はお招き頂きましてありがとうございます。冬にフロリダを訪れることほどすばらしいことはありませんね。聞くところによると、北部では2フィートも積雪があったそうです。皆さんの中にもフロリダまで逃れてきた方がいることでしょう。
 今夜私が話したいと考えていることは、、、まず、テクニカル分析について10分程短いプレゼンテーションを行いたいと考えています。通常、トレーダーがこのようなコンファレンスに参加する時、仮にトレード経験が全くない方でも結構ですが、常に他人とは異なるシステム、アイデア、何か革新的なこと、またテクニカル分析における元祖とも呼ぶべき4人の人達が使った手法についてリサーチしようとします。いつも斬新なアイデアを探しているだけでなく、常に自分のプログラムや売買モデルを改善するための方法を探り出そうとしているのです。ちょっとしたツールやアイデアでも、常に最新のものを取り入れ、モチベーションを高め、イノベーションを達成することができると考えるからです。
 そこで今夜私が話したいことは、まず「テクニカル分析の基本原則とは何か?」ということ、またそのテクニカル分析における元祖とも呼ぶべき4人の発見について、そして彼らのすばらしい貢献について話していきたいと考えています。このようなこと自体、いくつかの点で重要です。彼らは1900年代初頭に研究を行っていたのですが、その時代には大きな変化が起きており、とても興味深いことが起こっていた時代でもあります。もちろん、その時代にはコンピューターもまだ使われていませんし、今日行われているような類のリサーチなども行われていませんでした。ですから彼らが発見したことは、時代の変化とともに変わってしまうようなことではありませんし、今日のマーケットでも十分適用できるものです。そのような発見は最も永続性に優れ、ロバストで基本的なものです。
 私がフロアー・トレーダーを始めたのはもう19年程前のことですが、先程話したようなことを理解し、物事をシンプルに捉えることの重要性理解できるようになったのは、7年程前のことです。彼らの発見はすべてマーケットの基本的構造を簡素化したものであるため、現在でも我々がその恩恵にあずかることは可能です。ですから、まずテクニカル分析の発見についての歴史を振り返り、その後に彼ら4人のリサーチの中で見落とされていることについて紹介していきたいと思います。
 彼らは偉大なジャーナリスト、作家などとして生計を立てていました。彼らのリサーチの半分はマーケットにおけるテクニカル要因についてでしたが、彼らの書いた文章の行間に隠されたものを読み取ろうと努め、時間をかけて理解しようと試みれば、かなりの部分がトレーディングにおける心理、メンタルな面に割かれていることがわかるでしょう。また、活発にトレードされている方であれば、売買ルールを決め、ゲームプランをしっかり立てておくこと自体は、トレードというゲームの中で10%程度に過ぎないということを実感していることでしょう。
 実際にゲームプランを実行し、メンタル面で常にマーケットの次の動きに備えていることが残りの90%を占めると言えます。そうすれば、自ずと単純な結論が導かれることになります。損切りを余儀なくされたり、または上手く建玉できたとしても、、、。マーケットには常軌を逸した動きが現れることが多々あります。ですから、私は皆さんが成功するか失敗するかは、常に前を向き前進し続けることはできるかどうかにかかっていると考えています。直前に仕切ったトレードをすでに過去のものと見なし、常に次のトレードに神経を集中しておく必要があります。これは先程紹介したテクニカル分析における「元祖4人」の人達も指摘していることです。後ほどこのことについても考えていく予定です。そして 最後にトレーディングに必要なこれらの要素をすべてつなぎ合わせていくつもりでいます。
 3時間も話し続けてしまわないように、時計をはずしてここに置いておいた方が良さそうですね。最後に総括を行いたいと考えています。シンプルでどなたでも簡単に利用できるプログラムを紹介したいと思っています。それはS&P 500 をスカルピング、デイトレーディングするためにプログラムです。私自身のプログラム、また私が利用しているアプリケーション・ソフトのプログラムなど、3~4つの基本法則にまとめますが、それらが結局は同じことを根拠にしている事実を確認していきたいと思います。
 現在我々の手に入るアプリケーション・ソフトに組み込まれているツールの数々に圧倒される方もいらっしやるでしよう。しかし、必要なことは「なぜマーケットがこのように動くのか?」ということを考えることが重要であり、単にマーケットに現れるパターンを観察するだけではなく、そのパターンの裏に隠されているコンセプトを理解する必要があるのです。