2009-01-30

家電量販店のポイントはどうなる? 通知なく変換率を変えることも

家電量販店のポイントはどうなる? 通知なく変換率を変えることも (1/2) - ITmedia News

虚偽の業績を有価証券報告書に記載した疑いがあるとして、監理銘柄に指定された「ビックカメラ」。ほとんどの家電量販店ではポイント制を行っているが、もし万が一の場合……ためたポイントはどうなるのだろうか?
2009年01月27日 08時16分 更新

 東証1部上場の家電量販店大手「ビックカメラ」が、虚偽の業績を有価証券報告書に記載した疑いがあると証券取引等監視委員会から指摘され、監理銘柄に指定された問題の余波が広がっている。「監理ポスト入り」を経営悪化と受け取った利用客たちが「これまでためたカードポイントはどうなる?」とネット掲示板などに不安を書き込む騒ぎになっているのだ。同社は経営もポイントも「心配ない」とするが、ほとんどの家電量販店がポイント制による顧客の囲い込みを行っている。万が一の場合、ためたポイントはどうなるのか?

通知なく変換率変更も可

 監理ポスト入りしたビックカメラ株は23日、値幅制限いっぱいとなる前日終値比3000円のストップ安となった。同社が昨年6月に虚偽の業績をもとに公募増資を実施して東証1部に上場したことや、同時期に東京国税局から約3億円の所得隠しを指摘されていることなどが嫌気されたとみられる。

 一方、利用者の間では、企業の上場廃止などの際に登場する「監理ポスト」という言葉が飛び出したことから噂が噂を呼び、とくにポイントの行方を危ぶむ書き込みがネット上にあふれている。

 同社は「経営には何の問題もない。ポイントも発行残高に応じて十分な引当金を積んでいる」と不安説を一蹴する。引当金とは、企業が特定の支出や損失に備えるための準備金だが、ここで思い出すのが10年以上前のある出来事。ネット上で某量販店倒産の噂が流れ、利用客が店舗に殺到した、ポイントの“取り付け騒ぎ”だ。

 現在は当時よりはるかにポイントの利用が浸透している。万が一、取り付けのようなことが起きればどうなるのか? 家電量販各社に対応状況を聞いてみた。

 業界最大手のヤマダ電機は「コメントできない」。同2位のエディオンは「引当金として99億8300万円を準備している」。3位のヨドバシカメラは「引当金は相当額準備しており、まったく心配ない」。4位のコジマは「34億2900万円の引当金を用意している」。6位のベスト電器は「防御策として引当金18億3800万円を積み立てている」。7位のケーズデンキは「ポイント制は導入していない」――。

 ポイント制に詳しいクレジット評論家の岩田昭男氏は「業界では、発行ポイントの未使用分数%を引当金として準備するのが慣例。その割合は各社それぞれ違う」と語り、各社のコメントもこれに合致する。だが、数千億円から1兆円超に達する各社の売上額から考えると、引当金の額はまさにすずめの涙ほどだ。「けれど、引当金以外に補償と呼べるものは何もないのが現状です」と岩田氏は言う。

 カードの約款にも、補償についての条文を設けている企業はほとんどない。さらに、「事前の通知なく、企業側の都合でポイントの変換率を変えることができるようになっている。これも大きな問題」(同)だ。

 消費者にとって、ポイントは現金と同じ。それがなぜ、こんなにもいい加減な扱いを受けているのか? 民法に詳しい学習院大法学部の野村豊弘教授は「ポイントに関する消費者救済の法律がまったくないためです」と指摘する。

yd_big.jpg ポイントとは「もらうもの」ではなくて「預けているもの」という認識が必要だ 家電量販店のポイントはどうなる? 通知なく変換率を変えることも (2/2) - ITmedia News

 「現行のままだと、企業が破たんすると、使い残しのポイントは他の債権と同じように扱われる。その場合、不動産に担保をつけている金融機関などのほうが優先されるため、利用者に(ポイント分の現金が)返ってくることは、まずないでしょう」(野村教授)

 同様の問題は、JR東日本の「Suica」や「Edy」などの電子マネーも抱えており、金融庁は昨年から電子マネーに関する消費者保護のための法整備の議論を本格化。量販店各社のポイントについても、同時期の法制化を目指している。

 諮問会議のメンバーである慶応大経済学部の吉野直行教授は「法制化されれば、企業は会社の運転資金とは別に消費者への補償金を用意しなければならなくなる。その場合、残存ポイントの50%が消費者の還元分として確保されるようにする方向で議論を進めている」と説明する。法案はほぼまとまっており、「あとは国会の情勢次第」(吉野教授)という段階だ。

 前出の岩田氏は「ポイントには1-2年の交換期限もある。結局は、むやみにためこまないことです」とアドバイスしている。

ジョージ・ソロス

【相場師列伝】 イングランド銀行をつぶした男「ジョージ・ソロス」の投資哲学:株/FX・投資と経済がよくわかるMONEYzine
【相場師列伝】 イングランド銀行をつぶした男「ジョージ・ソロス」の投資哲学:株/FX・投資と経済がよくわかるMONEYzine
今回取り上げるのは、ジョージ・ソロスです。ヘッジファンを率いてデリバティブを駆使し、空前の利益を毎年のようにたたき出した相場師です。彼の数あるエピソードの中でも有名なのはやはり「ポンド売りでイングランド銀行を破産させた」というものでしょう―。(バックナンバーはこちら

一貫した思想を持つジョージ・ソロス

 今回も引き続き歴史上の偉大な相場師を振り返るシリーズで、ジョージ・ソロスを取り上げます。まだ現役なので歴史上と言ってしまうには問題があるかもしれませんが、その輝かしい実績は歴史に残るのは間違いないところでしょう。僕は個人的には相場にかかわる人の中で最も好きな人物です。

 今年の金融危機においても、最近米議会の公聴会で証言をしました。以下に少し引用します。

 同氏は「人為的規制で市場の流動性を低下させるべきではない」と強調。緊急首脳会合(金融サミット)などで浮上する市場規制強化の行き過ぎに懸念を表明した。 ( 引用ここまで、全文はこちら [日経新聞2008年11月13日] )

「人為的規制で市場の流動性を低下させるべきではない」という信念はソロスの一貫した思想です。ソロスのもっとも有名な取引である、イングランド銀行にケンカを売ってポンド下落を勝ち取ったエピソードもまさにこの信念を体現したものでした。

 ソロスは1930年にハンガリーで生まれました。第二次世界大戦(1939-45)では9歳から15歳だったことになるので少年時代は決して明るいものではなかったはずです。ハンガリーは枢軸国側で参戦したため、戦争末期の1945年にはソ連の侵攻で母国が戦場になった上、政府が転覆して共産主義政権(事実上ソ連の傀儡政権)が成立する動乱がありました。

 さらに、戦争直後の1945~46年にかけて、ハンガリーはすさまじいインフレに襲われ、物価はなんと「1垓倍」以上になりました。1垓は10の20乗です。別の書き方をすれば、1垓は10000京、1京は10000兆、1兆は10000億です。

 こういう状況では紙幣や銀行預金は物凄い勢いで価値がなくなるので、持っていても意味がありません。ソロスの少年時代にこういう現象を経験したということは、経済や相場に対する考え方に大きな影響を与えたのは想像にかたくないところです。

 余談ですが、このハンガリーのインフレはつい最近まで人類史上最も大きなインフレでしたが、ここ1~2年のジンバブエではそれに匹敵するインフレが起きています。この原稿を書いている時点ではまだだと思いますが、ジンバブエのインフレはまだ収まる気配がないのでハンガリーを超えるのは確実な情勢です。

 さて、ソロスは共産主義を嫌って1947年にハンガリーを脱出してイギリスに逃れ、大学で経済学の勉強をしたのち相場の世界に入ります。1956年には拠点をウォール街に移し、成功を重ねていくことになります。

 今回紹介するエピソードは1992年のいわゆるポンド危機です。

通貨・金利・景気の基本的な関係

 ポンド危機のエピソードをお話しする前に、その前提として通貨・金利・景気の基本的な関係についての理解が必要なのでそれを簡単に説明しておきます。

原則1 金利が高い通貨は強く、安い通貨は弱い

 これは非常に単純です。高金利の通貨は、低金利の通貨の国から見ると利回りがよいので投資を呼ぶことができ、その結果高金利通貨への買い圧力によって通貨自体も高くなります。日本でも豪ドルやニュージーランドドル建ての金融商品の案内はよく目にしますね。なので、政府は自国の通貨が安くなりすぎると利上げで短期的に対抗措置をとります。

原則2 為替が固定相場制なら金利も固定

 たとえば、もしドル/円相場が固定されていて、日本の銀行に預けると金利が1%、アメリカの銀行だと2%だとします。このときは、手持ちの円資産を全部ドルに換えるほうが絶対に有利なのは分かりやすいと思います。固定相場制なら為替レートの変動による損を心配する必要がないからです。さらに、ドル建ての借金を抱えている人は、金利の安い円で借りてそれでドルを買って返済するのがよいこともわかります。

 問題は、このような状況下ではドル買い・円売りの注文ばかりでこの取引に応じる人がおらず、為替取引が成立しないことです。なので、貿易や投資活動を円滑にするには、為替を固定するなら金利も同一水準にしなければなりません。

 変動率を一定以内に規制するような、固定相場制と変動相場制の中間のような場合もありますが、それでも金利の高い通貨に過剰に買いが集中するという傾向は変わりません。相場を固定するなら金利を同一にする圧力が働きます。

原則3 金利を低くすると景気が良くなる

 金利が低ければ、銀行に預金したり国債を買ったりといった安全な運用の魅力が薄れるので、株式のようなリスクの高い投資の意欲が高まります。また、金利が低ければ借金がしやすくなるので企業も設備投資がやりやすくなり、景気が良くなります。金利を高くすれば、まったく逆の理由で景気が悪くなります。

原則4 金利を低くしすぎるとバブルを誘発する

 金利を低くすると投資が活発になりますが、それは株式や不動産への過剰な投資、すなわちバブルと表裏一体です。ひとたびバブルが破裂すると影響は大きいので、政府や中央銀行はそれは避けるような水準に金利を誘導しようとします。なので、バブルの兆候が見られる場合は景気減速を覚悟してでも早めに金利を上げようとします。

ソロスが目を付けたイギリス病

 さてここからが本題です。

 1989年にベルリンの壁が崩壊し、翌1990年に東西ドイツは統一を果たします。すると、経済的に立ち遅れていた旧東ドイツ地域への支援のためドイツの政府支出は増大し、ドイツにインフレの兆候が見えてきます。そのためドイツ政府は利上げをしてこれに対応しました。(上記の原則4です)

 一方、当時のヨーロッパにはERM(欧州為替相場メカニズム)という機構があり、ヨーロッパ各国間の為替レートの変動率を規制していました。当時はユーロ導入前なので、各国は別々の通貨を持っていました。ドイツはマルク、フランスはフラン、イギリスはポンドです。

 変動率の規制だけなので固定相場制ほどではないにしても、金利を一致させようとする力が(上記の原則2によって)働きます。

 このころのイギリスは不況で、経済は低迷していました。いわゆるイギリス病の末期(結果的にはソロスがそれに終止符を打つのですが)です。

 1992年、ここにソロスは目を付けます。

金融の信用収縮の悪影響

週末の定点観測 : 全体感②へのコメント
「毎朝10万円借りて朝市で仕入れをして10万円の野菜を販売していた八百屋が、今日から8万しか借りられなくなると、8万円の売り上げに減る」

http://www.doblog.com/weblog/myblog/17202/2622325#2622325へのコメント
> 旧来からの古典的経済手法に近隣窮乏化政策というのがあるそうです。ロシアは通貨の切り下げを行っていますが、もしロシア当局の予定通り順調に進めば中国より早く景気回復する可能性があるようにも感じます。日本でもダルマ蔵相の金融政策もあり、世界的にWTO体制であることを思えばこのような古典的手法に案外無防備ではと感じ、ひょっとすると大きな影響もなんて妄想してます。
とのコメントに対して
> はい、可能性ありますね。
> そしてロシアい金が戻りだせば、なおさら・・
とのことでした。

2009-01-24

アメリカよ・新ニッポン論:第1部・同盟と自立

アメリカよ・新ニッポン論:第1部・同盟と自立/1(その1) - 毎日jp(毎日新聞)

 ◆三菱UFJのモルガン出資決断

 ◇米政府、異例の謝意 経済安保で連携

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(三菱UFJ)から米金融大手モルガン・スタンレーへの約90億ドル(当時約9000億円)出資。「100年に1度」の金融危機で崩壊寸前の市場を支えた昨年10月13日の巨額資本提携の陰には、日米両政府の緊密な関与があった。ビジネスの論理を超えて同盟の経済安全保障が発動された緊迫の舞台裏を明かす。【後藤逸郎、井出晋平】

 「こちらとしても大変喜んでいる。ぜひ成功させてほしい」

 モルガンとの交渉が大詰めを迎えていた時、米国にいた永易(ながやす)克典・三菱東京UFJ銀行頭取の元に、ヘンリー・ポールソン米財務長官から電話が入った。交渉中の日本の民間企業に、米財政当局トップが「祝意」を伝えるのは極めて異例だ。

 合意を目前に控え、あえて「激励」とも「謝意」とも受け取れる言葉を伝えた裏に、米政府の並々ならぬ「決意」がうかがえた。

 「市場」対「国家」の戦いで米政府は劣勢に立っていた。10月10日、ワシントンで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)。米政府が公的資金投入をためらい、モルガン株は急落。9月に破綻(はたん)した米証券大手リーマン・ブラザーズの二の舞いとなる恐れが高まっていた。

 永易頭取と共にワシントンにいた三菱UFJの畔柳(くろやなぎ)信雄社長、国際担当の副頭取や執行役員らも、苦しい選択を迫られていた。

 提携は9月に基本合意していたが、出資額は当時の株価が基準。株価が下がったため損失は免れない。米政府が公的資金を投入すれば出資価値はさらに下がり、株主代表訴訟の恐れがある。とはいえ、ここで出資をやめればモルガン破綻の引き金となりかねない。

 G7に臨んだ日本政府高官は、中川昭一財務・金融担当相、篠原尚之財務官、玉木林太郎国際局長、山崎達雄金融庁参事官ら。

 進退窮まった三菱側は政府側に極秘に接触。政府側は、米側の意向を探った。

 「米の政・官・民は、三菱UFJからの出資を、ダン(完了)させることで一致していた」(日本政府高官)

 日米当局間の折衝は10日夜から断続的に続いた。焦点は、米政府の公的資金投入の方法。11日未明、三菱UFJを含む外資が後で損を出さない方法であるとの情報が日本側にもたらされた。

 「結局はG対Gですよ」(三菱UFJ幹部)。Gは英語のガバメント、政府を指す。

 永易頭取はモルガンのジョン・マック最高経営責任者と最後の交渉に臨み、株の種類を変えて損失発生を抑える出資条件の変更で合意。ニューヨークのモルガンに額面90億ドルの小切手が持ち込まれた。13日のニューヨーク株式市場でモルガン株は急騰。危機はひとまず去った。

 「三菱のためじゃない。日米のためにやった。日米だからできた」(日本政府高官)

 1960年の日米安保改定から間もなく半世紀。軍事・経済・社会・文化まで、同盟は広範に深化してきた。次の半世紀の成熟した関係はどうあるべきかを探っていく。

アメリカよ・新ニッポン論:第1部・同盟と自立/1(その2止) - 毎日jp(毎日新聞)

 ◇モルガン出資なら処分解除--FRBしたたかに誘導

 先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が終わった昨年10月10日夜から13日朝にかけての実質3日間、世界金融システムを支えるため、米政府は日本政府とも連携し、邦銀からの巨額出資取り付けへ遮二無二動いた。だが、その前から米政府や米連邦準備制度理事会(FRB)は、外国資本から米系金融機関への出資を促すため、したたかに動いている。

 「モルガン・スタンレーへの出資があるので、米当局が当行への処分を解除する」

 東京の三菱UFJフィナンシャル・グループ本店に、米国から極秘情報がもたらされたのは、9月23日だった。

 同月、三菱UFJ米州本部の検査に入っていたFRBが、翌週中に現地法人の処分を解除する準備をしていると伝えてきたのが根拠だったという。検査は2週間で終わった。

 01年の米同時多発テロの後、米国はマネーロンダリング(資金洗浄)の監視を強化。防止体制が不十分だった内外の金融機関に「リットン・アグリーメント」(業務改善命令の一種)を出した。処分中は金融持ち株会社の認可が得られない。

 三菱UFJ現地法人は06年に処分を受け、翌春を目指していた米金融持ち株会社設立計画が崩れた。この資格がなければ投資業務などが自由にできず、事業が展開しにくい。傘下の現地銀行も04、07年の2度処分されていた。

 「米系金融機関に投資すれば、業務改善命令を解除する」

 ウォール街で07年から、うわさが流れた。米政府に強いパイプを持つ米系法律事務所が、海外の金融機関に話を持ち込んだからだ。

 日本の大手金融機関幹部は、同年来日した米財務省幹部から「米系金融機関への出資と処分解除はセットだ」と示唆されたと証言する。

 米系金融機関への投資の動きが広まった。08年9月に破綻(はたん)した貯蓄貸付組合最大手ワシントン・ミューチュアルとの提携話も当時、邦銀に持ち込まれていた。だが、処分解除の見通しが立たない三菱UFJは出遅れた。

 「モルガン出資=処分解除」の情報に先立ち、モルガンは株価急落で経営危機に陥っていた。9月19日、三菱UFJ、邦銀大手みずほフィナンシャルグループ、中国政府系ファンド中国投資有限責任公司に、一斉に提携の話が持ち込まれた。

 いずれも不調に終わったが、モルガンは三菱UFJに的を絞って21日、再度出資を要請。投資銀行業務を強化するため「モルガンには長年あこがれを抱いていた」(同行幹部)三菱UFJは翌日、最大90億ドルの出資方針を決める。米投資銀ナンバー2の巨大金融機関の資産査定を、わずか2日で済ませた。

 FRBの処分が解けない限りは出資できないが、処分は30日、解除された。三菱UFJは直ちに宿願の米金融持ち株会社設立を申請。認可は10月6日、史上最短で下りた。

 ◇「オバマ氏側近も喜んだ」

 しかし、モルガンの株価は下がり続け、10日には米政府が公的資金投入の方針を発表した。米政府の投入方法次第で、民間からの出資は価値が下がる恐れがあった。FRBとの呼吸合わせは、証拠のない「裏の事情」。三菱UFJは「降りるに降りられない」境遇に置かれた。

 10日夜から11日未明、三菱側はワシントンで日本政府高官と接触。日本側が米側と情報交換を重ねた。交渉の大詰めで、ポールソン米財務長官が永易克典・三菱東京UFJ銀行頭取に掛けた異例の電話が、「謝意」や「激励」に形を借りた「催促」とも受け取れたのは、こうした経緯があったからだ。

 日米両政府が裏で最後の環境を整え、米当局トップが決断を促す息詰まる交渉のさなか、畔柳信雄・三菱UFJ社長は米国時間11日正午過ぎ、慌ただしく帰国の途についた。

 日本時間10月13日夕(米国時間同日早朝)、米系法律事務所サリバン・アンド・クロムウェル日米事務所を結んだテレビ会議で臨時取締役会が開かれ、畔柳氏は日本、永易氏は米国で臨み、出資は決定された。

 「モルガンがつぶれていたら今の世界はない。米金融当局やオバマ次期大統領に近い人からも非常に喜ばれたと聞いている」(三菱グループ幹部)

 モルガンのジョン・マック最高経営責任者は12月17日の決算発表で、事業展開の柱に「三菱UFJとの戦略的提携」を挙げた。=つづく

「ハドソン川の奇跡」と金融危機

「ハドソン川の奇跡」と金融危機|紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに
少し古い話になるが。
最近ハドソン川に、飛行機が緊急着水するニュースがあって。
見事に乗員・乗客・付近の住民に誰一人怪我をさせることなかった機長に、全米あるいは全世界が賞賛の声を送った。


アメリカでは、当然に彼はスーパーヒーローで。
1549、というそのシャーロット行きの便の便名が、今では究極のラッキーナンバーになっているらしい。


そのニュースに対する人々の興奮ぶりを見ると。
あるいは機長に投げかけられるたくさんの賞賛と感謝、感動の声を聞くと。
ああ、また金融危機は起こるな、と強く感じた。


なんでUSエアウェイズがハドソン川に不時着して乗客・乗員が無事だと、金融危機がまた起こるのか、と当然不思議に思うと思うが。

ちょっと長いが、以下を読んでもらいたい。

以下の記述は実在する人物について、ではなく、あくまでもフィクションだが。
オバマ新大統領が就任演説で述べた、「a consequence of greed and irresponsibility on the part of some」、つまり「一部の者の強欲と無責任の帰結」をあらわす典型的な例だと考えて欲しい。


あるトレーダーがいた。

市場のトレンドが全て上向きだったので。
何をやっても失敗することは考えにくい状況だったのも間違いなかったのだが。
がっつり多額のボーナスを貰って、いい暮らしをしていた。


そして、1年程前に別の会社にシニアトレーダーとしてかなりの好条件で移った。

しかし。
直前まで在籍していた会社が、彼が残していったポジションを精査したところ。

とんでもないことが判明。

流動性の低いポジションを大量に在庫にしていて、それを市場実勢を大幅に上回る値段で評価していたのだ。

そりゃ、儲かるわ。

たとえば。
今価格が暴落していて、額面の20%でも買い手が付かないだろうと思われる永久劣後債を100億近く在庫にして。
80%で評価していたり。
不動産会社が発行体である流動性の低い債権を数十億円分買って、その不動産会社が破綻の危機に瀕していたり。

当然、評価はその危機的状況を反映したものではなく。

彼は1年を通じて(250営業日とかですが)、毎日のトレーディングでほぼ負けることはなかった、らしい。
そりゃ、こんな感じで評価していれば、負けることもないだろう。


なおかつ会社が彼にチャージするファンディングコストが、取っているリスクに対して低すぎたので。
多額の在庫からのキャリー収入も、相当な額にのぼり。
彼のPL(損益)を押し上げた。


何でも買いまくって、ポジションを膨らませれば膨らませるほど。
彼のPLは増えていく。
だって、時価はごまかし放題、ポジション取ればキャリー収入が増えるわけだから。


何でそんなことが可能だったかというと。

自分が保有する債券の時価評価を、トレーダー自らが行うから、なのだ。
それも、だれも時価がどこにあるか見当もつかない、流動性の低い相場の中で。
そして保有している金融商品のリスクの度合いを、客観的に判断できる第三者がいなかったからなのだ。


ポジションの時価をごまかす人間がいることは想定されているので。
コントローラーと言われる人が、トレーダーの評価が間違っていないかどうか、責任を持って判断することになっている。
まともな会社は、ちゃんとしたコントローラーを雇って、トレーダーの暴走を防ぐ仕組みにしている。
その上、そもそもまともな上司がいて、部下のトレーダーがマークをごまかしていないか、しっかりチェックしている。


だが。
彼が直前まで在籍していた会社は、利益を生み出すフロント部門のみに注力して。
コントローラーを含む管理部門への投資を怠り。
結果、よく分かっていない優秀でない人間が、コントローラーとなっていて。
トレーダーの言うなりで、時価のチェックを実質的に行っていなかったのだ。

したがって、時価も正確には判断できず。
リスクに見合ったファンディングコストをチャージすることも、リスクが判断できていなければ当然にできず。


時価をごまかすのに、何を利用したかというと。

一つには、業界団体が毎日まとめている標準気配。

これがまた怪しい代物で。
業界団体に各証券会社からデータを提供し、毎日更新されるので、市場実勢を反映しているように思いきや。
そのデータを出しているのは、どこの業者でも一番の若造。
流動性が低い債券の場合、データ提供する業者が違うと利回りが1%違ってもぜんぜんおかしくない。


ちなみにこのデータを元に、ファンドの時価を計算している運用会社もたくさんある。
流動性の高い債券についてはそれなりのデータの信頼性はあるかもしれないが。

このデータ作成は、ひどい馴れ合いに基づいた代物であるらしく。
特定の会社に大きなニュースが出て、当然その会社の発行する債券の時価が大きく変わるべきところが。
あまり激しく時価を動かすと、投資家からクレームがくるので。
いわゆる「スムージング」した値段が、データとして提供されている、と言われている。


そこでの時価を使えば、市場実勢より数%から場合によっては10%以上高い値段で在庫を評価できることもあるし。
格付対比の平均スプレッド(BBB格5年だとL+XXXbp、みたいな)を使って、ほとんど取引されない流動性の低い債券の時価を無理やりかさ上げすることも、不可能ではない。


だって、業界団体が複数社から集計した時価情報に基づいてポジションを評価しています、と言えば。
よく分かっていないコントローラーなら、「あ、それで良いんじゃない?」って思ってしまうはず。


(ただし、某業界団体の時価情報が当てにならず、それで時価評価を行うのが完全に不適切であるといっているわけではないので。それにこの例は最初にお断りしたとおりフィクションなので、念のため。)


というわけで。

流動性の低い(ということは往々にして質が悪い、と言うことだが)債券を山のようにポジションして。
バランスシートの制限もなく、安いコストでファンディングを取って来れれば。
絶対負けない、スーパートレーダーの出来上がり。


最初はごまかそうと思ったわけではないかもしれないが。
ゲームのルールを理解すればするほど。
彼が取る行動は、どんどん大胆になっていったことは、想像に難くない。
それが、正しかったかどうかについては、歴史が証明することになったのだが。


前にも書いたが、ゲームのルールが人の行動を支配する ので。
ゲームのルールの設計者が設計をしくじると、みんながとんでもない方向に走り始める。


会社の中での彼の評価は超高く。
ボーナスはとんでもない額がもらえたりして。
とりあえず、チームも会社も儲かっているように見えるし。
上司もハッピー。


ってなことをやってたバカな人たちやバカな会社が、いっぱいいたわけですよ。
程度の差こそあったかもしれないが。


別に、社債の世界だけではなく。
「流動性の低い債券」、を「CDS」や「サブプライムローン」に置き換えても、本質は何も変わらない。


「過去10年間のデフォルト率、損失率と住宅価格の上昇をベースに、サブプライムローンの時価を評価しました」って言えば。
ローンの評価が実質的にかさ上げされた。

リスク調整されていないファンディングコストに基づいて、バランスシート膨らませて、じゃんじゃんローンを在庫にして。
とりあえずバブルが弾けなければ、みんなハッピー。
あるいはリスクが証券会社のバランスシートに残らず、売り抜けられば。


格付会社は、最初の例でのコントローラーみたいなものだろう。
賢い人もいたかもしれないが、証券化商品の歴史が一番古いのでも30年程度しかないのに。
100年に一回のショックが襲えば、過去のデータを元に格付けつけていれば、どんな天才でも失敗する。


自分が、会社のポートフォリオに強力な爆弾を埋め込んだのに、知らん振りして。
儲かってる儲かってる、って周りが喜んでいる間に、がっつりボーナス貰って。
爆弾が炸裂する前に、他社に移籍。


っていう爆弾が、いまでもここかしこに眠っている。
というか、今でもいろんなところでドッカンドッカン炸裂しまくっていて。
まだどれだけ残っているのか、分からない状況。


これの集合体(これだけではないが)が、金融危機というものを形作っているものの一部で。
オバマ新大統領が触れた、「一部の者の強欲と無責任」の、ひとつの典型的な例。


じゃあ何でUSエアウェイズの不時着水と、金融危機と関係あるかというと。


ハドソン川の事故では、無事に着水した、機長の卓越した操縦テクニックと、最後の乗客が救助されるまで機内にとどまった勇気と責任が賞賛された。
それはそれでとてもよく理解できるのだが。
私からするとそれは、「危機的な状況が起こった後」に、その危機から人々を守った人間が褒め称えられた、ということに他ならない。


これが問題なのだ。
これが、次の危機(必ずしも「金融」危機とは限らないかもしれないが)を引き起こす伏線になる、と思うのだ。


詳しく説明すると。


「危機的な状況」はどうして起こったかというと。
通常なら起こることが想定されていない、バードストライクによるエンジン停止、それも2基のエンジン両方、という事態によって引き起こされた。
2つしかないエンジンの両方が、鳥を吸い込んでしまうことによって停止してしまったことについての機長の責任はどの程度あるのかは分からない。
もしかしたら、どうやったって避けようのない事象だったのかもしれない。


でも。
飛行直前に、いつも双眼鏡か何かで空港の周りを観察して、バードストライクの危険を事前に察知し。
飛び立つ準備が出来た飛行機に、あえて離陸許可を出さなかった管制官もいたかもしれない。

乗客やパイロットは、いつまでたっても離陸が許可されないことに、腹を立てたかもしれないが。
その管制官の行為によって、そもそも2基のエンジンの両方とも停止してしまうような深刻なバードストライクを招くことはこれまでずっと避けられてきた、ということだってありえる。
(慎重に鳥を避けるため離陸を延期させた管制官が、「業務が非効率だ」として逆に誹りを受ける例のほうが、多かったかもしれない。)


あるいは離陸する飛行機の機長が。
「現在鳥がたくさん飛んでいてバードストライクの危険が高いかもしれないので、鳥の群れが去ったあとに離陸許可願います」と言っていれば。
そもそも今回のような危機的な状況を招くことはなかった、かも知れない。


いや、空港の構造上、あるいは水鳥の生態上、バードストライクは予見不可能だよ、という反論は必ず出ると思うが。
仮にそれが真実だったとしても。


「危機を事前に防いだ」人が、英雄として褒め称えられる可能性が極端に低い、ということは間違いない。

1549便の機長がバードストライクの危険性を看過して、今回の危機な状況を招いたかどうかはここではポイントではなく。
彼のような「危機的状況に突入してから英雄的な行為をした人」、だけが英雄になれて。
「そもそも危機的状況を招かないための行為をした」人たちは、決して英雄になることはない。

だれもそんな人の存在さえ、気がつかないだろう。


「ハドソン川の奇跡」の機長が、世界中で英雄扱いされているのを見ると。
本質的に極めて「英雄的」な行為を、人目に触れないところで地味に行っている「報われないかもしれない」人たちの存在に、想いを馳せる。
「報われないかもしれない」という言い方は、正しくないかもしれないが。
少なくとも彼らの顔写真が、全国放送の6時のニュースででかでかと放映されることはないだろう。


そして、金融業界でのコントローラーのような人たちは。
ここでいうところの「報われないかもしれない」人たち、あるいはあまり好きな言い方ではないが、「縁の下の力持ち」で。
彼らがどんなに頑張ったとしても、金融史に彼らの名前が残ることは、まずないだろう。

彼らを見下して、そう言うわけではなく。
本当は、彼らは「危機を事前に防いだ(かもしれない)人たち」で、本来であれば彼らが真の英雄なのかもしれないのに。

人間の認識能力には、限界があって。
フェアな形で、貢献を認識できないこともある。


興奮気味に、あるいは感情的に「ハドソン川の奇跡」を伝える報道を目の当たりにして。
日常的に危機を防いでいるかもしれない人たちに対する扱いと、1549便の機長との扱いが、眩暈がするほど異なることを想い。
後者のみ賞賛されるような世界が続き、前者が本当に報われないのだとすると。
我々は、今回の危機から何も学習することなく。
今後我々の上に降りかかる大きな災厄や危機と呼ばれるものから逃れることは、決して出来ないのではなかろうか。

2009-01-20

効率賃金仮説

正社員はなぜ保護されるのか - 池田信夫 blog

正社員と非正規社員の格差も、世界的にみられる現象である。これは原理的には、効率賃金仮説で説明できる。経営者(プリンシパル)と労働者(エージェント)に情報の非対称性があるとき、労働者が怠けるのを防ぐために、中核的な労働者には限界生産性より高いレントを与え、怠けたら解雇されて、外部労働市場では限界生産性に見合う低い賃金しかもらえないようにすると、労働者は自発的に会社に忠誠をつくす。日本の年功賃金が効率賃金の一種だというのは、よく知られた事実である。

2009-01-12

ユーロの下落

ユーロ下落の陰にヘッジファンドの暗躍 / SAFETY JAPAN [大前 研一氏] / 日経BP社
過去一年くらいの間は1ユーロは165円くらいだったのが、現在では125~120円程度と、劇的にユーロの力は落ちてきたのである。
 さていったい何が起こっているのか。見逃してはいけないポイントは、ユーロが落ちている理由が実体経済にはなかったということだ。10月末の1週間くらいの動きを見ていると、ヘッジファンドがユーロを空売りしていたことが分かってきている。この原稿の冒頭で「投資家がリスク資産の圧縮に動いた」ことを挙げたが、ユーロ下落の理由はそれだけではなかったのである。

ユーロが落ちる理由が実体経済にはない?

ユーロ円
> 09年もユーロが下がるだろうと考えていることは、昨年来まったく変わっておりません。

米国市場

米国におけるソニーの「テレビ」と「Blu-ray」戦略
Blu-rayについて
> 「まず、2月の東芝の“撤退宣言”を受けて、市場のデマンドが急激に高まりました。結果、撤退宣言の直後から夏前まで、BDプレーヤーは供給不足に陥り、欠品も発生していました。7月には年末に向けた新製品を発表したのですが、9月末の“リーマンショック”で、市場が一気に冷え込みました。10月あたりには、先行きがまったく見えなかった。9月末に、主力商品であるBDP-S350価格を、399ドルから299ドルに価格変更しました。ただそれでも、(販売数量が)我々の期待値に届かなかったのはのは事実です」

> テレビ関連のマーケティングを担当する、Sony Electronics Inc. Home Products Division TV Maketing General Managerの松尾俊宏氏は、2008年の状況を次のように振り返る。

> 「(昨秋以降)住宅関連が厳しくなり、ホームシアターが厳しくなり、結果テレビが苦しくなるのでは、という懸念は非常に広くもたれていました。ですが、実際にふたをあけてみると、2008年は年明けから6月まで、非常に良い勢いでのびました。8月、9月くらいまでは、“Staycation”(Stay+Vacationの造語)と呼ばれ、節約のために、家の中で長く過ごす時間を快適にするものへの投資として、テレビの購買につながりました」という。

> さらに、「ところがその後、10月になってさらに景気が減速しました。そこで、『こんどこそ厳しいのでは』と考え、年末商戦に向けた販売や生産の計画の調整をしよう、という話があったんです。そこで慎重に検討していたのですが、結果的に、Black Fridayが終わってみると、前年に比べて販売実績は伸びていた、という形です。計画の調整をした以上の結果が得られた、といっていいでしょう。ですから、結果的には強くブレーキを踏む必要がなかった、ということです」と語った。

> 市況が悪いのに、なぜテレビは売れたのだろうか? 松尾氏は、「現在分析中で、あくまで感触だが」と前置きした上で、こう説明した。

> 「2009年2月に、アメリカではアナログ放送が終わる予定です。そのため、コマーシャルなどが大量に流されているんですが、そこでは、単に“デジタルになる”ということだけではなく、”テレビを買うタイミング”を訴求してくれたんです。例えば、フラットなテレビがたくさん出ていること、その価格が非常に下がっていること、そして、サイズが大きくなっていることなどです。必要がものが買い時になっているから売れた、ということで、いわゆるStaycationではないでしょう」。

後から追いかける国

出発の時間
昨年決めておいた戦略を粛々と実行する。
昨年一年間封印していた新規の投資資金の追加を始める。
何故、週明けなのか?
右のコピペのように世の中真っ暗だ。
企業の業績下方修正もラッシュの最中だ。
しかし、相場には春夏秋冬が必ず巡ってくる。

週末の定点観測 : 中国へのコメント
後から追いかける国は、先人が30年かかって成し遂げたことを半分以下の期間で経験するのだろうと思います。
中国の1978年毛沢東の否定、改革開放路線へ=日本の1945年終戦
という判断を私はしています

2009-01-10

選挙のパラドックス

民主党の合理的バイアス - 池田信夫 blog
Caplanが行動経済学的な実験の結果として報告するように、アメリカの有権者には次のようなバイアスがある:

  • 反市場バイアス:市場メカニズムをきらう
  • 反外国バイアス:輸入品をきらう
  • 雇用バイアス:雇用の削減をきらう
  • 悲観バイアス:経済状態を実際より悪く評価する
こういう特徴は日本でも同じであり、Rubinもいうように、一部は遺伝的なものだと思われる。それはハイエク的にいうと部族感情である。人類は、その進化の大部分を数十人の小集団で過ごしてきたので、目に見える仲間の利益を守り、目に見えない多数の他人の利益を無視するバイアスがあるのだ。

「派遣を禁止したら、かわいそうな派遣はいなくなる」という短期的な結果は誰でも予想できるが、それによって雇用コストが上がって失業が増えるという長期的な結果を理解するには(高校程度の)経済学の知識が必要だ。このように人々の善意が、その逆の意図せざる結果をもたらすというのがアダム・スミスの発見だが、これは直感に反するので、生活の中で自然に身につけることはできない知識である。どこの国でも市場や経済学者がきらわれるのは、人々の自然な部族感情に反するからだ。

さらにGrossman-Helpmanも指摘するように、有権者は他人の決定にただ乗りすることが合理的だから、政治に影響を与えることができるのは、少数であっても固い集票基盤をもつロビイストである。労働者の18%にすぎない労働組合は、いまや農協のようなものだが、このような衰退する組織ほど政治的ロビー活動によって延命しようとするインセンティブが強い。 選挙のパラドクス - 池田信夫 blog 民主主義は最悪の政治形態である――これまで試された他のすべての形態を除いて、というのは有名なチャーチルの警句だが、民主主義にも多くの形態があり、そのすべてが試されたわけではない。 1人の有権者が政治を左右することは不可能なので、彼らは他人の決定にただ乗りするのが合理的だ。政治に影響を与えることができるのは、多くの票をもつ集団のロビイストであり、彼らのインセンティブは大きい。たとえばウルグァイラウンドによる米の自由化に際して、農業団体が活動したコストは、政治家にばらまいた金を含めても100億円を超えないだろうが、その結果、彼らは6兆円の補助金を得た。建設業のようなロットの大きい産業でロビイングが活発なのは、このような費用対効果が大きいからで、これは民主主義の合理的バイアスである。

2009-01-06

「派遣村」の偽善

「派遣村」の偽善 - 池田信夫 blog
> 「年越し派遣村」なるイベントが、与野党のポピュリズムに利用されている。民主党の鳩山幹事長が代表質問で、派遣村にコメントした坂本政務官の解任を要求したのには唖然とした。日本の政治には、もっと大事な問題がたくさんあるだろう。完全失業者は250万人もいるのに、なぜ日比谷公園に集まった500人だけを特別扱いするのか。

トヨタが2~3月に11日間操業休止、賃金カットも

トヨタが2~3月に11日間操業休止、賃金カットも : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
トヨタ自動車は6日、国内の直営全12工場で2~3月に計11日間、通常の休みに上乗せして操業を休止する方針を固めた。
 トヨタは1月の操業を追加で3日間休止する計画だが、新車の販売不振が深刻化しており、減産の強化に踏み切る。
 トヨタは従来、2~3月は各工場で計13日の休日を予定していたが、2月に6日、3月に5日を追加する。1月までの追加の休止日では、従業員に有給休暇を取得させているが、2月以降は休止日のうち一部を、賃金がカットされる休業日とする方向で労働組合と協議している。トヨタ自動車九州も追加の操業休止を検討している。
 トヨタは新車販売の不振を踏まえて昨年12月、2009年3月期のダイハツ工業などを含む連結販売台数の見通しを、11月時点より70万台少ない754万台に下方修正した。生産台数も合わせて引き下げており、操業休止や期間従業員の削減などで、工場の稼働率を落とす方針だ。
(2009年1月6日14時32分 読売新聞)

2009-01-01

「他社より安くします」チラシのホントの理由

「他社より安くします」チラシのホントの理由(再掲) - Cahier de Siliqua_alta
那須高原の別荘地 藤和那須ハイランド

Diamond ZAi ダイヤモンド・ザイ

  • 本当にキツイ相場でした。
    日本株は。連続して大幅下落した局面が 2 度ありましたよね。
    あの 2 度とも、前日までに全部売り切っていたんです。
    普段ならあそこまで下げたら翌日は反発するので、持ち越していい場面でした。
    今回は違和感があったので売ったのですが、それで助かりました。
    本当に紙一重だったと思います。
  • 現金にしてあれば株価の暴落を眺めるのは平気なはずなんですが、今回ばかりは“このままいったら経済はどうなっちゃうんだろう”とちょっと不安になりました。
    この先どうなると思うか?
    全然わかりません。
    ていうか、わかる人いるのかな。
    自分はその時々の相場に適応していくだけです。
  • 中途半端なところで買いを入れて、5 億円くらい損した日もあった(ものの、10 月 8 ~ 28 日を約 12 億円のプラスで終えることができた)。
  • 9 月 7 日に米国政府が、経営難に陥っていたファニーメイとフレディマックに公的資金を注入して、救済することを決めましたよね。
    それを知った時、りそな銀行が国有化されたときのことを思い出したんです。
    あの時は(国有化が決まった)当日は株価が下げたんですけど、翌日から上昇していきました。
    それと同じようになるんじゃないかと思って。
  • (45 億円を両替し、ファニーメイとフレディマックに買い注文を入れても)変なアラート(注意画面)が出て、注文がはじかれてしまうんです。
    何だろうと思ったら、その証券会社では米国株の発注は、1 万株未満までしか受け付けてもらえないことになっていたんです。
    米国株の値動きはいつも見ていたけれど、実際に買うのは初めてだったので、そんなルールがあるとは知りませんでした。
    それで、仕方がないから 9990 株ずつ注文を出していったんです。
  • (ファニーメイとフレディマックの株価は、急落して「1 ドル」になろうとしていて、4500 回も買い注文を出し続けるのは)1 日ではとても無理で、何日かに分けてひたすら買い注文を入れました。
    連日深夜の 4 ~ 5 時間、ずーっと入力しっぱなし。
    泣きそうでした。
    翌日には指や肘じゃなくて、肩のここ(三角筋)が痛くなるんです。
    注文を出すときにこの筋肉を使ってるなんて、生まれて初めて知りました。
  • 最後には、恐ろしく速く注文が出せるようになりました。
    何も考えてないのに、腕が勝手に動くんです。
    それを眺めていると、“この手は機械で、人間の手じゃないんじゃないかな”と思ったり。
  • (45 億円を使い切る前に心が折れてしまい、30 億円分の購入で打ち止めにした)ファニーメイとフレディマックは、それぞれ 2.76 ドルと 2.9 ドルまで急騰したので売れました。
    でも、(リーマン・ブラザーズの経営破綻が取り沙汰されたとき、同様に公的資金が入ると見てリーマン株を 7 億円分買い集めていたため)リーマンの破綻を食らって 7 億円の損。
    さらにこの間に円高が進んだので為替差損と、売買手数料が 1 億円以上もかかって、都合 7 億円くらいしか儲からなかった。
    あんなに頑張ったのに……。
  • (マウスを投げつけて)モニターを壊したのは、久しぶりでした。
    ええ、今までに何台も、そうやって壊してきたんです。
    それで、日本株にも集中しなきゃならないし、米ドルのままにしておくとまた買ってしまうので、米国株は止めにしました。
    あんなに頑張ったのに……。
  • 昔から理性ではヤバイとわかっていても、チャンスと思うと無意識に株を買っている。
    今まではそれがたまたま良い方向に作用したけど、資金が膨らんでそうもいかなくなってきた。
    だから、一部を簡単には売買できないものに、替えてしまいたかったんです。