2001-01-16

タイトル不明

投稿者:マーケットの奇術師  投稿日: 1月 7日(日)22時49分43秒

のぶりんさま、ファルコンさま:
機関投資家というのは、人様のお金を一任勘定で預かって運用する会社のことを
言うものだと考えておけば、間違いはないと思います。

>「充分安い水準ではある。しかし持ち合い解消もあるし、明るい材料は何もないから
>まだまだ下げそうだ。こんなところで一人で無理して買って、ドンキホーテになるほど
>馬鹿じゃないぜ。もうたっぷり損を抱えているし、上げトレンドがはっきりしてから
>出動しても充分。みんなもそうだろう。ここから相場が下げれば、株を持ってないだけで
>ベンチマークを上回れる。いわば防御が最大の攻撃というわけだ。いまは利益より
>これ以上損失を増やさないことだなあ...。」というわけで買いは入れませんね(^_^;)。

(^_^;)

・・・そうですね・・・おそらく、大多数のみなさまは、ファンドというものの運用の
仕組みを、漠然と個人投資家の延長線上で理解していらっしゃるのでしょうね。
実は、そのほとんどが誤解であろうと思います。

株式市場というひとつのグラウンドで、機関投資家も個人投資家も入り乱れてゲームを
しているわけですが、よく見ると、投信・外資・公的資金・そして個人と、実はそれぞれ
ゲームの進め方や目的が全然違うことにお気づきなのではないかと。

大納会前の引け際の上げは、PKOというよりはドレッシング買いの面が強かったと
考えています。これなど、「違うゲーム」の最たる例かもしれませんね。
普通、個人投資家は、安く買って高く売ることを目的として参加するはずです。
しかし、機関投資家や証券自己は、場合によっては「値段を上げるために買う」ことが
あります。個人投資家の目から見れば、愚かしいことですが、彼らの目的からすれば
それはごく自然に取られる行動パターンなのですね。
個人投資家でも、仕手と呼ばれる人たちは、一般の投資家にはなかなかその真意が
理解できないような不思議な行動を市場で取ることがありますけど、それと同じような
ものかもしれません。

また、ファンドマネージャの仕事がディーラーの仕事と混同して理解されていることも
多々あります。ファルコンさまの想像は、おそらくそういったところから出ている
ものでしょうね。
ファンドマネージャには、株を買わない自由というのはありません。アロケータから
与えられた株式運用枠、すべて株を買わなければならないのです。
また、ファンドマネージャには、タイミングを計る自由もほとんどありません。全体相場が
どうであれ、また個別の目先の動きがどうであれ、資金が入ってきたら機械的に買わな
ければならないのです。
一部外資系のファンドでは、テクニカルアナリストが運用スタッフに入っていて、
テクニカル分析を利用して売り買いのタイミングを調整することがありますが、
それはむしろ例外だと思います。
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投稿者:マーケットの奇術師  投稿日:2001年 1月12日(金)19時51分56秒

草笛さま:
草笛さまのご投稿中、一部誤解があると思われますので、ファンドとその運用スタッフの
名誉の為に、弁護させていただきたく思います。

>投信運用者は、無配のTECなんか見向きもしないでしょうが、僕等個人投資家の有利さは
>TECのような割安株を買うことができることです。
>投信運用者は横並びで、同業者が買っている株しか買わないから、いつも失敗するのです。

ファンドは、無配の銘柄を絶対に買わないということはありません。明らかに一時的要因で
赤字無配に転落して株価が割安になった銘柄、あるいは現在無配でも、積極的なリストラや
新分野への進出などで企業体質を変え、近い将来業績の大幅な伸びが期待できる銘柄などは、
無配でも買われることがあります。

しかし、現在の6330 洋エンジがファンドに大々的に買われることはおそらくないでしょう。
それは、致命的に流動性が不足しているからです。
仮に運用資産額100億円の中規模株式投信があり、簡単のため20銘柄均等配分で
ポートフォリオを組むとします。1銘柄あたりの買い付け額は5億円です。
洋エンジの1日あたりの平均売買代金は1000万円強しかありませんから、仮に
毎日一手買いを続けても、当初設定額を買い切るだけで二ヶ月かかることになります。
実際にはとてもそんなことはできません。洋エンジでは器が小さすぎて、このファンドの
運用対象になり得ないことはおわかりいただけると思います。
日揮は良くても洋エンジはダメ、新日鐵は良くても中山鋼はダメ、ソフトバンクは良くても
ヱスビー食品はダメ(笑)というのは、業績や配当や将来性云々とは別の問題なのです。

横並びで、同業者が買っている株しか買わない、たしかにそういった面はあります。
しかし、それは単にファンドマネージャが横並び意識が強すぎるから、というだけの
理由からではないのです。ベンチマークの問題、保守的な委託者の意識の問題といった
側面からくる、やむを得ない理由もあるのです。
たとえば総合型株式投信では、持ち合い解消があるから銀行株を一切買わない、あるいは
割高だから電機や自動車を買わない、そういう極端な運用は非常に難しいです。
なぜなら、TOPIXがベンチマークになる以上、時価総額に占めるウェイトの高い
これらのセクターを一切ポートフォリオに採用しなければ、あまりにもリスクが大きく
なりすぎるからです。うまく行ったときはいいのですが、経済状況や相場の流れが
急変したとき、ベンチマークに大負けしてしまうことになります。
ファンドというものは、一発勝負で短期に大儲けするために存在するものではなく、
ある程度の長期間、安定して市場平均に勝ち、複利効果の助けを得て結果的に有利な
資産運用を行なうために存在するわけです。そして委託者もそれを望み、短期的には
ともかく、長期的には預金金利や債券よりも株式による運用が利回りが高くなることを
知ってファンドに運用を任せているのです。
ある意味、ファンドほど株式市場を(ひいては日本経済を)信頼している投資主体は
ないとも言えます。ファンドマネージャの仕事とは、TOPIXが10%上がれば
13%上がり、TOPIXが10%下がれば7%しか下がらないポートフォリオを
作成し、維持調整管理することなのです。そして長期的に市場平均はマクロ経済の
成長に伴い、インフレ率を上回るリターンをもたらすことを信じているのです。

私の知るかぎり、横並びというよりはむしろ、特徴のある小型成長株を少しでも多く
見つけて、許されるかぎりポートフォリオに組み入れようと、日々情報収集や分析に
苦労しておられるファンドマネージャの方々が多いです。
腕に自信のある個人投資家の方ほど、ファンドマネージャへの不信が強いのは
わかりますが、よく言われる「サラリーマン」的な面は、誤解に基づく部分も
多いのではないかと。
少なくとも、横並びでみんなが買う大型主力銘柄だけを買っていれば、失敗しても
言い訳ができる、というような甘い世界でないことだけは確かだと思います。
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投稿者:マーケットの奇術師  投稿日:2001年 1月12日(金)22時22分32秒

草笛さま:
>説明よくわかりました。そうあっていただきたいと思います。
>せめて郵便貯金の金利なみに運用していただければ皆感謝するでしょう (^O^)

ほんとうによくご理解いただけたのでしょうか?
長期間平均すれば、郵貯金利など問題にならないぐらい株式投信のパフォーマンスは高い
はずですが・・・?

たとえば去年の3月頃に新規設定された投信をその時に買い、そのままにするような
おおざっぱな買い方をすれば、現時点では3割ぐらい減価しています。
そうじゃなくて、オープン型投信を毎月一定額積み立てて行くような買い方をすれば、
バブル崩壊以後の不安定な時期でも、充分なリターンが得られていますよ。
自然とドルコスト平均法的な効果が出ますので。
ファンドとは本来、そういうふうに買うものだと思います。

一年で東証一部時価総額の25%が失われるような時期に、元金保証の預貯金に
勝るパフォーマンスを上げるファンドがほとんどないのは、あたりまえのことです。
そのかわり、良い時期には一年で50%近いリターンをもたらしてくれるファンドも
たくさんあります。
責められるべきはファンドの運用ではなく、平均株価が天井をつける近辺で
よく考えずにまとめて株式投信に資金を投下した投資家の方ではないでしょうか?

もちろん、市場平均にすら勝てないファンドは、その運用手腕を責められて当然ですけど・・・(^^;
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投稿者:マーケットの奇術師  投稿日:2001年 1月16日(火)01時07分31秒

あの手この手で投信を売りたがる証券会社の無茶な営業実態は、よく見聞きする
ところです。末端のセールスマンは、投信の販売高が成績に直結する仕組みになって
いますから、お客のためになるかどうかは二の次で、とにかく売ることに血眼になります。

ではなぜ証券会社が投信を勧めたがるのか? それはもちろん、投信販売が証券会社にとって
ノーリスクで法外な手数料を取れる、おいしい商売だからです。手間ばかりかかる小口株式の
売買注文をちまちまもらうより、ドーンと投信を買ってもらったほうが証券会社にとっても
ありがたいのですよね。
投信の仕組みに付いてはここでは触れませんが、実際の運用は投信会社、信託財産の管理は
信託銀行、そして販売するのは証券会社、というふうになっているのが一般的です。
注意すべきは、証券会社は投信の販売窓口に過ぎない、ということです。

投信の販売に際しては、『適合性の原則』というルールがあります。
顧客の知識や経験、あるいは資産の状況をよく考慮し、不適当な勧誘をしてはならない、
という重要な原則です。特に問題になるのが、リスク面も含め、顧客の理解力に応じて
充分な説明をし、顧客が理解し納得したことを確認してから販売しているかどうかです。
少し前から、銀行での投信窓口販売が解禁されましたが、そこでの商品説明は押し売りとは
程遠い、もっと言えば「買ってほしいのかほしくないのかわからない」ほど、腰の引けた
ものだそうです。本来、リスク商品の勧誘はそれぐらい慎重であるべきなのかもしれません。

しかし、もう一方では、『自己責任の原則』というルールも、厳然としてあります。
元金保証でないリスク商品を購入した場合の結果は、最終的に購入を決断した顧客自身が
背負うべきものである、という原則です。言うまでもないことですね。
その投信の運用方針も、過去の実績も、現在の相場環境も確認せず、勧められるままに
なんとなく買ってしまった結果を、営業にすべてなすりつけるわけにはいかないでしょう。
投資家は被害者ではありますが、その過失責任割合はゼロではないと思います。

なお、投信と言っても、その運用方針は多種多彩です。債券運用の比率が高く、比較的
成績の安定したバランス型投信もあれば、ほぼ100%株式で積極運用するタイプの
投信もあります。特に後者のようなタイプには、買う側にもそれなりの相場観が必要に
なってくるのは当然のことではないかと考えています。
逆に、自分の相場観に自信のある場合には、デリバティブズを利用したブル型・ベア型
投信とか、業種選択型投信なども面白い存在だと思います。
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投稿者:マーケットの奇術師  投稿日:2001年 1月16日(火)01時08分31秒

継続的に資金が入ってくる事業体、というのは、みなさまオープン型投信などを
想像なさるかもしれませんね。もちろんそれもありますが、それよりも典型的かつ
重要なのは、生保・年金・簡保などの資金を運用する機関投資家のファンドです。
身近な株式投信などとは異なり、これらのファンドは規模も大きく、また運用に
際しての法的な規制もありますので、株式のみで運用しているわけではありません。
5・3・3・2規制などという言葉がありますが、だいたいどの信託銀でも、
国内債券・国内株式・外国債券・外国株式・転換社債・貸付金・譲渡性預金、といった
順で運用比率を決めています。国内株式は総資産の2割から3割程度でしょうか。
この運用比率を決めることを、アセットアロケーションと呼んでいます。
理想的には、上げ相場を予測して株式運用比率を高め、下げ相場を予測して
運用比率を下げる、というふうになれば一番効率的ですが、なかなかそうも
いかないようです。むしろあまり極端に比率を上下させるようなことはせず、
ご指摘のように追加資金が常に流入することによるドルコスト平均法的効果を
利用して長期的な平均リターンを維持する方向で運用しています。

ですから、株式に投資する場合、ファンドマネージャが責任を負うのは、
糸魚川さまがおっしゃるようにベンチマークに対するパフォーマンスなのです。
株式市場全体の騰落についての相場観が問題になるのは、ファンドマネージャ
よりもむしろ委託者とアロケータなのです。
もちろん、ファンドマネージャも、目先の相場が弱いと思えばディフェンシブな
ポートフォリオを組むのは当然のことですが。

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