2009-01-10

選挙のパラドックス

民主党の合理的バイアス - 池田信夫 blog
Caplanが行動経済学的な実験の結果として報告するように、アメリカの有権者には次のようなバイアスがある:

  • 反市場バイアス:市場メカニズムをきらう
  • 反外国バイアス:輸入品をきらう
  • 雇用バイアス:雇用の削減をきらう
  • 悲観バイアス:経済状態を実際より悪く評価する
こういう特徴は日本でも同じであり、Rubinもいうように、一部は遺伝的なものだと思われる。それはハイエク的にいうと部族感情である。人類は、その進化の大部分を数十人の小集団で過ごしてきたので、目に見える仲間の利益を守り、目に見えない多数の他人の利益を無視するバイアスがあるのだ。

「派遣を禁止したら、かわいそうな派遣はいなくなる」という短期的な結果は誰でも予想できるが、それによって雇用コストが上がって失業が増えるという長期的な結果を理解するには(高校程度の)経済学の知識が必要だ。このように人々の善意が、その逆の意図せざる結果をもたらすというのがアダム・スミスの発見だが、これは直感に反するので、生活の中で自然に身につけることはできない知識である。どこの国でも市場や経済学者がきらわれるのは、人々の自然な部族感情に反するからだ。

さらにGrossman-Helpmanも指摘するように、有権者は他人の決定にただ乗りすることが合理的だから、政治に影響を与えることができるのは、少数であっても固い集票基盤をもつロビイストである。労働者の18%にすぎない労働組合は、いまや農協のようなものだが、このような衰退する組織ほど政治的ロビー活動によって延命しようとするインセンティブが強い。 選挙のパラドクス - 池田信夫 blog 民主主義は最悪の政治形態である――これまで試された他のすべての形態を除いて、というのは有名なチャーチルの警句だが、民主主義にも多くの形態があり、そのすべてが試されたわけではない。 1人の有権者が政治を左右することは不可能なので、彼らは他人の決定にただ乗りするのが合理的だ。政治に影響を与えることができるのは、多くの票をもつ集団のロビイストであり、彼らのインセンティブは大きい。たとえばウルグァイラウンドによる米の自由化に際して、農業団体が活動したコストは、政治家にばらまいた金を含めても100億円を超えないだろうが、その結果、彼らは6兆円の補助金を得た。建設業のようなロットの大きい産業でロビイングが活発なのは、このような費用対効果が大きいからで、これは民主主義の合理的バイアスである。

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