1999-01-04

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 実際昨日、S&P 500 でこのパターンが見られました。朝方大幅に上昇した後、横ばいの動きが続きました。そこで再び上昇し始めるのではなく、まず大幅に値を崩したのです。そして午後に入ると再び上昇するという展開でした。トレーダーとして、横ばいの動きが長引くような時は、その後に転換する可能性があるということに注意する必要があります。ここまで紹介してきたことが、ショーバッカーの貢献分野です。
 次に挙げるのはワイコフですが、彼はさらに踏み込んだ研究を行いました。彼は、単にアキュミレーション、ディストリビューションのポイントを突き止めるチャート・パターンについて研究するのみでなく、将来のマーケットの動きに結びつく一連の動きについても研究し、発表しています。ワイコフはまた、「セリング・クライマックス」などを定義付けた人でもあります。
 マーケットに「クライマックス・パターン」が現れると、その後自動的にリアクションが見られ、上昇し始めることがあります。そのポイントでは、損失を出したトレーダー達が損切りし始め、その後さらにマーケットは崩れます。そして底割れを試すのです。ここまで「試し」、「アクション⇔リアクション」というコンセプトを紹介してきましたが、先程も言ったとおり、一連の流れとして捉えてみました。
 次にワイコフが行ったことは、各チャート・パターンの微妙な違いに目を向けることでした。ショーバッカーは「これがブル・フラッグで、これが横ばいの動きで、これが三角もちあいだ!」というように、より機械的にマーケットを分析しました。一方、ワイコフは「どうすれば、このパターンが暗示している知ることができるようになるのだろう?」、
 「マーケットが上昇し始める前に、それまで積み上げられた買い玉を振り落とすためにどんな動きを見せるのか研究してみよう!」、「そういう場面で出来高の動きに注意すればマーケットの動きが一時的なものであるか判断できるだろう」、「2日前のS&P 500 の出来高を見てみよう。 1220レベルを割り込んだときの出来高を。そして1218まで下落してきたとき、再び出来高を調べてみよう。全く出来てないじやないか!」ということを研究テーマとしました。直近安値を更新し、試しが入り、「振り落とし」作戦が見られ、さらに出来高が減少すると、下降局面が続くと思われがちですが、現実にはその後マーケットは反転し、上昇し始めるのです。そこで、スプリング、アップ・スラストなどのチャート・パターンを分類し、名前をつけてみようじやないか! フックなどのチャート・パターンをね。そうすれば、チャート・パターンから将来の動きを予測することが可能になるのでは?」。このようにワイコフはチャート・パターンについて一歩踏み込んだ研究を行ったのです。
 時代が若干異なるため、これまで紹介してきた人達と同じグループに属しているとは言えませんが、最後にエリオットを紹介したいと思います。ご存知のように「エリオット波動理論」で有名なあのエリオットです。この理論は、実はもともと「エリオット波動理論」などとは呼ばれていませんでした。エリオットは「波動にもパターンは現れる」というコンセプトを発見したのです。いいですか、チャート・パターンだけではなく、「波動にもパターンは現れ、そのパターンは何度も繰り返し現れる」ということを言ったのです。エリオットは「第3波、いわゆる大きな上昇波が現れた。これから下落局面を迎え、再び高値更新を試すことになるだろう」というコンセプトを世間に広めたのです。
 ドッグ・テール、ハンギング・クラブなどがワイコフ・シークエンスと呼ばれるもので、クライマックス・パターンが現れた後に再び上昇し、高値更新を試すことになるのです。
 エリオットの研究の中で、私自身が最も重要性が高いと考えている法則は、「インパルス(衝撃波)」のコンセプトです。私はこのインパルスをかなり利用しています。インパルスはトレンドの方向に沿って現れます。繰り返しますが、こういったコンセプトはすべて単純で当然のことのように聞こえるでしょう。しかし、自分でマーケットを分析し、実際にトレードしてみれば、「マーケットはどうしてこういった動きをするのだろう?」ということをコンセプト的に捉えようとしている自分に気付くことでしょう。「なぜ大豆相場で受渡通知日初日に振り落としが見られたのだろう? その後一時的にマーケットは上昇することになるのに、なぜ再び安値更新を試す展開になったのだろう?」という考え方をするようになるのです。これが我々のトレーディングを磨いていくことになるのです。もし日足チャートを使っているのであれば、マーケットの基本的な構造を理解しないことには、同じチャート・パターンを5分チャートや30分チャートに適用することはできないのです。
 マーケットには役割とでも言うべきものがあります。それぞれのミッション(使命)があります。私の知る限り、最も優秀なトレーダー達は「今日のマーケットの役割とは何だったのだろう?」という考え方をします。「今日もまた上昇し、高値更新を試す場面が見られたら?」「再び振り落としが見られ、下落したら?」「我々をじらすために横ばいの動きを続けるだろう。プレミアム・レベルがかなり高いことはVICS指標で確認できるからね」というように。このVICS指標はインプライド・ボラティリティーの高さを示す指標です。いいですか、普通トレーダーはマーケットが下落する場面を想定しプット・オプションを買い、逆に高値更新を予想する場面でコール・オプションを買います。しかし大きなレンジの中で推移し続けているとします。結果として、プレミアム・レベルが下落するまでマーケットは横ばいの動きを継続し、トレーダー達を“じらす”のです。
 ですから皆さんは「今現在マーケットにはどのような役割があるのだろう?」「今現在のマーケットのミッションは何だろう?」という考え方を常にしている必要があります。最近のようにマーケットがレンジ内で推移しているような場合、私自身がいつも興味深く感じることは、「マーケットのセンチメントはレンジの上限・下限で最も大きく振れやすい」ということです。新高値や新安値レベルに近づくにつれ、テンションが高まる要素があるのです。そこでトレーダー達は尚早にマーケットに対する見方を変えてしまうのです。マーケットに起きていることを理解しようとする時、テクニカル分析は最後の頼みの綱として我々を救ってくれるのです。
 これで我々は、マーケットの動きを理解する上で必要な基本的要素を学びました。「チャート・パターンの見方」、「マーケットの推移の仕方に注意すること」、「全体的な構造における現在のマーケットの位置」、「トレンドが発生しているかどうか」、「支持レベルの位置は?」、「抵抗レベルの位置は?」、週足チャートを見ているのであれば「週単位で見ると、現在のマーケットの位置は?」、またオシレーターが下降していれば「週足チャート上で第4波動にあたる調整局面に突入した」という考え方をすることも可能になりました。また、「トレーディング・レンジの様々なポイントで、センチメント・インディケーターがどのような動きをするか?」ということもわかりましたので、マーケットに働いている力を理解できるようになりました。こういったことはテクニカル分析におけるの基本的な原則ですが、何も皆さんの成功を約束するようなものではありません。では、何か言いたいかというと、「すべての情報は価格に織り込まれている」ということなのです。バー・チャートやテープなどの生データを分析することに習熟すれば、トレーダーとしても上達したと言えます。

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