1999-01-06

リンダ・ブラドフォード・ラシユキ、テクニカルを語る

 エリオットが指摘していることの二つ目は、トレーディングをする上で最終的に我々が克服しなければならないのは、人間のもろさ、自分の感情だということです。テクニカル分析の元祖4人は、人間の本質的な部分がトレーディングに影響を及ぼすということを指摘しています。徐々に身につけていくような後天的なものか、生まれた時から備わっている先天的なものかわかりませんが、我々には何よりも成功を重んじるという気質があるようです。ですから我々は常に自分の感情をチェックする必要があります。自分の感情に対する最も効果的な予防策は、事前にしっかりとトレード・プランを立てておくことです。これが最も効果的なセーフティー・ネットと言えます。トレード・プラン、売買プログラムなど、マーケットがクローズしている間に次のトレードに備えるために、何かしらの方法を確立しないことには、いずれ問題を抱えることになってしまうでしょう。皆さんがデイトレーダーで1分間チャートを基にスカルピングを行うとしても、事前にトレード・プランを練っておくことの重要性は何ら変りません。仮に私が1分間チャートのシステムを使い、スカルピングを行っているとしましょう。「ショート・スカート」と呼ばれるトレード方法を私自身が行っているとしましょう。そのような場合でも私は実際にトレードする前、マーケットがオープンする前に、そのトレードがどの程度の確率で成功するか予想することができます。例えば、30~40ポイントの大幅な動き、いわゆる「ワイド・レンジ・デー」が現れた場合、急激にレンジが拡大し、ブレイクアウトするような場合には、大抵翌日はその水準でもちあう可能性が高いのです。なぜなら、マーケットは「静」と「動」を繰り返す傾向があるからです。そうすると、先程話した戦略が上手く機能する確率は半減してしまうでしょう。仮に私が1分間チャートを基にスカルピングを行っているとしても、一日という時間枠で見たマーケットの構造を理解してさえいれば、このように確率を自分の側に引き寄せることができるのです。
 先程私は、「常に前進し続けること」の意義を説明しました。過去に起きたことはすべて水に流し、前進することができる能力の重要性について説明しました。だからこそ、大きな損失を回避できるストップ・ロス・オーダーを使うことが大切なのです。皆さんの口座そのものに及ぼす影響のことを問題にしているのではありません。頭の中に常にその記憶が残ってしまうことが問題なのです。一度でもこういった大きな損失を経験してしまうと、精神的に大きなショックを受け、次にトレードする時に恐怖心を抱いてしまい、本来のトレードができなくなってしまうのです。そうなると、もはやトレーディングで生計を立てるということは困難になってしまいます。
 元祖3人(4人?)は三つの基本原則を作りました。第一に「オーバー(過剰に)トレードするな」ということです。このオーバートレードとは、単にトレードする回数で決まるものではありません。 1日に10回トレードすることイコール「オーバートレード」とはならないのです。1日に10回トレードしたいのであれば、それ自体に問題はありません。要するに、オーバートレードとは「レバレッジ」の問題なのです。私は今までプロのトレーダーとして19年の歳月を過ごしてきました。その間に失敗していったトレーダー、フロアー・トレーダー、CTA、その他のトレーダー達の99%はそのレバレッジが原因でした。
 いいですか、5万ドルの口座でS&P 500 を10枚も建玉するようなことが問題なのです。またはアウト・オブ・ザ・マネーのプット・オプションを売ること。皆さんが大きなファンドの運用担当者と仮定して、かなりの量のアウト・オブ・ザ・マネーのプット・オプションを売るとしますね。そこで、そのポジションをクローズしなければならない局面が訪れたとします。そんな場合でも流動性が乏しく、自分のポジションを仕切ることができないのであれば、大きな動きが現れ一気に破産してしまうような状況も考えられます。これが失敗の原因なのです。トレーディングで失敗する第一の原因は、レバレッジの問題なのです。
 皆さんも過去に被った最大の損失を調べることで、このようなリスクを把握することができます。その時のポジションの大きさを単純に枚数換算し、それまでに建玉した中で最も大きいポジションだったか調べてみると良いでしょう。そうすることで自分のトレーディングについてよく理解することが可能になるのです。いいですか、これをしっかりと頭に入れておいて下さいよ。
 私自身トレーディングにおいて堅守していることは、トレードする枚数を1単位として決めていることです。常にX枚数を建てるのです。これだけです。このX枚数を常に建玉するのです。これはコーンでも財務省債権でも同じです。X枚数と事前に決めておくことで、トレーディングをシンプルにすることができます。私はこのX枚数を変えるようなことはしません。そのためトラブルに見舞われることを回避できます。最終的にトレーディングで失敗する原因はレバレッジの問題だということを忘れないでください。1枚の建玉に対して、10ポイント逆に動いてしまったということが問題なのではありません。それで皆さんが破産してしまうようなことはありえません。
 二番目に「ナンピンをするな」ということです。私は10年間これをやり続けていました。でもそこから抜け出すことに成功したのです。これは救いがたい習慣です。こんなことをしなければ、私はこれまでにもっと利益を積み上げることができたでしょう。しかし、「ナンピン」という悪習を改めたことは、ここ6年間で私が最も自慢できることです。いったん建玉したら、そのトレードが上手くいくどうかに関わらず維持することが大切です。そして、そのポジションに利益が乗り始めたら、ポジションと同じ方向にのみスカルピングを試みるのです。しかし、ナンピンするようなことは絶対避けなければなりません。これが第二の点ですが、すでに1900年代の人達に指摘されていることです。
 第三に、私のように話し続け、「他人の意見に耳を傾けるな」ということです。皆さんが自分のデスクに座り、親友や営業マンと電話で話したり、CNBC(経済専門のテレビ番組)を観たとしても、、、。何人かの人達がうなずいていますね、、、。 自分の分析に自信を持つのは難しいですよね。また、自分の方法が間違っていると気付くことも難しいですよね。我々は自分のポジションを正当化するために色々な理由や要因を探し出そうとしますからね。ですから、自分自身の考えでトレードすることを学はなければならないのです。何も自己研鎮という観点からどなたかのセミナー・コースを受講したり、ニュース・レターを購読することが悪いと言っているわけではありません。例えば、建玉するためのシグナルについて学ぶというようなことは全く問題ありません。
 こんなことをするのは私が初めてかもしれませんが、、、。皆さんのテーブルの上に我々が現在行っていることについて書かれたものがありますね。それはインターネットやアンケート調査の類のものですが、、、。実際私がトレードする際に注意しているシグナルが書かれています。また、こんなこと聞いたこともないかもしれませんが、皆さんの最終的な目標ということについて言いますと、「まずひと月程マーケットを観察する。そして最終的には自分で試みる」ということです。自分でトレードし、他人の考えに乗ってトレードしないということが大切なのです。独立したトレーダーとして生きていく術を学ぶ必要があるのです。今週末このコンファレンスで学んだことを自分で組み合わせたり、御自身で開発した売買プログラムなどに少し修正を加えるのです。そして自分自身のプログラムとし、自分だけのビジネスを確立すること、このゲームを行う上で自分が採るゲーム・プランを構築し、ルールを決めるのです。そこで自分の手法に対して満足することが大切なのです。これがこのビジネスで最も大きな成功をもたらしてくれるからです。
 建玉するためのシグナルを見つけ出し、実際にトレードし、上手くいくと、本当に満足できることでしょう。また、仮に資金管理を上手く行ったにもかかわらず、そのトレード方法が上手くいかなったとします。そんな場合でも、その事実を自分自身で確認できたことにより、「よし、この方法を利用するのはやめよう!」という結論に至ることができるのです。そして、毎日どのような結果に終わろうとも、儲けようが損しようが、自分自身に対して「今日はよくやった」と思えるようになるでしょう。これがこのゲームの目的だと言えます。この原則はシステム・トレーディングを行うことと基本的には同じことです。もしシステム・トレーディングを行っているのであれば、ある特定の日に儲けたか損したかということは問題ではないのです。そのシステム、そのルールに沿ってトレードしたかどうかが問題なのです。
 もし「やるべきことはしっかりやった」と言いきれるのであれば、仮にある日のトレードで結果が伴わなくても「やるべきことはすべてやった」という満足感に浸ることができるはずです。これはディスクレッショナリー・トレーダーの場合でも同じことです。

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