1998-01-04

林輝太郎・ダイワフューチャーズ講演

4.ホンネは嘘と思われる 

 とにかく、我々の周りには相場についていろいろな考え方を持ち、いろいろなやり方をやっている人が沢山いるけれども、先程申し上げた『絶対損する』という種類の人が圧倒的に多い。そのような人達は、自分を信じ込んでいるものだから、こちらがいくら本音を言っても「ウソだろう」と言って人の話を聞こうともしない。
 お配りした資料③の中に、林輝太郎投資研究所の会員の話が書かれています。その人はフランス料理のシェフなのですが、今から十数年前、テレビのお料理番組に出たことがあります。その人はテレビに慣れていなかったものですから、うっかりプロの本音を言ってしまったのです。そうしたら「あのインチキ先生を降ろせ」という投書がワンサカきたそうです。それで、その人は腐ってしまって、その後は段々慣れてくるにしたがって、そういう程度の低い人が理解できるような嘘をテレビで言うようになってしまった。そして、とうとうテレビを降りてしまった。嘘を言わないと理解されない。本音を言えば言うほど嘘と思われる。そんな世界で嘘を言っている白分か嫌で嫌でしょうがなくなったんですね。
 この壇上でも、私が皆さんに「なるほど」と納得するような嘘を喋れば、皆さん喜んで帰るでしょう。しかし、私は本音を言う。私の言う本音とは、一般投資家の欠点とか、そういう欠点を指摘するようなことですから、皆さんには聞き苦しいかもしれない。
 例えば、先程私は『ここは絶対だ!という時でも玉を多くしない』というお話をしました。「それはお前さんは絶対と言っているけれど、他人から冷たく見れば、確率二分の一だよ」「お前さんが絶対と言っているけれど、それは一人よがりなんだよ」と言われれば、「そんなことはない。需給はこうこう、相場はこうこう、ここは絶対に取れるんだ」と反論したくなる。ところが、現実には上手くいかない。やはり、1000万円近くまで儲けても、損して減らしてしまう。また、1000万円近くになっては、損する。このような事を繰り返していたわけです。当時私は、自分のどこが悪いんだと思っていた時だったから、そういう偉い相場師に言われて「なるほど!」と納得したから良いですけれど、その時「どうして1千万円を越えないんだろう」と思っていなかったら「何を言ってやがる!このじじぃ」と言っていたと思います。
『どうしても納得できない』という気持ちだけは仕方がないんですよね。テレビで、碁や将棋の解説をやっていますよね。私の碁の腕は9級で一番下ですから、9級なりの理解しか出来ない。ところが初段の人は初段なりの理解をするでしょう。私の研究所の会員で6段(碁)の人がいまして、日本アマチュア選手権でチヤンピオンになった程の人ですが、その人が「どうすればいいのか?」と間きに来たことがありまして、私は「あなたが初段になったころを考えなさい。同じことを何回も繰り返したでしょう。定石の本を100冊読んだって駄目だったでしょう。盤に並べてみなければ駄目だったでしょう。」と言いました。すると、その人は「わかった」と言って、それからその人は上手になりました。このように受入態勢があればいいのですが、大抵の人は受入態勢がない。私は建前論が嫌いですから、本音を言います。殊に私の本を読んでわざわざ会社や自宅に訪ねてきた人には、建前論を言いたくないから本音を言います。しかし、ほとんど理解してもらえません。理解してくれるのは大体2割位です。
 それから、私の周りにも相場で生活している人がいますが、もし、そういう人に教えを受けても最初のうちは理解できない。大抵の人は「ウソだろう」と思ってしまうからです。誰にも騙されていないのに、自分で勝手に騙されたと勘違いしているんですね。または、自分で失敗しているのに、誰かに騙されたから失敗したんだと思い込んでいる。そのように、今まで自分を偽ってきた。だから、人の話を信じようとせず「コイツもまた俺を駒すんだろう」と疑うようになっちやうんです。
 情報とか統計、または新聞とかいろいろな情報があって、普通、フアンダメンタルズやテクニカルズに分けますけれど、とにかくたくさん読んでみるのがよい。相場というのは、マネーゲームです。トランプゲームやじやんけんゲームとは違い、遥かに単純です。売りと買いしかないからです。ところが『資金との関係』とか『玉の限月毎の配分』とか、或いは『王を建て、維持し、玉を増減させ、そして、それを手仕舞ってゼロにする』それだけの過程を考えると、単純だが簡単ではない。それなのに一般の人は「当てりやいいだろう」と簡単なことのように言います。もちろん当てればいいですけれど「(なかなか)当たらない」と言っている。もう40年間やっているプロのベテランが予測しようが、今日始めたばかりのアマチュアが予測しようが、相場の予測の確率は全く同じで『二分の一』なのです。それを絶対に超すことはありません。
 例えば、計算はちょっと複雑だが、パソコンでやればすぐ出るRSI(相対力指数)やRCI(順位相関係数)等のいろいろな指標かおりますが、この指標に従って売買シミュレーションをしてみると、あまりにも当たるので驚きます。ところが、それで財産を残した人はいない。何故か?このような指標というのは、実際の値段ではないからです。まず、指数や実際の値段をアレンジした移動平切線のような別の値段を造る。そして、その指数や値段を見ながら売買をするわけですが、売買するのは実際の値段です。こういった売買の仕方を間接法と言います。つまり、先程『ギャンブラーの誤謬』の話でも触れましたが、確率が落ちるわけです。それも驚くほど落ちる。それで、儲かる人が少ないわけです。
 先程申し上げたように、こういうのを講演会でもらうことはほとんど無いと思います。もし、今後、皆さんがダイワフューチャーズの先物情報クラブで何か主題を決めて討論をする機会があれば、この中のどの項目でもいいですから、その主題を決める時に使って下さい。「果たして、林の言っていたことは本当なのか?」「俺はこの点が違うと思う」「俺は本当だと思うけど、この点に関してはちょっとあやふやじやないか」といったように議論をするためにこれを作りましたから、是非皆さん議論して下さい。

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