1998-01-08

林輝太郎・ダイワフューチャーズ講演

8.確実な利益を積み重ねる

 去年の6月の講演会(先物情報クラブのセミナー)で、皆さんには「一般の人の間違った考え方」のお話をしました。一般の人の間違った考え方というのは、例えば『今、資金が500万円しかない。だから-一応の目標は5000万円とする。5000万円になるまでは「仕手株」とか「値勣きの激しい商品」とかを選んで取引をし、多少の危険はあるけれ何か早く目標を達成しよう。その目標を達成したら、『その内の1割くらいの1000万円は、危ないス リルのある株でもやってみよう』といったようなことです。まあ、これ はまだマシな方だが、もっと良いのは最初から確実な利益を積み重ねていくことです。だから、先程のような『とにかく目標の1億円を達成するまでは、多少危ない橋を渡っても早く達成しよう』ということでは間違いなんです。
  一番バカなのは「とにかく目標の1億円を達成するまでは、多少危ない橋を渡っても早く達成しよう」「そうじゃなきや、相場をやっている意味が無い」といろいろやる人です。その次に馬鹿なのは「目標の1億円を達成したら、1割位は危ない株でもやってみよう」と思っている人です。
  コツコツと1億円を達成した人の中で「そうか!相場というのはバクチではない」「経済行為であるから、そんなにポロ儲けができるわけがない。危ない相場をやろうと思ったのはやめた」「これからもコツコツとやっていこう」というような相場のコツを会得した人は、1000万円が年間3割増えていったとして、9年で1億円になる。ところが、1億円から10億円になるのには、不思議なことに9年かからない。もちろん、もったいない位お金を余らせての話ですよ。そして、利益率は資金全体に対して計算するんですよ。この世界はとても皮肉にできていて、お金のある人ほど儲かる。お金が無くてガツガツ儲けようという人ほど損してしまう。
  とにかく先程申し上げた三つの管理『資金管理、建玉管理、危機管理』これらが大切です。この中の危機管理というものについて少し詳しくお話します。危機管理には二種類あります。一つは『火の用心』の危機管理です。あらかじめ危機に陥らないように管理を万全にしておくものです。もう一つは『初期の消火』の危機管理です。ボヤのうちに消し止めるということです。玉を建てて失敗したかなと思った時点で仕切る。
 精神的には、もう普通の状態ではなくなるのだから、焦れば焦るほど結果は悪くなる。ところが失敗したかなという感覚が身につくまでには、ある程度の経験が必要なんです。先程申し上げた単純な売買を何度も何度も繰り返しているうちに、いわゆる変動感覚というのが身についてくるからです。
 お配りした資格の中に『一体、目場の上手・下手は何で決まるのか』ということが書かれています。売買技法と作戦と言う人がいます。これはさっきのゴルフと同じことです。私は相場技術論者ですから、売買技法と変動感覚が必要と言います。ピアノなども同じで、ピアノを弾く時には、指使いの技術とそれから音感が必要です。この場合の音感は絶対音感ではなくて、普通の音楽感覚という意味の音感です。これを相場にあてはめると、相場技法とヨミという人もいます。どちらにしても先程のゴルフの話のような技術と作戦のことです。
 我々の目的は、相場の評論家になる事ではない。価格変動の波に乗る事ですから、それ以外の事はやる必要はない。例えば、定年になったら第二の人生を相場で過ごそうと考えている人がいるとします。定年前から準備をしておいて、定年になったら相場一筋でやって行こうと考えている人のことです。相場が好きで、そういった人が結構いるんですよね。その場合、その人は商品会社の店頭には絶対行かない方が良い。店頭に行くと各商品銘柄の値段が示してある電光掲示板がありますが「その前にいる人は儲からない」とよく言われてるんです。電光掲示板が悪いんじやなくて、雰囲気に巻き込まれちやうんですよ。だから、朝起きたら新聞で場帖をつけて、グラフを描いてみて、それで今日は玉を動かすべきかどうかを5分考えれば良い。そうすると、後は1日中仕事が無い。売買伝票が来た場合はそれを玉帖につけますけれども、それ以外の時は仕事が無い。グラフ描いたり、資料を整理したり、それから趣味でいろいろな事をする人はいいですけれど、そうでない人は暇でしょうがない。
 こんな話がありました。暇でしょうがないから、朝から酒飲んじやって胃を悪くした人がいます。それで、その人が「どうしたらいいのか?」と相談に来たことがあります。「あんた、何か習いごとでもしたらどうか?」と聞いてみたら「尺ハが好きだ」と言うので、実際に尺八を習い初めた。そしてようやく胃が治ったそうです。
 何を申し上げたいかというと、意外に相場というのは時間が少なくて済むということです。相場なんて、考えたらキリがない。先程申し上げた『月曜日に新規売買をしない』というのもこの事を言っているのです。土曜日・日曜日に大きく引かされた玉を持って「ああでもない、こうでもない」と考える。或いは、その相場の動向が心配で「どうしよう。買うべきか、売るべきか」と考える。土曜日曜と考えに考え技いた挙げ句、月曜に最悪の手を打ってしまう。それを避けるために、「月曜日に新規の売買をするな」と言うんです。とにかく、考えたってどうにもなるもんじやないんだから、それなら考えない方が良い。

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