1998-01-06

林輝太郎・ダイワフューチャーズ講演

6.心理的に負けない

 次に進みます。皆さんの中で、ゴルフの上手な方がいると思います。ゴルフの上手・下手は何で決まるのか?球の打ち方の正確さ、それと作戦ですね。例えば、池がある。他を越すのか、それとも他の手前で球を止めるのか。そういうが球の運びとか作戦ですね。ところが、前提条件として球を確実に打てなければ、そこへ飛ばないんだから作戦を立てても無駄でしょう。
 ゴルフは、まず確実に球を打つこと。芯に当てるって言いますが、このクラブの重心に球を当てることが大切です。例えば、皆さんがゴルフを正式に習いに行くと、プロに習うわけですが、そうすると単純なことから教えられますね。これは、ゴルフに限らず何でもそうです。単純なことを何度も何度も繰り返す。飽きるほど繰り返す。例えば、5番アイアンというのがありますが「5番アイアン一本で1目300発球を打ちなさい。そして、それを3ケ月間続けなさい」と言われる。そうすると嫌になってくる。 5番アイアン一本じゃつまらない。もっと長いドライバーで打ちたい。ところが、5番アイアンー本だけ打っているうちに、確実に球を打てるように-これを捕まえると言いますが一捕らえられるようになる。それで初めて『池の手前に止めようか』『池を越そうか』の作戦が立てられる。
 ところが不思議なことに、相場においては、まず作戦を立てる。玉を建てられないクセに作戦だけ立てる。これは、本末転倒だ。これは、皆さん良く解るでしょう。先程ゴルフの喩えで申し上げたように、作戦というものは基礎を身につけてから立てるものである。
 売買をするということやマネーゲームというのは、トランプゲームやジャンケンよりも遥かに単純だけれども簡単ではない。玉の建て始め、玉の増やし方・減らし方、限月毎の玉の配分、そして最終的に玉をゼロにするという過程が何段階もあるのですから、作戦を立てるのは簡単なことを繰り返し繰返しやって基礎を身につけてからすれば良い。これは当然のことなのに、皆さんそれをやらない。
 前に、会報(林投資研究所の会員向け)で、小豆の相場で生活し、そして5億円の資産をつくった人を紹介した。その人は、商品会社に3000万円預けてある。ところが、玉を建てても最高30枚までしか建てない。今、小豆の証拠金は1枚あたり6万円だが、約10万円と計算しても30枚分で300万円。つまり、預け金の9割が遊んでいる。余っている。そうなると「もったいない」「もっと玉を建てりゃいいのに」と思うかもしれないが、そうじゃない。それだけ余裕を持っているから、心理的に負けることなく儲けられるのだ。
 自分のことを言えば、私は小豆を散々やりましたが、一番最高に建て九時で320枚くらいでした。その時ちょうど相場が上がっていて、儲かっていた。道行く人が馬鹿に見えた。 ところが、東京駅から帰りの電車に乗った時、ふと表を見たら何か景色が違うんです。新しい建築工事が始まったんだろうと思ってましたが、実は反対方向の電車に乗っていたんです。それに気がついたのは10分後だった。私はその時儲かってたんですよ。儲かっている時でさえ、そんなもんだ。もし、逆に引かされていたら、精神的に正常な状態でいられない。だから、とにかくそういう悪い玉(引かされた玉)を持ってはいけない。
 お配りした資料にも3つの管理一資金管理、建玉管理、危機管理-について書いてある。資金管理は、今言った精神的に負担にならないように玉を建てること。建玉管理というのは、どういうふうに玉を動かしていったら良いかということ。例えば、朝、新聞が来たら、それで場帖をつけてグラフを描く。                         あんなグラフ(注:壇上のホワイトボードに貼り付けた、今日の参加者の方が手描きした折れ線グラフ)ですね。これは小豆のグラフで、10年ぐらい描いて巻いてあります。
 少し話が変わりますが、小豆に関する話で、大正12年、小樽に雑穀取引所というのが出来まして、当時は農産物の取引が盛んに行われたものです。その名残なのか、今でも小樽の町には、小豆御殿というのが幾つもある。一つは、現物の小豆で儲かった人、ポロ儲けした人の御殿です。
 第一次大戦の頃、ドイツ軍がロシアに攻め込んだ時、新鮮な野菜が無かったので兵隊達は脚気(かっけ)になって動けなくなってしまった。そこで、当時はまだビタミンが発見されていなかったので、世界中の文献を取り寄せてみたところ、その中に「江戸患い」という項目があった。江戸時代、地方の人は粟(あわ)とか稗(ひえ)とか玄米を食べていましたが、江戸の人は白米を食べていた。白米は胚芽(はいが)が落ちますから、ビタミンBが不足して脚気になってしまう。それが「江戸患い」と言われていた。江戸患いを治すには、小豆を水煮にして食べるとよく効く。砂糖を入れるとビタミンが破壊されるので、砂糖を入れない水煮を食べていた。すぐ治るものだから「これだ!」というわけで、ドイツ軍は日本に来て、値段に構わず小豆を買って行った。 ドンドン値を吊り上げたから、小豆で大儲けできた。それで、今でも小樽の町には小豆御殿というのが残っている。それからもう一つは、小豆の定期相場で儲けた人の御殿がある今の小豆相場と同じです。これも小豆御殿と言います。私が、赤いダイヤの買い占めをやった頃です。買い占めといっても、その頃の私は若造ですから使い走りだったんですが、その赤いダイヤの頃、私は小樽に何度も行づてたんですが、戦前に雑穀取引所に勤務していた人に、小豆の成功者、つまり小豆のプロ、あるいは小豆で財産を残した人達を何人か紹介されてお会いしたことがある。
 小樽で小豆で生活していた人、小豆で財産つくった人に何人もお会いしましたが、皆さん言うことは決まっています。季節的な変動に注意しなさい。1年に1回収穫されるものだから、収穫される時が安いに決まっている。しかし、相場は早目に動くもので、普通は次の年の収穫直前が一番在庫が少ないはずなのに、その時には春の高値から下がって秋の安値というのが出来る。秋の安値は、平年作の時で9月26目。これは毎年決まっている。だから、9月26日に買えば馬鹿でも儲かる。ところが新聞を読むと、今年はもっと安値があるとか書いてあるから買えない。

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