2006-01-05

My Trading Life (26)

損切りで一番難しい点はなにか。まず例外なき厳しいルールを確立するということと、同時に、ストレスなくロスカットを実行するために、ルールを柔軟に応用すること。この2つを両立させることがもっとも難しいのではないかと僕は思う。ロスカットは自己処罰なので、どうしてもストレスになりやすいのだ。そして、心理的に追いつめられてしまうと、失敗トレードを繰り返しやすくなる。

もちろん、「それ以前」の問題として「損切りするなんて悔しくて私には出来ないんですぅ」とかいう問題もあるのだが、まあ、そういうレベルで悩んでいる人はさ、株なんてやってちゃいけないよ。八百屋で蕪でも買ってなさい。もう論外の存在だね。

さて、仮に含み損が6%で損切りをするというルールを決めたとしよう。相場が上げトレンドの時は、損切りする銘柄もあり、利益を膨らませていく銘柄もありで、おそらくある程度はうまく回転していくだろう。

しかし、下げトレンドの時は、どの銘柄も同じように下がるわけで、毎日毎日、損切りに次ぐ損切りを強いられることになるだろう。自分のポジションを毎日毎日切っていくという自己処罰の作業を、一つの銘柄も例外なく冷静に実行できる鉄のような意志を持っている人はそれほど多くはないだろう。

いや、下げトレンドでなくても、かなり強い上昇トレンドのさなかでも、相場の波に翻弄されて6%程度の含み損なら簡単に発生してしまう。それを避けたかったら、特に強い上昇トレンドの時は、例外的に含み損を例えば10%までは許容するというルールを加えなければいけなくなる。

しかし、そうなると、今度は、「普通の上昇トレンド」と「特に強い上昇トレンド」をきちんと定義する新たなルールが必要となってくるだろう。そうしないと、含み損が6%に近づいてくると、これは「特に強い上昇トレンド」なのだと自分に言い聞かせて、損切りをしない口実にしてしまうだろう。

また「特に強い上昇トレンド」の時に、あまりに緩いロスカットのルールを決めてしまうと、今度は相場の最終局面での急落場面で、それまでの利益を全部吐き出してしまいかねないような大きなロスを発生させてしまう恐れがある。

さらには、例外がいくつもあるルールを、確実に実行し続けることは、普通の人間の意志を持ってしては不可能だろう。「例外の多いルール」では予想外の事態に出くわしたとき、そうした事態を「ルールのさらなる例外」にしてしまい、つまり損切りの対象外にしてしまう恐れがあるのだ。

実際、その時までに丸善とソフトバンクという2つの銘柄を「ルールの例外」にしてしまったために、大きな損失を発生させてしまっていた。ロスカットに例外の銘柄を作ってはならない。

要するに、ロスカットのルールを厳格に磨き上げていこうとすればするほど、そのルールは無力化していくのだ。

「強い相場では少々の下落でも振り落とされない。しかし、大きなトレンドの転換に対しては出来るだけ速く逃げられる。」

そんな魔法のような手法があればいいのだが、もちろんあるはずもない。「過敏な指標」は、いわゆる「だまし」にも簡単に引っかかってしまうし、「鈍感な指標」が相場の転換を合図してくれるのは、取り返しがつかないくらいの損失がすでに発生してしまった後かもしれない。


それではどうすればいいのか。東洋エンジの相場のさなかで、ロスカットのアートは、自然に確立していった。

基本的な考え方は、ロスカットの厳格な枠はきちんと決めておいた上で、それを実際に実行する際には、ある程度の融通が利くように、ルーズな部分を多く残しておくということである。

仮に、「含み損が20万円を越えたら損切り」というルールを厳密守ることとする。この時、ロスカットを行う上で、確定損は考慮に入れない。

株価がうねりながらの上げトレンドの時は、緩んだら買い、吹いたら売りを繰り返す。利食いは、建玉値が低いものから順番に切っていく。そうすることによって、ロスカットのポイントは常に株価のすぐ近くに置いておくように心がける。

逆に一時的な押し目をだと思われるときは、今度は、建玉値が高い方から切っていく。つまり含み損が20万円に達しそうになる前に、含み益の発生しかけているポジションから先にカットすることで、ロスカットのポイントをあえて遠くに置くようにする。

どちらからカットするかはその時の相場環境を睨みながら、感覚的に判断する。

ルールは厳格に守らなければいけないし、また一方で柔軟にそれを応用しなければいけない。システマティックな基準を作りつつ、感覚的に判断をする部分も残す。規律と自由。厳格な規律を作らなくては相場では勝てないし、かといって自由の要素も残しておかないと、トレードはストレスしかもたらさなくなる。そうした相反する課題をどうやって満たしていけばいいのかが、だんだん分かってきた。


もう一つ大事なことは、そうやって、ある程度感覚的な判断を許容しながら、自分の中にある心の弱さや迷いを、客観的に眺めて、面白がって楽しむことですね。

「ほ〜ら、調子のってたっかいところ買っちゃったから、投げなきゃならなくなっちゃったじゃないの。上から順に切っていくしかないね」とか「ほほぅ、あえて、安いところからポジション外す気ですか。今回は意外と強気なんだね〜。大丈夫なのかい、そんな調子ぶっこいてて」とか、自分で自分にボケとツッコミを入れながら、心の動きを楽しむということです。

これが出来るようになると、トレーディングは気分的にはかなり楽になるね。


そうしたトレーディングの練習を東洋エンジのこの時の相場では思う存分やらせてもらった。
今思えば、この時の東洋エンジはそうしたトレーディングの練習の為の格好の練習台のような銘柄だった。

清春氏が買い煽りをした銘柄の中で、東洋エンジは唯一犠牲者のでなかった銘柄である。

清春氏は当初から目標株価を400円と置いていた。そして、株価が300円を越えると、掲示板の誰もいつのまにか買い煽りをしなくなった。高値圏での狂ったような買い煽りに乗せられて天井をつかんだ人はいなかったのである。

400円を手前にして、株価は円形の天井を付け、やがて下落を始めた。掲示板では、誰も東洋エンジについては語らなくなっていったが、僕は、当初の予定通り、最後に残った買いのポジションを損切りし、そして空売りに転じていった。

資産総額が1千万円を越えたのは、東洋エンジの空売りを行っていた最中だったと思う。

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