2009-04-19

たった1%の賃下げが99%を幸せにする、城繁幸

金融日記:たった1%の賃下げが99%を幸せにする、城繁幸 - livedoor Blog(ブログ)
日本の雇用問題を真摯に綴った一冊です。
分かりやすく日本の労働市場の問題点を浮き彫りにし、構造改革の必要性を説きます。

最近、何かと話題の格差ですけど、規制緩和や市場原理がその原因だと言う意見があります。
しかし、これはまったくのデタラメです。

ボリュームの点からは日本で一番おおきな格差である中高年正社員と若年非正規社員の格差は、実は市場原理が働かないから引き起こされているのです。
そして、それは日本経済の活力を奪い社会問題にもなっています。

日本の労働市場の一番の問題は同一労働同一賃金と言うマーケットメカニズムから見れば極めて当然のことが実現していないことです。
大企業の正社員があまりにもガチガチに法律で保護されているから、経営者はダメな正社員の給料を減らすことも首にすることもできません。
そのシワ寄せが派遣社員のような非正規労働者にすべて押し付けられているのです。

そして、最近の派遣社員の大量解雇に伴い、会社が社員を解雇できないようにますます規制を強くしようとする意見があります。
これこそ本当に欺瞞に満ち溢れた間違った考え方です。
そんなことしたら大企業はますます日本での正社員の雇用を抑制して、国内の空洞化を加速させるだけです。
その結果、派遣社員よりも何倍も悲惨な失業者が日本にあふれかえるのです。

そもそも派遣社員と言うこの日本で問題になっている雇用形態は、コストの面で見れば企業にとってそんなにいいものではありません。
なぜなら派遣会社にかなりピンはねされからです。
手取り20万円の派遣社員を雇うのに企業は50万円ぐらい負担しないといけません。
ピンはね分が高いからです。
それでもなぜ派遣社員を使うかと言うと景気が悪くなったときに簡単に解雇できるからです。
企業は派遣社員を使うことによって人件費を変動費にすることが出来るのです。
そのためには少々割高な費用も割に合うわけです。

しかし、派遣社員にとってはたまったものではありません。
景気が悪くなったら雇用調整に使われるし、普段は派遣会社に給料はピンはねされて自分の手取りは安いままだからです。

それでは派遣社員を法律で禁止したらどうなるでしょうか?
会社はますます正社員の採用を躊躇するようになります。
ダメな人を雇っても解雇できないなら莫大なコストになります。
そして法律が変更されて派遣社員が禁止されたり派遣社員の雇用規制が始まる前に、派遣社員の駆け込み解雇が行われるでしょう。

その結果、派遣社員はその何倍も悲惨な失業者になります。
会社は正社員の採用に慎重になるので、今いる少数の正社員で仕事を回すことになります。
すると社会は忙しすぎて死にそうな正社員と、貧しくて死にそうな失業者に二分されていくのです。
経済にとってこんなに効率の悪いことはありません。

だから派遣社員を規制しても何も問題は解決しません。
正規社員も含めて日本の雇用を流動化させることが極めて大切なのです。
「給料の何か月分払えば会社都合で解雇できる」みたいな分かりやすいルールを法制化して、解雇された正社員の失業保険や職業訓練などのセーフティーネットを手厚くするのが急務なのです。

しかし、こんなまともな意見はなかなかテレビや新聞から聞くことは出来ません。
なぜなら大手マスコミのサラリーマンがこの社会の歪みから最も大きな恩恵を受けている人たちだからです。

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