2009-04-15

池尾和人

「わたしたちが不況の原因を正確に診断できないのはなぜか」~池尾和人・慶応大学教授に聞く(下)|辻広雅文 プリズム+one|ダイヤモンド・オンライン
単に需要を付けるだけだと、その場しのぎにしかならなず、生産性向上、供給能力の強化には役に立たない。財政刺激をやめると、元の木阿弥になってしまう。むしろ農業にしろ小売業にしろ金融業にしろ、その虚弱体質は、政府による長年の参入規制、過保護政策に原因がある。規制改革を進め、競争を促進しなければ問題の根本的解決にならないことは、明白だ。

 多くの人々――政治家にも官僚にもジャーナリストにも、日本経済は輸出型の製造業が主力だという思い込みがあるのではないか。だが、GDPに占める輸出の比率は15%に過ぎない。また、就労人口のおよそ80%は、それ以外の産業に属している。輸出型の製造業で働く者は、関連産業も含めて20%程度だろう。日本経済の主体は、それ以外産業である。つまり、日本経済の決定的な病根は、サービス産業を中心とした“それ以外の産業の低生産性”にある。ここのメスを入れなければ、病状の回復はありえない。

「わたしたちが不況の原因を正確に診断できないのはなぜか」~池尾和人・慶応大学教授に聞く(下)|辻広雅文 プリズム+one|ダイヤモンド・オンライン
今回の経済対策も、もちろんフリーランチではなく、将来世代に負担を強いることになる。しかし、そうした負担を残すことに対する「後ろめたさ」のようなものすら、いまの日本社会にはみられない。

 将来世代に負担をかけることになるという自覚がしっかりとあれば、その経済対策によって日本経済の潜在成長率を高め、将来世代にも恩恵を及ぼすことができるようになるかどうかについて、真剣に考慮するはずだ。ところが、コストについては考えないような思考枠組みに囚われてしまっているので、潜在成長率を高めることになるかなどという「長期の」問題には関心を示さず、目先の便益さえあればよいということになってしまう。

 こうした経済政策運営が続くならば、仮に現在の不況から脱却できたとしても、いま生きている者たちがみな死んでしまう将来においても生きているはずの若者や、これからこの国に生まれてくる者たちが不幸になるのは必至だというしかない。

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