2008-09-02

JREITの洞察 分野別

JREITの洞察 分野別
分野別見通し
オフィス系 
2008年8月末現在、一部のオフィスはバリュー状態になってきています。但し、新興系を中心に破綻懸念もあるので、母体の“筋”には留意します。JREITは通常の不動産出資証券(不動産会社の株式を含む)と比べ、自己資本比率が高い発行体が殆どなので、生存率は高いのですが、金繰りがつかなければ、債権者団に時価の○掛けで投売り(清算)されるのでPBR1倍割れとかで飛びつかないように。

 東京は、Aクラス物件は堅調ですが、Bクラス物件を組み入れているREITは要注意です。Bクラスの稼働率の低下はしばらく続きそうです。

 名古屋はきつい。もともと名古屋駅半径500Mより外は、栄とかの繁華街でもなければ10階以上のビルが珍しい地域だったのに、建設ラッシュになった。(オフィスではないのですが、マンションは特に増えたなあと感じます。)しかし、これらのビルには当てにしていたトヨタグループが入らなかったので、供給過剰による中期的な賃料低迷が心配です。

 大阪は半年以上、行っていないので良くわかりませんが、資料から見ると堅調ではないでしょう。北区再開発もありますので、供給懸念は頭が痛いです。梅田から難波、御堂筋から堺筋で囲まれた四角の地域以外は、苦戦しやすいです。環状線の物件は要注意。東京と人の流れが違います。例外は新大阪半径500M以内。東京企業の大阪支店として需要はありますのでAクラス物件は、前向きに私は評価しています。Bクラスは駄目。新大阪の雰囲気は、1時間歩けば分かると思います。

その他地方都市。物件次第。

住居系 
私には住居系REITの運営行動は理解しがたい面があります。住居系REITの基本構造として、例えば東京都の空室率17%(2005年住宅統計)という供給過剰。マンション貸は個人でも出来る参入障壁の低さ。転勤のサラリーマンなど利回りを重視しない貸し手の存在が懸念材料です。

一部のREITですが、築年数が長くなった場合の賃料下落を織り込まない運営計画(ブランド戦略とか言っていた運営会社もあった)。甘い修繕計画。主力物件の賃料を支払える世帯数がどれだけ居るのか。をIRで聞きますが、日本全体の世帯数が増加しますからとかでごまかして答えられない母体が多かった。

住居系REITは、配当率やPBRではお買い得に見えますが、買い占めて、借金肩代わりして長期間でほぐすつもりがないなら、今はおやめになったほうがよいでしょう。
なぜなら、借金返済能力を示す簿価CAPレートでは、まだ魅力はありません。

時価評価としては私もディスカウント状態と感じますのでイベント(買収期待)戦略は面白いのですが、2008年は世界中でデレバレッジ(信用収縮)中なので、仕掛け時ではないし、破綻リスクはオフィス系より高い銘柄があるので、銘柄選択は要注意です。

不動産投資の代替としてなら、LTVが安定して低い、母体の資金調達能力が高いなどデフォルト懸念がない銘柄なら、ワンルームマンション投資などよりは、かなり有利です。
実は余力があれば、投資したい分野なのですが、高い保全率のリコースローンと競合してリスク・リターンで負けるので、指をくわえていろと言われています。
また住宅ローンやマンション開発業者への融資を手がけていると、同じファクターにリスクが集中するので、限定的になります。

商業系 
賃料が売り上げと連動する仕組になっていることがあり、売り上げが下がると自動的な賃料減に加え、賃料引き下げ交渉及び退去リスクが高まります。景気後退に一番弱く負のスパイラル構造を抱えているので、組み入れ物件の条件調査が必要です。

物流系
稼働状況が景気に大きく振らされます。中途半歩な物件は不稼動になりやすいので、要注意です。但し、一部の物流業者は、大規模な設備投資をしますので、容易に移転できません。そのような物流物件を組み込んだREITは美味しいと思っています。物流系は玄人じゃないと判断が困難です。

JREITの格付について
 R&Iの説明会に出たことがありますが、30歳そこそこの方が出てきて、不動産会社の分析を応用しています。母体の性質は大きな要因として織り込んでいませんと言っていました。ファンド運営で母体の運営能力や方針は大きなファクターなので、格付会社の格付は財務調達能力以外には指標にはなりません。格付会社もファンド格付をリターンの目安に使われるとは想定されていません。

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