2008-09-26

The Gartman Letter

虎年の獅子座日記帳から

(1) To Trade Successfully, Think Like Fundamentalists and Trade Like Technicians.

● 「取引で成功するには、ファンダメンタルズを知った上で、テクニカル分析に基づいて取引実行する事が大事」という事。相場の背景にあるファンダメンタルズを知らずに取引するのは自殺行為。また、テクニカル分析を理解しないで取引するのも無謀。この二つをミックスできてこそ、成功確率が上昇する、という考え方です。

● この業界にいると、アナリストの銘柄格付けが必ずしも実際の利益に結びつかないという経験は、嫌というほどあるはず。ただ、これはアナリストが悪いのではないのです。彼らの仕事は、ファンダメンタルズを分析する事で、利益を発生させることではなく(発生すればベストだけど)、さらに、テクニカル分析をする事ではないからです。一方、テクニカルだけが万能薬という訳でもないのは明らか。アナリストの意見を知った上で(ファンダメンタルズ)、相場の流れ/動きをテクニカルに分析し、チャンスを見つけて投資する、というのが成功への一番の近道だと考えています。

● 日本株に関しては、最近、ようやくファンダメンタルズ分析は充実してきましたが、まだテクニカル分析が不足しているように個人的には感じます。さらに、この二つの"混合度合い"については、その時々で、また銘柄毎に、比率が違うようにも考えています。

(2) Trade Like A Mercenary Guerrilla.

● 適当に訳しますと、「傭兵ゲリラのようにトレーディングせよ」って感じでしょうか。

● これだけでは、少し分かり難いのですが、要するにトレーディングとは、主義主張で戦うのではなく、傭兵のように、冷徹に結果だけを見据えて取引せよ、という事。さらに、常に優勢な方に加担し、また、考え方を変える事をいとわない(昨日まで"買い"と言っていても、あっという間に"売り"に変える度胸と迅速な決断が必要)。年金資金などの長期投資では少しニュアンスが違うと思いますが、それでも、考え方を一変させる度胸と迅速な決断力については、全く同じだと思います。

(3) The Objective Is Not To Buy Low And Sell High, But To Buy High And To Sell Higher.

● 「安く買って高く売るのを目標にするのではなく、高く買って、より高く売る事を目標にすべき」。

● 如何にもトレーディング的な見方ですが、確かにある真実を突いていると感じます。大体、どの水準が"安い"のかなんて、究極的には分からないし、同じくどこが"高い"かなんても分かりません。しかし、トレンドが見えているときには、ある程度の確率で、そのトレンドに沿ってトレーディングする事が出来る、と言うわけです。

(4) In Bull Market, We Can Only Be Long Or Neutral.

● 「上昇相場の中では、ロング(買い持ち)かニュートラル(中立)かしかありえない」。

● つまり、大きなトレンドに逆らうポジションは持つな、ってことです。もちろん、弱気相場であれば、売り持ちか中立かしかないわけです。第三者的立場から見ると、これは如何にも当然の事ですが、トレーダー/投資家は、いつもこの簡単な原理を忘れてしまう、とThe Gartman Letter は言っています。

(5) Markets Can Remain Illogical Far Longer Than We Can Remain Solvent.

● 「市場というものは、私たちが我慢できるよりもはるかに長い間、理論的に筋の通らない状態を継続する事がある」。さらに、The Gartman Letter いわく、「市場というものは、学者連中が考えるよりも、はるかに不効率が存在するのが事実」とも指摘しています。

● 光通信の相場なんて、その典型だったのでしょうね。皆が「おかしい」と思いつつも、時価総額が大きくなると持たざるを得なくなり、結局、買わされてしまった訳です。その買うための理由を無理やり探して買ったのが実状でしたから、ひどかったですね。その後の事は、皆さんも良くご存知の通りです。

(6) Sell Markets That Show The Greatest Signs Of Weakness. By Extension, Buy Those Markets That Show The Greatest Strength.

● 「最も弱さを見せている市場を売り、最も強さを示している市場を買うべき」。これもトレーディング的な見方ですが、私の経験から言っても真実です。市場は弱肉強食。"弱きをいじめ、強きにすりよる"態度が、利益への近道である事は間違いありません。二極化相場は、それが極端に強調された相場の典型です。

(7) Resist The Urge To Trade Against The Consensus Too Early.

● 「コンセンサスに逆らうトレードをあまりにも早く実行するのは、得策ではない」。これも私の経験からみてかなり真実。コンセンサスが正しいとは限らないのですが、コンセンサスに向かうトレーディングは、早過ぎると被害を被るばかりです。

● さらに、The Gartman Letter は、"Patience, rather than impatience, is far better when considering any trade"とも指摘しています。つまり、早過ぎるよりも、出遅れる方がはるかに良い、という事。これも言われてみると、本当に真実です。

(8) Try To Buy (or Sell) The First Day Of A Gap Higher (or Lower), For They Usually Indicate Violent New Buying (or Selling).

● 「"窓"が開いた時は、その初日にその方向に沿ってトレードする事。"窓"はかなりの確率で大きな動きを意味する」。これは、日本の罫線分析でも同じですね。"窓"が開くってことは、それなりの理由があるからです。

(9) Trading Runs In Cycles... Some Good, Most Bad.

● 「トレーディングには流れがある。良いときもあるが、ほとんどの時は駄目」。つまり、波に乗っているときは、大きなポジションを張り、積極的に攻めるべき。流れが合っていないと思うときは、控え目にするべき。当たり前の事ですが、往々にして逆になりがち。特に流れに合っていない時に、"一発勝負"とばかりに大きな玉を張り、そして自滅する事になる。

● 波に乗っているときは、ミスをしても利益が出るし、調子が悪いときは、どんなに慎重にやっても損が出る。The Gartman Letter いわく、"This is the nature of trading; understand it, accept it, and then move on." 確かにその通り…(^_^;)。

(10) Margin Calls Are The Market's Way Of Telling You That Your Analysis Is Wrong.

● 「追証は、市場が"あなたは間違っている"と告げているようなもの」。これも日米関係無く、商品に関係なく、非常に真実だと思います。厳しいことを言えば、追証が出るまで放置する方が間違い。何にせよ、追証が出るまで負けたと言う事は、そもそもの考え方が間違っていた証拠。損失を受け入れて、即刻ポジションを処分するのが鉄則中の鉄則。

(11) Never, Ever Under Any Circumstance Add To A Losing Position.

● 「絶対に、どんな状況下であっても、負けているポジションを増やすような取引をしてはいけない」。

● これも究極の真実です。日本の株式市場では、「やられナンピン、スカンピン」と言います。私が証券会社に入って、市場で場立ちをしていた時、尊敬する先輩から、一番最初に叩きこまれたのがこれ。絶対にナンピンはするな、という事でした。ナンピンをするという事は、最初のポジションが既に含み損になっている事。つまり、最初の考え方が間違っていたのに、自分で認めたくないために、ナンピンなんて事を考えるのです。間違った考え方の上に間違いを塗り重ねるのですから、スカンピンになるのは当然。

● 冷静に考えれば、誰でも簡単に分かるのに、実際にポジションを持ってしまうと、頭に血が上ってしまうのか、この真実が見えなくなってしまう様です。個人的には、ナンピンを勧めるような証券営業マンの言うことは、一切聞く必要がないと考えています。ナンピンを提案するのは、証券営業マンにとっては、負けを認めないですむ便宜(先送りみたいなもの)。本当に信頼できる証券営業マンは、たとえ彼が薦めた取引だったとしても、損切りを薦めることの出来る営業マンです。

● なお、勝っているポジションを増やすのは、時と場合によりますけど、正解の場合が多いと考えています。相場用語でいえば、これはナンピンとは言いません。通常、"乗せる"と言います。

(12) Respect "Outside Reversals" On The Charts After Extended Bull or Bear Runs.

● 「長い強気相場や弱気相場の後、現れる"Outside Reversals"には注意せよ」。

● この"Outside Reversals"というのは、日本語では"差込足"や"包み足"のような形です。つまり、強気相場の後、上値で寄り付いて、下値で引ける形を言います。トレンドが変化する兆しである場合が多く、これまでトレンドに沿って取引をしてきた場合は、ポジション動向に注意が必要ってこと。

● The Gartmen Letterでは、"We may not wish to move to the other side of the trade, but we must at minimum learn to avoid trading in the old trend's direction"としています。つまり、少なくとも古いトレンドに沿った取引は止めるべき、と。また、日足ベースよりも、週足、月足を重視するのもポイントです。

(13) Keep Your Technicals Systems Simple.

● 「テクニカル分析は、シンプルなものにしておく事」。これも単純ですが、重要なポイント。テクニカル分析は、凝りだすとキリがありません。そして凝ったシステムは、本当に重要な点を見落としてしまう欠陥の可能性を増大させます。

● よくネットなどで、"絶対に儲かるシステム"なんてのを見ますが、私個人は100%信じません。ピリオド!テクニカル分析というのは、柔道で言えば、せいぜい"技あり"程度。これが積み重なって"合わせ一本"となるものです。最初から"一本"てなのがあるならば、皆がそれで儲ける事になりますが、理論上、"皆が儲ける"なんてあり得ません。

● 複雑なテクニカル分析よりも、移動平均はこう言っている、MACDはこう示唆している・・・、などを積み上げて、人間の頭で判断して決断するのが本来の姿。これを進め過ぎると、かのロングターム・キャピタル(崩壊した有名なヘッジファンド)と同じ轍を踏むことになります。

(14) Respect And To Look Forward To The Very Normal 50-62% Retracements That Take Prices Back To Major Trends.

● 「上下動のなかで、トレンドを保持しながら出現する50-62%の押し(戻し)に注意せよ」。これは、特に初回のトレンドに付くのを失敗した場合、上げ幅の半値押し、62%押しなどに注意し、参戦機会を辛抱強く待て、と言う事です。実際の50-62%という額はもちろんの事、そこで止まってトレンドが保持されているかについても、注意が必要って事です。これは、日本株についても、同じような考え方がありますので、皆さんご存知ですよね!

(15) Understand That In Trading/Investing, An Understanding Of Mass Psychology Is Often More Important (And Many Times Is Far More Important) Than That Of Economics.

● 「トレーディングや投資において、大衆心理を理解することは、経済そのものを理解する事よりも、はるかに大事な事が多い」。

● 教科書と現場の違いとでも言うのでしょうか。これも私の経験から言っても真実。大衆心理というのは、時には実際経済論理をはるかに超える相場の動きを作り上げます。そして、それに逆らうのは無駄だし、自殺行為だって事。なぜ企業業績がこれだけ増益基調になっても現在の日本株は上がらないかって?大衆心理を考えれば、すぐにわかりますよね。

(16) Establish Initial Positions On Strength In Bull Markets (Or On Weakness In Bear Markets).

● 「最初のポジションは、強気相場の中で強いところを買いに行って作り、弱気相場では弱いところを売りに行って作る」。

● これもトレーディング的な考え方です。強い相場は押し目を買うのではなく、より強くなった所(例えば高値を抜いた所)を買いつくことによって、ポジションを作るということです。日本でもかつてこの考え方が主流だったのですが、機関投資家は長期投資という観点から、現在は、多少逆のやり方が多くなっています。機関投資家比率が高くなって、多少変わった面はあるのですが、しかし相場の真実(トレーディングという立場から見れば)は、変わりません。

● さらに、その後で積み上げるポジションについて、The Gartman Letter は、「二回目に追加するポジションは、最初と同じで強きを買う。しかし、その後はトレンドが保持されている限り、押し目買いが妥当」としています。売りであれば、この逆となります。

(17) Bear Markets Are More Violent Than Are Bull Markets.

● 「弱気相場は、強気相場よりも値動きが激しくなる」。これも真実ですね。上昇相場は、普通ジリジリと底値を切り上げるように動きますが、下落相場は通常は"急落相場"です。日本の相場でも、90年以降の数年の相場を思い起こせば、これは明らかですね。NASDAQでも、2000年春の値動きなんて、この典型だったでしょうか。

(18) Always And Everywhere Be Patient With Winning Trades, And Always And Everywhere Be Impatient With Losing Trades.

● 「勝っているポジションについては、常に何であれ、辛抱強く我慢するべき。逆に、負けているポジションについては、あきらめを早くすべき」。

● これも全く真実。私が株式市場に飛び込んだ初期、尊敬する先輩から教えられたことは、"儲けるのがうまいディーラーが生き残るでのではない。損切りがうまいディーラーが生き残る"って事。そして、"多くの投資家は、8勝2敗でチャラが精一杯。8勝2敗ならば凄い腕だが、大体において、利食いは小さく損切りは大きくなるから、トータルでは儲けられない"って事も。

● 一歩下がって考えてみると、あまりにも当然で単純ですが、相場に入ってしまうとそれが出来ないのです(^_^;)。

(19) Understand That The Market Is The Sum Total Of The Knowledge And Wisdom Of All Of Those Who Deal In It; We Dare No Argue With The Market's Wisdom.

● 「マーケットは、参加者全員の知識と能力の総合体である。それに逆らうのは得策とは言えない」。

(20) Finally, All Rules Are Meant To Be Broken.

● 「最後に、すべてのルールは、破られるためにある」。

● まぁ、これも頭の隅に入れておいたほうが良いでしょうね。ルールは破られるためにあり、絶対的なものではない、ってことです。マーケットは生き物。時に"常識破り"をする事があるってことです。だからルールを知っておくのは重要ですが、ルールに縛られるのは本意ではない、ってことですね。

 

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