2008-11-26

ブルベアファンド

投資信託の怪⑦(ブノレベアファンドの謎)

もう最後だから黙っておとなしくしてようかと思ったのだけれども、たまたま変なものをネット上で見てしまったので、毒舌モード半開でここに書く(笑)。 今回の題材は「ブルベアファソド」だ。 これは、あるインデックス(日経平均やダウなど)に一定倍率で常に連動するように設計されたファンドで、通常は先物などを利用して所定のエクスポージャーを取るようにこしらえられている。

この手のファンドは個人投資家の間でも普段は忘れ去られているのだが、昨今は投資信託しか買わない人は何を買ってもダメだったと言うので、これを薦める「専門家」とやらが最近たくさんいるのだとか...

私は、一般の投信の委託手数料が高いことを除けば、個人投資家の方が自分できちんと調べて状況を理解し、リスクを許容できると判断したのであれば、ロシア株ファンドを買おうが、南アフリカ債券ファンドを買おうが反対したりしない。 それによって儲かることも場合によっては十分ありうるし、どうせ投信を買うのなら、そういった、個人では個別の銘柄にアクセスしにくいアセットクラスのものでなければ意味がないからだ。

だが、日経平均だのS&Pだののブルベアファソドだけはいかなる理由があっても係りあいになってはいけない(ただし、お金が余ってしかたがなくて捨てたい人は別だが)。 ところで、なんでも件の「専門家」連中に言わせれば、ブルベアファソドはハイリスクハイリターンだが、方向性の読みが当たれば大きな利益があがる...らしい(^^;)。 正気か???

どこをどうしたら、こんな見当違いの妄言が吐けるのかわからないが、悪気なく言っているとしたら、原始人なみの無知なので絶対にそういった輩の話は信じないように。 そうでなければ悪質な確信犯なので絶対に係わり合いになってはいけない。 ...っていうか金融庁に通報すべきか(笑)。 

私がこれだけ止めておけという理由は、それが「ハイリスク」だからでも「読みが当たらない」からでもない。 そんなものは最初からわかっているし、同種の問題がある商品は他にいくらでもある。 私がブルベアファソドがダメだという理由はそのマネーマネージメントにある。

目論見書や約款を読めば書いてあるが、このブルベアファソドという商品は常にインデックスに対する一定倍率の連動性を維持するために、毎日リバランス(ポジションサイズの変更)をするのだ。 この点が、各種インデックスの先物を売ったり買ったりしたポジションをそのままに維持しておく場合と決定的に異なる。 

以前のエントリーでヒストグラムで示したリターンの確率密度分布のグラフを思い出してもらいたいが、株式市場において、この「毎日リバランス」は現在考えられる限りのマネーマネージメントのなかで最悪のもののひとつだ(>_<)。

わかりやすく言うと、このファンドは常に「高いところを買い、安いところを売る」という売買をご丁寧に毎日きめ細かく行なっていることになるのだ(大笑)。 これで儲かるチャンスがあると主張するのなら私の理解を超えている。 バカも休み休み言えってんだ! 常識がある人間ならこんなものは他人に薦めない。 今は下げ相場だから、設定来で利益が出ているベアファンドもあるにはある(ブルファンドは基準価額が10分の1くらいになっている(笑))。 しかし、それはこういった強烈に不利なハンディの後に残ったカスであるから、先物をショートしたほうがはるかによいし、途中で乗った投資家は下げ相場なのに損している人もいるはずだ。 

結局のところ、専門家とやらがいう「方向性を当てる」とは、「ほとんどもち合わないで一直線に上げるか下げるかという局面を事前に予測せよ」ということなのだ。 やれるものならやってみろ! >専門家

つまり、このブルベアファソドの本質は、「方向性を当てれば儲かるハイリスクハイリターン型の商品」なのではなくて、「世界最悪のマネーマネージメントによって、じわじわと真綿でクビを締められるように、資金をむしり取られていく商品」なのである。

リチャード・デニスと共にタートルズの師匠であったビル・エックハートが90年代の初めに次のように言っている↓。 
“It is one of the key asymmetric in trading that whereas good money management cannot convert negative expectation into positive, bad money management can turn a winning strategy into a losing one.”

これは本当にそのとおりであって、だから優れたエッジのあるトレード手法の開発と共に、所与の資金を如何に効率よく(あるいは大事にして)運用するのかということが、運用者にとって非常に重要な項目にいつも挙がられるのである。

世の中に出回っている投資信託の大多数は規定されたアセットを高位に組み込んでロングで保有するから、実質的にマネーマネージメントを意識することも、それの巧拙がパフォーマンスに影響することもほとんどない。 だから、投資信託をめぐる話の中でマネーマネージメントがキーになることは普通はない。 従ってこういったブルベアファソドのような特殊なファンドに関して、普通の投信しか買ったことのない個人投資家が、マネーマネージメントの欠陥を見抜くことは難しいかもしれない。

だが、ブルベアファソドはインデックスの(日々の)方向性というエッジのないものにベットし、そこから信託報酬が引かれるという、はじめから期待値がマイナスのトレードなのだ。 だから、そこに最悪のマネーマネージメントを加えれば、結果がどうなるのかぐらいのことは、ホンモノの「専門家」であれば一瞬でわかるはずだ。 そいつらがそれを知っててあえて他人に薦めているのか、それともほんとにその程度のことが理解できない単なる自称専門家なのかはわからないが、いずれにせよまともな人物ではあるまい(>_<)。

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