2008-10-17

スターリンショック

スターリン暴落 - トレードを科学する塾長

スターリン暴落1953年3月5日。

スターリンソ連首相)が重態に陥ったとの報道を機に、日経平均株価が前日比10%(37円81銭安)暴落した。このときの月足を見ると、2/4の高値から結局38%ほど下落して底となる。54年後の今日に下落幅を換算してみると、18300円(2/26)の高値から2ヶ月ほどかけて11346円にまで下落したことになる。次はこの暴落を体験した投資家の著作からの引用である。実体験した方でないと書けないリアリティに満ちている。


とにかく、毎日毎日値下がりしてゆきました。

ちょうど三年前の大暴落と同じでした。もちろん、そのときはわかりませんし、望みを持ち続けたのです。それまでは、ケイ線で天井型が出たらすぐに売っていたのですが、そのときはどうして売れなかったのでしょうか。とうとう、「スターリン死亡」のニュースによる大暴落によって、トドメを刺されることになりました。その日は朝からストップ安ばかりです。買いものなしのストップですから、値がつかないままのヤリ気配です。証券会社の店先で気が狂った女の人がいたそうです。私も証券会社に行きましたが、そこの入口の脇にある鉢植えの植木につかまって立っている中年の男の人が、葉をむしって足もとに散らしていました。しかし、誰も目にとめません。それどころではないのです。そのうちに、その中年の男の人の足もとに水たまりができました。見るとズボンがびしょ濡れです。暴落の恐ろしさに小便をもらしてしまったのです。それを見ていた私には、見れるだけの余裕があったのでしょうが、気がつくと椅子のひじ掛けを握り締めていた手が離れません。指を一本一本離してようやく立ち上がったことを今でもはっきり覚えています。店頭にいるお客の顔は、みな死人と同じでした。

出典:立花義正『あなたも株のプロになれる』同友館p17-18


このような歴史事実から何を学べるか。

1:事態が進行している最中は、何が起こっているか分かっている人間は極めて少数であること。天井も底も、数ヶ月後から分かるもの。何故か。自分のポジションがあるからである。自分の都合の良い様に希望的観測をするのが、平均的トレーダーであるから。

2:スターリン暴落は半世紀以上も前のことであり、現代とは時代が異なると思う方へ。現代化された最新金融システムにおいてはこのようなクラッシュはないであろうと思われる方へ。

私は、航空機技術の発達と同じように考えている。航空機の初期においては、事故が起こっても、その規模は小さかったであったろう。しかし、技術進化すれば、一度に輸送できる人間は増えてゆく。一機あたりの事故率は飛躍的に減少しつつあろうが、一旦惨事が発生すれば、その規模は、過去とは比較にならない巨大なものとなる。

金融の世界でも、頻度は減少するが、規模は大きくなると思う。半世紀前に投資が出来る人間はある程度の資産家などごく限られていたであろう。しかし、現代は小学生でも参加できるように、金融システムが変容している。証券会社顧客獲得に生命線がかかっている。良くも悪くもその方向に世界は変化しつつある。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20061218/115873/

3:どの世界であれ、歴史から学ぼうとする意欲があれば、いくらでも宝を汲み取ることができる。このような事例を知ってトレードする者と、知らずしてトレードする者とは、参加手法が大きく異なってくるであろう。

4:クラッシュのないマーケットは想定できる。その条件は、全参加者の金銭欲がゼロになるマーケットである。

逆説を言っている訳ではない。ここにこそ、マーケットに参加していながらクラッシュに巻き込まれないどころか、それを利に変えられる極意がある。

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