2008-10-06

冷静な気持ちで考えてみた

冷静な気持ちで考えてみた①

7月13日にアメリカに対する見方を引き下げた。
週末の定点観測 : アメリカ② 日本型の低迷宣言(1) に書いたとおりだ。それまでも、『アメリカには当面投資は必要ない』という判断だったのだが、日本の90年型に一歩近づいて、経済が長期間低迷するリスクが増したと感じたのだ。

その背景の大きな部分は、日本型の低迷宣言(2) 要は、金が無い、、、これに尽きるで記載したとおり、『アメリカには資金が無い』という事実だ。

そして、昨夜、救済パッケージが拒絶された。
今週末までに修正したうえで、可決するといわれている。
しかし、この拒絶したという行為を持ってして、私は7月13日に続いて、もう一段アメリカを格下げする判断をした。

共和党議員の多数の反対票、民主党議員の予想以上の反対票、、、これらは、90年代の日本を覆った『金融機関バッシング』に近づくものだ。

大手のメディアがバッシングに加担していないので、まだ日本よりマシだ。しかし、アメリカの経営者にとってはショッキングな出来事だろう。
今後アメリカの企業経営者(=GDP、付加価値の創造のリーダー・シップ達)が萎縮することは間違いあるまい。
悲しいことだ。

コメントでは

LIBOR、、、観察し始めて、こんなに跳んでいるのは、初めてで驚きです。
北海道拓殖銀行や、山一證券に、working capitalを誰も融通しなくなった時の恐怖感と同じですね

LIBORの値が見られるサイトが紹介されていました。
FT.com - Markets Data - Bonds & Rates / Market Rates

冷静な気持ちで考えてみた②

証券市場(Wall Street)と、実体経済(Main Street)が、別々の世界で、前者は一部の金持ちだけのギャンブル場だという感情論、暴論を平気で言いふらす人がいる。
でも、現実は、証券市場と実態経済は表裏一体なのだ。
このブログに集う皆様は冷静に理解していらっしゃると思う。

でも、感情に支配されて、暴論を吐く人、それをはやして商売をしようというグループ、そんな動きを政治的に利用しようという団体も存在している。

今、証券市場は大火事になっている。
実体経済も不況になっている。(あとから<約3ヶ月遅れで>経済指標で知るのだが)
ちなみに、8月の日本のマクロ指標はひどかった。

大火事になっている証券市場の消化をしなければ、実体経済(=一般庶民の生活)の悪化もとまらない。
消化をして、処罰をする、、、それを急ぎ、厳しく実行するしかないと思う。


右図にあるように、二つの頭痛の種が存在している。
サブプライム問題=>信用収縮
商品高騰=>インフレ

インフレは不況の影響で収まりつつある。
信用収縮は、不況では止まらない。
金融の世界の正常化を実現するしかない。

正常化は、①過去の処理、②将来の対策、、の二つが必要だ。
①過去の処理=不良資産処理
②将来の対策=金融の過剰キャパ縮小

②は、金融機関の倒産、合併、人員整理という規模の縮小が粛々と進行している。
①は、不良資産を弱った企業から、市場価格で、強い企業が買い取らないと終わらない。


不良資産は2つある。
(1)住宅<実物資産>
(2)ローン債権<金融商品>
どちらも、現在の弱体所有者が保有している限り、金融も弱体したままだ。
彼らから、市場価格(=この値段で買えば、将来ソコソコ利益が出るという意味)で、引っぺがすしかない。

引っぺがすときに、損が出る。
損失に耐えられない金融機関は退出してもらうしかない。
退出とは、倒産、合併だ。

コメント欄では

日本だけの資産では、7月法案の8500億ドルの追加発行枠と今回の7000億ドルの追加発行枠は、消化できないのではないかと思います。
=>そうかもしれない。
そうなれば、、、、ドル札を刷って刷って刷りまくる => FRBがドル札刷って、米国債権を買う、、、という悪いシナリオへ向かいますね。

に対して5日午後
2000億ドルの米国債購入か=金融安定化支援で中国-香港紙
【香港5日時事】香港紙・明報は5日、中国政府が米国の金融安定化措置を支援するため、新たに2000億ドルの米国債を買い入れると伝えた。
 第1段階として700億-800億ドル分を購入する予定。この方針は既に米側へ伝えたという。中国の米国債保有高は日本に次いで多く、5000億ドル以上に達している。

というニュースがありました。

さらにコメントでmac_yさんから

流動性供給と資本拠出の効果
救済案が通ればほっとする銀行のひとつが資本不足とローンにまつわる訴訟にあえぐDowney.不良ローンを売却して肩の荷降ろせば,資本問題が解決すると。
仮に$1bnローンを譲渡@$1bnできれば,$80mnの資本が自由になり,$1bn貸せる余裕がでる.譲渡価値が@$700mnであれば,引当金が元本x30%積まれていれば損失は生じないが、引当不足であればその分が資本毀損する。実際よりも高く買えば、資本拠出と同じ効果となる.もし$700mnの資本注入したら,$300mn引当て,$400mnが追加出資となり,÷8%=$5bnの追加の貸付ができる。誰が考えたのか。これをしないと大変なことになる?何と非効率な金の使い方。

冷静な気持ちで考えてみた③

将来の金融の姿に関しての現在のコンセンサスは、
①規制が強化される
②借金レベレッジが抑制される

というものだ。

①は、自由奔放にやらせて、この10年で2回(今回と98年のLTCM)も大失敗をしでかしたわけだから、お灸をすえられて当然だ。

自由奔放=>適正な規制、、、だ。
適正=無茶をして他人(=実体経済)に迷惑をかけないような抑制措置だ。
②の借金レバレッジの抑制も、これと同一線上の動きだ。

そういう目で、現在のアメリカの金融機関救済パッケージの当初案から修正案への変更内容を見てみると、上記①、②の精神にのっとっていると感じる。

なお、私が興味深いと思ったのは、7000億ドル出す条件としての「金融機関のワラント取得」だ。
金を出す=Helpすること
ワラント取得=Helpした果実の享受


つまり、Help=投資と位置づけられているのだ。
過去は、Help=社会の安定のコストという位置づけだった。(=単純Bail Out)
しかし、今回はそんなコストはタダじゃあ負担しません、Help(=リスク・テイク)の見返りが必要です、、、となったのだ。
この点で、公的資金はWall Streetに対して対等な立場に近づいたのだと感じた。

冷静な気持ちで考えてみた④

金融業界というブラック・ホールが吸い込んだ金額

民間(SWF、奉加帳、PEファンド、バフェットやPIMCOなどの普通のファンド、、などなど)が、過去1年で$400bnも突っ込んだと、PIMCOのビル・グロースが述べている。

今回のアメリカの公的資金は、$700bn

両者をあわせると、約$1000bnだ。<約100兆円>
ちなみに、アメリカの住宅ローンの残高は、$10兆($10000bn、1000兆円)だ。
$1000bnは、$10兆の10%だ。

これは、ものすごい金額だ。

コメント欄では

商業用ビル、、、確かに怖いですね。
ただ、アメリカの場合は、リートがほとんどの商業用ビルの所有者です。
つまり、商業用不動産のリスクも、リートを通じて世界の投資家にばい菌のようにバラ撒かれているのです。
発病しなことを願いますが、、、、すでにクシャミは出ていると思います。

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