2008-10-10

大恐慌からの回復

【10秒で読む日経】2008/10/10

日経では、のんきに「個人消費が停滞するかも」と書いている。

 しかし、事実を辿れば、大恐慌から回復するのに、世界は第2次世界
 大戦という(経済学見地から見れば)べらぼうな額の公共投資を必要
 とした。ついでに多くの人命も。

 なぜ、大恐慌が長引いたかと言えば、銀行が経済に与える大きな役割を
 多くの人が理解せずに、銀行の苦境を放って置いたからだ。

 中央銀行が1万円といったお札を1枚刷っただけでも、銀行の存在に
 よって、この1万円は数十万円、数百万円に膨れ上がる。

 1万円を持った人は、全てをお札で持たずに銀行に預金する。
 その預金を銀行は他の人に貸し出す。

 借りた人は、それで設備などのものを買って使うが、金額が大きいと
 大抵銀行振込みで決済する。お札は銀行に残ったままだ。

 その設備の売り手もまた、経済活動を行っているから、受取ったお金を
 またモノを買うことに使う。しかし、そのときも、銀行振り込みで
 されるので、お札は動かない。

 こうして、経済活動が無限のループで続いていくが、お札は最初の
 1万円札のまま動かず銀行に残っている。

 一方で、銀行の預金残高が多くの口座で頻繁に動くことになる。
 こうした「お札が動かなくても沢山のお金が銀行の帳簿上のやりとりで
 動く」仕組みを熟知する銀行は、当初の1万円の預金を基に、1万円
 だけ貸すのではなく、もっと多くのお金を多くの人に貸している。

 つまり、銀行は1万円のお札を基にお金を創っているのだ。
 そして、そのための一番大事な事は、銀行間で口座間のやりとり、
 貸し借りを確実に決済できることだ。

 しかし、昨今は、密接にお金をやりとりする銀行間で、相手の銀行が
 信用できなくなり、銀行間の貸し借りが出来なくなってしまった。

 原因は、悪いところにお金を貸した(サブプライム)人がいたり、
 デリバティブ(CDS、CDO等)を活用して、常識外れに多額のお金
 を創ったことがあるだろう。

 残念ながら、銀行がお金を創っているこの仕組みは、悪い人のお金だけ
 止める事が出来ない。銀行間の貸し借り、決済が出来ないと、全ての
 やりとりが止まってしまうのだ。
 
 銀行の口座を使って経済活動している人全て、企業も個人も、お金を
 借りられない、お金を引出せない事態になってしまう。

 今起きている事は、この事態が順を追って起きつつあるということ。

 だから、早急に銀行に資本金を入れたり、国有化するなどして、銀行間
 の信頼を取り戻せるようにしなければいけない。

 こうした経済の大原則を多くの人が知らないし、メディア人も勉強不足
 のためか知らない。

 だから、「銀行を助けるのは資本主義に反する」「バブルで甘い汁を
 吸った悪いやつらを救うな」という世論となる。

 ホワイトハウスが必死で、金融危機の打開を計ろうとしても、メディア
 人が無知のため、努力が無駄になる状況が、9月30日の記者会見で
 明らかになっている。
 http://www.whitehouse.gov/news/releases/2008/09/20080930-1.html

 LIBORという銀行間貸出金利が上昇して、上記のような金融危機が
 経済全体の大恐慌を引き起こすサインをだしている。だからこそ、
 ホワイトハウスは必死なのに、記者会見に出ている記者が全員、LIBOR
 について詳しくなかったので、伝える記事はピントずれになった。

 つまり、ホワイトハウスの政策当局者は、まずメディア人に経済の教育
 をするところから始めなきゃいけない、泥棒が来た時点で掴まえるため
 の縄を結っている状況にあるわけだ。

 日経記者も、90年代の金融不況を経験しているのに、全く勉強しな
 かったから、現在の株価下落を見てのんきに「個人消費が停滞するかも」
 と書いているのだから同じ部類だろう。

 本来なら、銀行も政府も、こうした銀行の役割を十分に周知させるべき
 だったという問題でもある。

 この情況では、無知な国民に嫌われて、反対されても、正しい政策を
 打ち出すことが出来るかについて「ミスターマーケット」が悲観的に
 なっても無理はない。

 週末のG7は、「解決策は既に皆知っている」参加者が、実際に各国の
 「無知で感情的な国民」に対して、政治リスクを背負ってでも、正しい
 政策を打ち出す度胸があるかどうかを計る場なのだ。

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